表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/101

第7話

 ソギは噴水に腰かけて一通り辺りを見渡した。空には鳥が行き交い、地面では鳩がパン屑を啄ばんでいる。


「うん、ここがいいな」


 そう言って彼は小さく指笛を吹いた。すると、一斉に鳥や野良犬までもが集まってくる。


「来てくれてありがとう。君達に教えて欲しいことがあるんだ」


 動物たちが喧嘩もせず、じっとソギの言葉に耳を傾けている姿は、カズキにも強烈な印象として残ったようだ。勿論、周りの者にも。


「な、凄いよな~。動物と会話ができるなんて」


「うん……」


 終了したのか、動物たちはいるべきところへと去り、ソギが空に向かって手を翳すと、あの時の鷲が翼をはためかせながら舞い降りてくる。肩に止まった鷲が甘えるように、ソギの頬に顔を寄せた。


「クラウドさん、杜へは直線距離にして南におおよそ四十。ただその間に山がある。山を抜けるのが一番早いんだけど、迂回する道もあるそうだよ。詳しくはこの子が道案内してくれるって」


「分かった、ありがとう。では山道を避けて――」


「そんな必要ないよ」


 クラウドの言葉を遮るようにカズキが言った。


「山を抜けた方が早いんだよね。それならそっちで行こうよ」


「しかしカズキ……」


「山道は歩いたことあるし、荒廃の原因を調べているなら急ぐ旅でしょ。ボクは、大丈夫」


 カズキの強い視線がクラウドを捉える。頑として意志は動かなそうだ。


「ふぅ……仕方が無いな。でもカズキ、一つだけ約束してくれるかい? 脚や身体の具合が悪くなったり、疲れたりしたらすぐに言うこと。いいね?」


「うん。約束する」


「まじかよクラウド~。ったく、甘いんだから」


「ふふ、諦めよう。ライシュルトさん」


 出発前にいくつかの店を回り、装備品を整えた。陽は傾いていたが南へと出発する。


 ザーニアを離れる間際、カズキは街を背にして前に広がる道を見た。これは未来に繋がる道。自分のこれからの道。横にはクラウドがいてくれる。それだけで、何があろうと前へ進める。希望が繋がっているようにも見えた。


 その日は夜更けまで歩き続け、山の麓で野宿をした。さすがにカズキは疲れたらしく、クラウドに寄りかかりながら眠ってしまった。クラウドは自分のマントをカズキに掛ける。


「無防備に寝るなぁ。う~こうして黙ってりゃ、女の子みたいな顔して可愛いのに~」


「クラウドさんの傍だから安心するんだろうね。何となく分かるかも。クラウドさんて周りの空気を柔らかくしてくれるから。頼りがいがあるっていうか……誰かを護るっていう仕事をしているからかな」


「あ、じゃぁオレも? オレも?」


「う~ん、ライシュルトさんは人並みに安心かな」


「それって褒められてんのか? 貶されてんのか?」


 ライシュルトは眉を寄せて複雑そうな顔だ。


「ははは。ライ、安心しろ。お前がいてくれたおかげで、助かったことがたくさんある。俺は頼ってるよ。さて、ソギに褒められたついでに火の番でもするか。二人とも疲れただろう。明け方にはまだ時間がある。少し寝ておけ」


「おう、悪いな」


 皆が寝静まり、クラウドは揺らめく炎を見つめる。


 ――ちりん。


 耳に残る鈴の音。辺りを見渡すが何の気配も無い。再び炎に目をやった瞬間、突然風が吹き抜けて炎が渦巻いた。その中心には小さな人影が見える。


 ――ちりん。


 ――ちりん。


「何者だ?」


 炎の中から人影が抜け出てカズキに近づく。クラウドは瞬時に剣を引き抜いて牽制した。


「寄るな」


 頭の中に直接声が響く。


『聖獣の……は奪われ………鎮め……召喚士……み……』


「何だって?」


『召喚士を護れ!』


 人影が消えた。炎は元に戻り、何事も無かったように燃えている。夢でも見たのかと思うほど一瞬の出来事だった。


 何故人影がカズキに近づいたのか。語るだけならば移動する意味は無い。しかしながら、近づいたからといって、彼が召喚士だというのも短絡過ぎる。


「どういうことだ?」


「んん……クラウドどうしたの?」


 眠そうに目を擦りながらカズキが起き上がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ