第15話 父との試合1
「桜華。精霊学院に入学しなさい」
お父様が言った言葉は衝撃的なものだった。
精霊学院は精霊と契約したもの、霊者の家系(中・下位貴族)のもの、精霊を見る事が出来るもので、12歳くらいの子供たちが集まる霊者専用の学院だからだ。もちろん、雪刃家は召喚獣と戦う獣使いの家なので精霊学院にはいかず、獣闘技会や、魔物討伐などを行うまたは、騎士の一員になる程度で基本は家で各自力を高めるものなのだ。
「なぜ、ですか?私も獣使いです」
「霊者は獣使いとは違い、国に管理されるものなのだ。桜華が獣使いになったからには戦場に出る日がいずれ来てしまう。その時精霊の力を使う事態となってしまえば、桜華が霊者であることがばれてしまうのだ。屋敷内からでなければ隠し通すこともできるが、それには無理があるのだ」
「獣使いだという事は魔力でばれないが、霊者だという事は見る者が見れば魔力でばれてしまうということですか」
「そう言う事だ」
「わかりました」
「すまないな。手続き等はこちらで済ませておく。入学は来年だ」
「なあ、私は精霊としてどうすべきだ?このままの姿で行けるのか?」
「紅火には、できるなら何か動物の姿になってもらいたいのだが、可能なのか?」
「可能だぞ?力はかなり抑えされるがな」
「人目につく場所では極力動物の姿でいてくれ、もちろん、桜華や自らの身が危ない時には他人など気にせず元の姿に戻っても構わない」
「了解した。とりあえず入学が近くなるまでは今まで通りでいいんだろう?」
「それで構わない」
「では、お父様。私たちはこれで失礼してもよろしいですか?」
「いいが、明日桜華の契約した召喚獣を確認しても良いか?」
「もちろんです。それでは、失礼します」
そう言って、私たちは食堂を後にした。
―――――――――――――― 翌朝
朝食と朝の稽古を終えて私と紅火は闘技場にやってきていた。闘技場は家の敷地内にある召喚獣同士を戦わせ、試合をするための場所だ。来ていた理由は雪杜を召喚するにあたって雪杜に直接確認したい事があったからだった。昨日お父様に確認すると言われ、もちろんと答えてしまったからには、しっかり召喚できるようしなければいけないし、確認するという事は戦い、召喚獣の力を見極めるという事を言っているのだから、戦闘の事を雪杜にも聞かなければならない。
「で、ここでどうするつもりなんだ?」
「ちょっと呼んでみる」
目をつぶり心の中で雪杜に呼び掛ける。
―――― 桜華。何の用だ?
―― 今日の試合について話したいのと、あなたを私のもう一人のパートナーである精霊に紹介したい。
―――― では、こちらに二人を招待しよう。
目を開けるとそこは前と同じ真っ白い部屋だった。前と違うのは隣に紅火がいる事ぐらいであった。
『いらっしゃい。桜華』
「雪杜、紹介するね。この子が私のパートナーの一人、紅火だよ」
「桜華と契りを結んだ精霊の 青銅 紅火 零香だ。これからよろしく」
『我は、桜華の召喚獣となり名をもらった。 我が名は、蒼緑 時音 雪杜。宜しく』
「じゃあ、話を進めるよ。これからお父様の召喚獣と戦うわけなんだけど、雪杜を召喚すべきなのか、青龍の方を召喚すべきなのか迷ってて...」
『我を召喚してくれて構わない。戦った後に普段使う方を選ぶと良い』
「そう言えば、どうして戦うのか知ってるの?」
『我の力を見極めるために行うのだろう?』
「どうして知ってるの?外に使い魔でもいるの?」
『いや、使い魔ではない。桜華とリンクする事で桜華の魔力を通して我はここにいながら桜華の近くを見る事が出来るのだ。視覚などを共有しているわけではないから、我の意思で好きなように見る事が出来る』
「ふーん。意外と何でもできるんだね」
「雪音の属性は何なんだ?」
『我の属性は、水と光、時空だ。時空の能力の一種としてこの空間を作り、その空間内の時間を自由に操れる』
「時空の力が時音の神獣としての能力か」
『然様』
「雪杜を普通に召喚したら、本体っていうか、全体のどれくらいの力が出せるの?」
『だいたい、5割くらいだな。全力でやれば6割になるくらいだな』
「今の桜華では、完璧な姿で召喚することができないということか」
『いや、不可能ではないが召喚時の負荷が大きすぎるし、足りない魔力の代わりに生命力の方を削る恐れがあるのだ』
「今の桜華が呼びだせば、最悪の場合死にいたる可能性もある。ということか」
『然様。だから半分くらいが安全を考えたときの限界なのだ。今のところはだが』
「じゃあ、魔力は今の倍ほどなければ完全な姿を召喚できないということか」
『倍まではいらない。1.5倍ほどで大丈夫だ。問題は年齢の方なのだ。我を扱うためにはまだ幼い』
「なるほどな。その才能であるが故に力量ではなく、年齢がたりないと」
『そうなるな』
「なあ、桜華。何時頃から戦うことになってるんだ?」
「えっと、4時ごろだったはず」
『桜華。そろそろ時間になるぞ。といっても30分ほど前だが』
「そうなの?じゃあ、戻らないとね」
『では、元の場所に送りだそう。そこの扉から出ると良い』
「ありがとう」
『礼には及ばんよ』
雪杜が用意してくれた扉を開きその中へ入って行くと、そこは闘技場になっていた。まだ誰も来ておらず、無人だった。
「誰もいないようだな。桜華、軽く魔法の練習でもしておくか?」
「あまり魔力を使いたくないから、基本は回避に専念するつもりだけど、軽めにしてもらうかな」
「了解した。じゃあ、行くぞ」
言ったそばから魔法を展開し、瞬時に放ってくる。私は、剣術で学んだステップを使ったり、危ない時は初級魔法で軌道をずらすなどして紅火の魔法を回避する。練習の途中で優蘭お姉様と星璃がやって来たので、練習を中断することにした。
「桜華お姉ちゃん何してるの?」
「魔法を回避する練習をしているんだよ」
「そうなんだ。凄く激しかったから驚いたよ。いつもこんなのやってたの?」
「んー。いつもはもっと魔法を使ってるからもう少し激しいかな」
「そうなの!じゃあ、明日は僕も一緒に練習してもいい?」
私が紅火の方を見ると、紅火は仕方ないなという顔をしてうなずいた。
「いいよ」
「本当!お姉ちゃんありがとう」
「桜華、お父様たちが来たわよ」
お姉様に言われて闘技場の入口の方を見ると、お兄様とお父様、お母様が来ていた。お父様以外は全員、闘技場の客席に座り私たちの方を見ている。
お父様は何も言う事無く詠唱を始めた。
『来たれ、紅蓮の焔の使者よ 真なる焔の使いよ 今ここに我は彼のものを求めん 彼のものの名は ブラスト・フレイム』
お父様の周りで焔が次々と現れお父様の上に集まって行き、焔が弾けるとそこには、翼を広げた深紅色の大きなドラゴンが出現した。
「桜華、お前の力をここに示すがいい」




