第16話 父との試合2
遅くなりました。
ごめんなさい(>人<)
お父様の上には、翼を広げた真紅色の大きなドラゴンが現れた。
「桜華、お前の力をここに示すがいい」
『我は汝と契りを結びし者なり 水を操り 時を司りしものよ 煌めく水は汝の思うがまま 今こそ我は汝を求めん 汝は美しき蒼星竜 名を 蒼緑 時音 雪杜』
私の上に青色で描かれた大きな魔法陣が現れる。最後の星が描かれると魔法陣から蒼く大きなドラゴン、雪杜が出て来た。雪杜は何もせずそのまま桜華の上に待機する。
「お父様、私のもう一人のパートナー 雪杜です」
「ほう、これがか。立派な竜だな」
「ありがとうございます。ですが、雪杜は美しいだけではないんですよ」
「なるほどな。その力を見せてくれるというのか」
「もちろんです。そのために用意した場でしょう?」
「その通りだ。では、試合を始めるとしよう」
お父様がそう言うとお兄様が観覧席から立ち上がり一番下の席へと移動した。
「これより 雪刃 深紅 対 雪刃 桜華の試合をはじめる。審判は雪刃 空季が行う。ルールは、獣闘技会と同じく、互いに召喚獣と自らの力で戦うものとする。どちらかか召喚獣が戦闘不能になる、または即死魔法を使用するか、降参することで勝敗を決める。両者とも準備は宜しいだろうか」
「はい」
「ああ」
「それでははじめます。 試合、開始!」
お父様は一発目に魔法を放ってくると思っていたが、何もすることなくただこちらの様子を見ている。まずはその力を見せてみろという事なのだろう。
ならば、こちらから仕掛けるしかない。
「雪杜!ブレスを50%で撃って」
雪杜は私の指示に従い瞬時に必要な力を集め始める。
“我が欲すは敵を切り裂く力なり 今ここに氷の力を アイスソード”
青みがかった白の剣が作り出される。
今日のはなぜか昨日作った剣よりも美しい表面で、輝きも増しているようだった。今回は、魔力を均一に込めれたのかもしれない。そう思うと練習の成果が出たような気がして嬉しくなった。
雪杜が氷のブレスを放つと、私はブレスによる冷気に隠れて剣を構えお父様めがけて走る。
「ブラスト、防御しろ」
お父様はブラストに防御するように指示するとブラストは炎を操り炎の壁を作りだしブレスから身を守る。炎の力は強く、弱点属性であるのにもかかわらず雪杜のブレスは炎の壁を凍らせることしかできなかった。
「凄い威力だな。ブラストの炎を凍らせるだなんて」
お父様がその威力を褒め、氷の壁の方に目を向けているところに斬りかかる。お父様は武術をやっていなかったはずだからこの一撃は当てられると思っていた。だが、やはりお父様に一撃当てるのは一筋縄ではいかなかった。お父様はすぐさまステップを踏み軽く距離をとって防御魔法を組み立て私の攻撃を防いだ。
「奇襲のポイントも隠れる方法もよかったが、魔力の漏れが隠せていないな。ちょっと魔力操作に長けているものにはばればれだ」
「そうですか。今後は魔力操作に注意しますね」
お父様は私の攻撃にも指摘してきたがその言葉に返答をしつつも剣を振るって攻撃を加えるが、それもお父様の魔法に拒まれかすり傷一つ付けられない。このまま攻撃を続けても無駄だと感じた私は後ろに大きく跳び一時離脱し、さらに後ろに下がり距離をとる。
「さすがに判断力もあるか。そしてすぐに行動に移せるというのも上出来だ」
「雪杜!水魔法展開っ!魔法を放つよ」
『―― 雪杜は攻撃力重視の今できる範囲で一番強いの魔法を用意していて』
『了解した』
私は遠距離での魔法戦に切り替えることにした。念話を使い雪杜に指示してから、低級魔法のウォーターボールとアイスボールを何度も間をおく事無く放つ、たまに魔法を3つ同時展開してひとつだけ威力を上げた低級魔法を放ったり、別の属性を混ぜるなど攻撃にも同じパターンを作らないように様々な攻撃を繰り返して雪杜の魔法が組みあがるまでの時間を稼ぐ。
私が魔法を放ち続けてると雪杜から魔法が組みあがったと念話で伝えられたので、次に上級魔法を放った後に雪杜の魔法を放つように指示した。
“ 氷よ 鋭き牙たる力よ その力を以て冷たきそれを振るいたまえ 氷塊の嵐 ”
大小さまざまな氷が嵐を作りだす。竜巻のように氷が渦巻き攻撃を加えたり、雨のように氷が降ってきたりして、広範囲に渡り嵐が巻き起こる。
お父様は ファイアーウォール を応用し、自らの周囲を同心円状に覆う。その炎の中にブラストの炎を加えたり、壁を厚くする事で大半のものを防御し、大きな氷塊が来た場合には ファイアーボール やその応用版の 火炎放射 を使う事で溶かすなどして防いでいる。
まだまだ嵐は終わりそうになく中盤辺りに来たところで雪杜の魔法は発動した。
“ 凍りつく世界 ”
闘技場全体が一瞬で凍りつき、お父様の作りだした炎の壁すらも凍らせ、凍った世界になったことによって嵐は激しさを増した。
勢いの増した嵐によってもとは炎の壁であったはずの分厚い氷の壁も崩れて行く...。
そんな中で赤く紅く燃え上がる焔が一筋、見えた。
悪天候な世界の奥から竜と人のシルエットが一歩一歩近づいてくるのがわかる。私たちの世界が少しずつ消えて行くのを感じる。
嵐の中に光る焔の力がいきなり膨れ上がりどんどん広がって来る。私はその力に恐怖を、恐れを抱いていたのかもしれない。ただ、こちらに向かってくる熱く膨大な力を前にして次の魔法を放つ事はもちろん、その場から動くことすらできなかった。
一度、風が吹き荒れ 私の作りだした嵐を消し去った。
「桜華よ。ここまで楽しませてくれるものとは思ってもいなかったぞ。まさか、ブラストのブレスを使うはめになるなんて思ってもいなかったのだからな」
先ほどまで紅く燃え上がっていた一線の焔はブラストのものだったのかと、そして、はじめのブレスの攻撃を防いだ時以外にお父様がブラストの力を借りていた事はなかった事を思い出す。上級魔法でさえもお父様が自分自身の力のみで防いでおり、雪杜の最高位魔法すらもあの紅い焔が繰り出される前は自らの力のみで防いでいた。そんな事実を、現実を目の当たりにし、お父様との力の差を知ってしまった。いや、理解させられてしまった。
私たちの魔法で父ではなく、何かもあっと別のものを呼び起こしてしまったような感じがする。もしかしたら、お父様が自らの力に掛けていたリミッターを外してしまったのかもしれない。いつもの父とは違うそこにある異質なものに、私の本能は危険だ、今すぐに離れろと、そこから逃げろと伝えてくる。
「想像以上だった。空季も優蘭も契約してすぐにここまで力を出せてはいなかった。....いや、もしかしたら、その竜の力を引き出せているわけではなく、その竜の力が大きすぎるだけなのかもな...。そうでなければ日ごろの努力と精霊と契約しているというところに力の理由があるのか」
徐々に近づいてきたお父様に私は恐怖により今すぐお父様を倒さなければならないと、出し惜しみをしたら私がやられると感じ、全力で攻撃を開始する事を決意し、雪杜に向かって叫んだ。
「ブレス全力で放って!!」
『良いのか?』
「ためらいなんていらないっ!今すぐにお父様を倒さなきゃいけないの!」
『....。』
雪杜は何も言う事はなかった。ただ、私に言われたようにブレスを吐くために力を溜めて行く。
“ 奇しくもはかなく消えては花開く 常夜に映えし者よ さあ、今こそ美しく舞う時 輝き、咲いては散って行け 氷華の終焉 ”
桜華は全力でありったけの魔力を込めてオリジナル魔法を放つ。
一面が焔の海と化していたフィールドを氷で覆っていく。父が作り出した焔の壁も父の足元の焔も凍らせ一面を氷の世界へと豹変させると、凍った世界が一つの花の如く氷の花びらが出来て行く。
パキパキッ、っと音を立てて出来上がった世界は氷の花の形となった。
「散れっ!」
その言葉一つで出来上がった氷の花は全てまとめて粉々に砕け、破片は四方八方に飛び散る。お父様の血が周囲に飛び散る。が、その量は少なく致死量には全然足りない。
「雪杜、放て――っ!」
アレの焔に私の世界が溶かてれていくところに最初とは違い、全力のブレスが加わり私の世界が修復されていく。防御が遅れ、ブレスをまともに受けてしまった時間があったためか、お父様にもダメージが加わっていた。体の右がブレスをくらい削れ血肉が出ていた。それでも倒れる事無く向かってくる。
次の術式を展開し始めたその時、
「止めっ!」
と、お兄様の声がした。お父様は兄の声によりその異質な何かを消し、いつもの父と同じ雰囲気をまとった。それにより、私の警戒心も薄れ、意識が鮮明にになって来る。それと同時に疲労感が押し寄せてくる。自らの力で体を支えられなくなり私は地面に引き寄せられるように倒れて行く。
その光景を見た紅火は走ってきて、倒れた私の横に座り回復魔法をかけてくれた。雪杜は私への負担を減らすためか魔力を少し私に送ってから『ゆっくり休め』と言い、いつもの扉の中に消えて行った。
「この勝負、雪刃 真紅の勝利とする。互いの健闘をたたえ両者の今後の成長を思い、この度の試合を終了とする」
お兄様の宣言が終わったところで、私の疲労感もピークに達し、私の意識は落ちて行くのだった。
これからは、また定期的に最新していく予定ですが、今年は、受験生なので、ペースが落ちると思います。




