第83話
そして教会の小さな会議室を借り、クラウドは皆にライシュルトのことを伝えた。
「は? ちょっと待てよ。ライシュルトが番人? 杯あったんだろ?」
頭を掻きながらヨハンが渋面を作る。皆にとっては寝耳に水だったろう。
「ライの意思でのことなんだ。俺もカズキも、そしてピエール様ですら知らなかった。だがそのおかげで斎様を失わずに済んだんだ。良かった、とそう思いたいよ。俺とカズキは、全部終わったらライを助ける手立てはないか探ってみるつもりだよ」
「じゃあそれ俺も乗るわ。一回面と向かって文句言わなきゃ気が済まねぇ。勝手にいなくなりやがって」
「ははっ、ありがとうヨハン。さて、皆に来てもらったのはライのことの他に、これからのことをどうするか決めたくてな。魔界でのこと、何一つ決着がついていない。昨夜にカズキが霤碧であろう者の夢を見た。ただ独り、暗闇に閉じ込められて苦しんでいたそうだ。カズキも彼を助けてやりたいと」
「うん。クラウドには言ったんだけどさ、霤碧って人を助ければ、命数いらなくなるよね。だから、咫嘶とか四天王をどうにかするより、霤碧助けた方がいいのかなって。このままじゃ泥沼化するだけだと思うんだ」
「確かに外的要因も考えられないこともないけど――」
「あ!」
起き上がれるほどに復活したナシュマが、何か思い当たったのか声を上げた。
「関係あるか分かんねぇけど、魔界で咫嘶に会った時に、謁見室の上から魔力の流れを感じたんだ。城を這うように走ってるから、単なる結界かもしれないけどな」
「咫嘶様にお会いしたって……何したのナシュマ。それにしても、謁見室の上は王族の方々の居住区画がある辺りだ。結界に関しても、王城の周りには、侵入防止用に四天王が四重に結界を張ってるから、不必要な気もするな」
「でもさ、霤碧関係だったら誰かが気づきそうだけど。向こうには凄い人いっぱいいるし」
「ふふっ、ナシュマは魔力や結界に関しての勘が誰よりも優れているからね」
「確かに結界で隠された書庫の入口や、召喚士の都との転送陣を見つけたのもナシュマだったな」
「ふぅん、地味に役に立ってるんだね」
「クラウド、こりゃ褒められてんのか?」
苦笑しながら問いかけてきたナシュマに、クラウドは笑いながら頷く。
「褒めているよ。その魔力の流れを調べてみたいな。鴎伐や妖祁に協力を仰げないだろうか」
「あーー、すまん!」
「今度はなに?」
「多分、妖祁は無理。妖祁にゃ城で世話になってたが、存在バレて咫嘶に命数取られかけたんだ。でも妖祁の城にいた、錬金術で造られた魔族が助けてくれてな。しかも妖祁には無断で。だから俺を匿ったのと、妖祁が造った魔族が俺を逃がしたので、あいつの立場悪くなってると思う」
「何それ。結局引っかき回してきただけじゃん。褒めて損した」
「俺を逃がしてくれた奴、妖祁に見つかって刺されちまってよ。俺も術食らって、気づいたら教会にいたんだ。アイツ大丈夫かな」
「そんなことが……協力を求めるのは難しそうだな。さて、どうしたものか」
「みぃ!」
存在を主張するように、叉胤の懐から白い物体が円卓に転がり出た。前のナシュマとは色違いのそれが、部屋の角へ飛び、こちらをしきりに見つめてくる。
「み」
「あれは……」
「ミミットって前の俺と同じ種類の生き物だ。箏のとこで実験体にされてたみたいだった。妙に懐かれてなー。ソギ、何て言ってるか分かるか?」
「ちょっと待って」
ソギがミミットの前で屈み込んで、それを手に乗せ目線を合わせた。
「み」
「え? 行ける? でもどうやって……扉を?」
「ソギ、どうした」
困惑気味に振り向いたソギが言葉を発した。魔界へ行ける、と。




