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第17話  学院について


 目が覚めるとそこは、自室のベッドの上だった。窓から明るい光が差し込んで来ている。隣には、イスに腰掛けたまま眠っている紅火の姿があった。きっと、心配してずっと隣で見ていてくれたのだろう。起き上がり、周囲を見渡してみると、紅火の隣のクッションの上に青くて小さいドラゴンが体を丸めて眠っていた。


 「むぅ....、ふあぁーー」


 私が起き上がった事で起こしてしまったみたいだ。眠そうな顔で目をこすっていると、私に気付いたらしい。

 

 「桜華!大丈夫?」

 「んー、大丈夫みたい」


 紅火が大きな声を出したからか、クッションの上で寝ていたドラゴンも目を覚ました。ドラゴンはきょろきょろと、周りを見渡して様子をうかがうと、私のところになぜかとても嬉しそうな感じで飛んで来た。


 「きゅるっ♪」


 可愛く鳴くドラゴンの頭をなでていると、紅火が今の状況を説明してくれた。


 要約すると、私は試合の後から3日間眠っていたそうだ。その間に、雪杜と紅火で私の魔力や精神にリミッターをかけたそうだ。リミッターの解除法等は教えてくれなかったが、いずれ必要になったら教えてくれると思うので頭の片隅に置いておく程度の認識にしておいた。また、この小さなドラゴンは雪杜なのだそうだ。私への負担を考え最低限の大きさにしているため、しゃべることも難しく竜の泣き声が精いっぱいなのだそう。

 とは言え、可愛いので全然ありだ。むしろ、ウェルカム。


 しゃべっている声が廊下にも聞こえていたのだろう。フリーエルがやって来て、私が起きているのを確認すると、「すぐにお食事を用意いたします」と言っては厨房へ行ってしまった。

 仕事ができ、頼む前に察してくれるところが彼女の有能さだと改めて思った。

 フリーエルは、数十分ほどで食事を作り運んで来た。メニューは、リゾットとサンドウィッチ、サラダに、紅茶とミルクだった。リゾットは手間がかかり大変なのにもかかわらず、短い時間の中でも全ても料理において美しく盛り付けられている。

 私はフリーエルにお礼を言い、みんな(3人と1匹)でご飯を食べた。

 フリーエルは食器をまとめ片付けた。戻ってくると、「お嬢様、深紅様がお呼びです。書斎にいらっしゃるそうです」と告げた。

 私は竜を肩にのせ、紅火と共に書斎に行った。


 トントンッ、

「桜華です。失礼いたします」


 中に入るとお父様が椅子に座っていた。

 お父様は近くにあるソファーを指差し「座りなさい」と指示した。


 「体調は大丈夫か?」

 「はい、」

 「すまないな。あの時はつい力加減を間違えてしまった」

 「いえ、私も悪いので気にしないで下さい。それより、用件は何でしょう?」

 「あ、ああ。精霊学院についてだ。入学の手続きはしておいたから、入学試験で落ちない限り入学でき  る。試験、と言っても魔法技能テストと基礎知識のテスト、後身体能力検査くらいで落ちることはないと 思うがな。

  入学するに当たっていくつか守って欲しいことがある。

 1つ目は、雪杜を召喚しないこと。身の危険などどうしようもないとき以外は駄目だ。

これは、桜華が寝ているときに紅火たちから聞いたのだが、青龍の召喚もできるようだな。雪杜は駄目だが、青龍はよしとする。精霊学院に行くとはいえ、桜華は獣使いだからな。それくらいは許そう。あと、今の子竜姿も、あまり人目につかない場所であれば許可しよう。

 2つ目は、紅火の姿を獣の姿として生活すること。これもどうしようもないとき以外は守れ。

 3つ目は、全力で魔法を使わないこと。最上位なら連射しなければ良いが精霊魔法を組み込んだ最上位以上のものは駄目だ。軍に取り込まれる可能性がある。1つ目と2つ目を解除してもなお、どうにもならないとき最終手段として使え。

 あと、何にも所属するな。冒険者も軍も騎士も国にもだ。いいな?」

 「わかりました。ですが、国にも、ですか?」

 「我らは、単体で大きな戦力となる。だから、国と契約してるのだ。国同士の戦争には我らの一族は手 を貸さない。その代わりに貴族としてこの土地(国)にいて、魔物討伐に力を貸す。という契約をな。だか ら、国にも駄目だ」

 「はい。わかりました。約束します」

 「では、婚約等はどのような形をとっているのですか?国は、我らをここにずっと置いときたいでしょう、出来れば繋がりを強固なものにしたり、国の戦力にしたいと思うはずです」

 「その通りだろうな。それを防ぐために、婚約者は我らの一族として婿入りや、嫁入りをさせるのだ。そ うすることで国との繋がりを断つようにし、一族に入るものは、それ相応の覚悟と実力を持ってもらう。 

 例えば、もし、自分の両親が戦争に巻き込まれたとして、両親を見捨てる覚悟はあるのかとかな。覚悟を持たない者はどれだけ愛していようと一族として迎え入れることは出来ない」

 「ですが、駆け落ちや、一族から出ていくものもいるのでは?」

 「一時期は出ていこうとするものがいたそうだが、それらは、この森から出る前に捕まえられるか、殺さ れた。他には、どうやったのかは知らないが、召喚獣との繋がりを断たれたらしい。召喚獣との繋がりを 断たれたら我らは何も出来ないから、致命的だろう。そして、一度、召喚獣との繋がりを儀式なしで、死 亡以外の理由で断つと召喚獣の力によって血が濁るらしく、そのものの子は至って普通の子なのだそう」


 一族のものつまり、身内であろうといや、自らの子供であろうと殺すことになったり、殺さなければならなかったというのはあまりにも、その当時の当主がかわいそうだと思った。でも、召喚獣からすればたかが恋なんぞによって、力を貸し信用していたはずのものから捨てられる気持ちというのは、自分を捨てた相手の血ですらも濁らすほどに大きくつらいものなのだと、私はそう思った。

 だから、私自身は私のパートナーにそんなつらい思いをして欲しくはない、そのためにも、自分という契約者の存在の重み。持たなければいけない責任をここに来て初めて感じたのだった。


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