表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/101

第93話

 霤碧(りゅうい)の部屋には大きな窓があり、白いカーテンが風に揺れている。静かな、静かな空間だ。ベッドに目を向けると霤碧(りゅうい)であろう人物が眠っていた。銀色の髪、白い肌は夢で見た姿そのままだ。カズキはクラウドに体を寄せる。


「この人……同じだよ、クラウド」


「ならば、尚更助けなければいけないね。ナシュマ、どうだ?」


「予想通りだな。霤碧(りゅうい)サマ自身が結界の一部になっちまってる。時間差があったのは多分、少しずつ命が吸い取られていたからだな。体がついていかなくなったんだろう。ヒトの命を使った結界だ。そりゃ強いだろうよ」


「ねぇ、霙颯(ようぜん)。何で核は四つだけだったの?」


「太陽と月、その二つの核は見つけることができなかった。アレがいた場所は、今や何もないただの空間だからな。ナシュマは知っているだろう?」


「ああ、俺が落とされた場所か……」


「ふーん。中途半端に聖獣へ手を出しちゃったってことか」


「カズキ、ここで霙颯(ようぜん)達を責めても仕方ないことだよ。今は霤碧(りゅうい)を助ける方法を考えよう」


「だってさ……」


 何となく魔族に対して腹が立ったのだ。散々召喚士を虐げてきたのに、今更その力を掲げる。今回の件はそんな驕慢が招いた結果だろうと。そんな気持ちを慰めるようにクラウドの唇が額に落ち、真っすぐに見つめてくる。


「カズキ、言いたいことは後で聞くよ。霤碧(りゅうい)を助けたいのだろう?」


「うん……ま、いいや。ナシュマ、(いつき)の時みたいに代わりになるものがあったら大丈夫?」


「人間界における根源の力だからな、代わりは中々難しいとは思うぜ。核がありゃ話は早いが」


「ふーん、じゃあさ、核のこと(いつき)に聞けば何か分からないかな? あの人自身が太陽と月の聖獣の器だったんだし」


「なるほどな。結構鋭いじゃねぇか、カズキ」


「あんたに褒められてもね」


「いや、ナシュマと同じく俺も凄いと思うよ」


「ありがとう、クラウド!」


「現金な奴だな~」


「だってクラウド以外興味ないし。そういうことで霙颯(ようぜん)、ボク達人間の世界に戻りたいんだけど。なんならナシュマ人質に置いていってもいいよ」


「オイ」


「――召喚士、お前にとって霤碧(りゅうい)は赤の他人だ。何故、そこまでする?」


 腕を組みながら霙颯(ようぜん)が問うてきた。カズキは質問の真意が理解できずに首を傾げる。


「お前が霤碧(りゅうい)を助けたいという理由だ」


「ああ。あのね、霤碧(りゅうい)が夢に出てきたんだ。真っ暗なところで独りぼっちは、凄く辛いんだ。誰にも聞こえない声は、どんなに叫んでも届かない。ボクはその辛さを知ってるから、助けてあげたいんだと思う」


「ふん――そうか」


 口角を上げた霙颯(ようぜん)が一度瞳を閉じ、しばしの瞑目の後再び開かれた。


「ナシュマ、お前はここに残り、霤碧(りゅうい)と結界との切れ目がないか探せ。召喚士と守人(もりびと)妖祁(ようき)のところへ案内する。ただし、人間界へはオレも同行させてもらうぞ」


「ああ。それでいいかい、カズキ?」


「うん。クラウドと一緒ならいいよ」


 その後、霙颯(ようぜん)の所用が済むまでと、カズキとクラウドは彼の部屋に案内された。


 今は二人きりだ。カズキは横に座るクラウドの袖を掴む。時折流れる涼やかな風が気持ちいい。離れていた分、彼が近くにいてくれることが嬉しくて。そう思ったら触れたくなった。


「クラウド……こんな時だけどキス、したいな?」


「ふふっ、仕方のない子だ」


 向かい合うように膝に座らせてもらい、抱き着くような体勢でキスをする。しばらくは触れるだけのキスだったが、やがてクラウドの舌が入り込み、上顎を撫でてきた。


 擽ったいのか快感なのか分からなかったが、性欲を掻き立てられたことに間違いない。カズキも舌先を捕らえて絡ませる。混ざる水音と、時折クラウドが喉を鳴らす低音。


 唇を離せば、ゆったりと掻き混ぜられた銀糸が二人を繋ぎ止める。クラウドが髪を優しく撫でてくれた。


「この続きは霤碧(りゅうい)を助けてからにしような?」


「うん。霙颯(ようぜん)も協力的になったし、いい話聞けるといいね」


 カズキは肩に頭を乗せる。甘えるようにクラウドの掌に指先を滑らせながら目を閉じた。


「あのね、クラウド。(いつき)に会えば何とかなりそうな気がするんだ」


「召喚士としての勘かい?」


「そんなものかな。ボクの中にある聖獣の力がざわつかないから」


「カズキは凄いね」


 クラウドの手がカズキの肩を滑る。


「この体には信じられないほどの大きな力が入っている。辛くは無いかい?」


「独りだったら多分壊れてるよ。たまにね、力が拗れてお腹の辺りとかがモヤモヤする時があるんだ。そういう時は、クラウドに抱きしめてもらうと落ち着くんだよ。クラウドいてくれるから、ボクが壊れそうになったら、クラウドが止めてくれるって信じられるから、多分暴走しないでいられる。クラウド負担になってない?」


「平気だよ。カズキにそう思ってもらえていることに安心した」


「クラウド……ボクがクラウド嫌いになることなんか、絶対……無い、よっ」


 急に涙が出て言葉が詰まる。離れることを想像して凄く不安になったから?


「もう情緒不安定だな、ボク……」


「気にするな。流れた涙は俺が拭く。カズキは感情を押し殺す必要はない」


「クラウド、好き。大好きだよ!」


「ああ。やはりカズキは笑っている顔が一番いいね」


「ありがとう!」


 カズキはもう一度口づけ、笑顔を見せる。遠くで鳥が小さく鳴いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ