表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/101

第6話

 これからはカズキにとっても、それを支える者にとっても負担の大きい旅になるだろう。だが、それでも。それを押してでもカズキを連れて行きたい。行かなければならない、そんな気がするのだ。クラウドは譲れない心を繋ぎ止めるように拳を握った。


「クラウドが謝ることないよ」


 三人の、誰でもない声が突然部屋に響く。


 開け放たれた扉の前には少年が一人立っていた。クラウドが一瞬誰だか判断できなかったほど、カズキの纏う雰囲気が変わっている。その瞳には生きる力。本当に昨日まで死にたがっていた少年だろうか。


「誰に何と言われても、ボクはクラウドと旅がしたいよ」


 カズキらしく、露出の多い踊り子のような服だ。彼と同じ背丈の杖を手に部屋に入ったカズキは、ライシュルトの前で一旦止まると、口元に笑みを浮かべた。


「ボクは、自分の身は自分で護れる。だから……あんたに護ってもらう気なんて毛頭無いよ」


「何をぅっ」


「まぁまぁ二人とも。カズキ、紹介するよ。そっちにいる銀髪の彼がソギ、今話をしたのがライシュルトだ」


「ふぅん。よろしくね」


 カズキがクラウドの傍に寄り二人に軽く頭を下げた。


 その後、遅い昼食を食べに行こうということになり、四人は食堂に向かう。途中ライシュルトがソギに耳打ちした。


「なぁなぁ、オレ達はカズキに嫌われているのか?」


「心を許したクラウドさん以外素直になれないだけだと思うけど……。う~ん、そう思いたいね」


 前を歩く二人の姿を見て、ソギは思わず苦笑いをして肩を竦めた。


 そして昼食を取りながら、荒廃状況の情報収集と今後の予定について話し合う。


「んで、これからどうすんだ?」


「まずはこの付近で、一番荒廃が進んでいる場所に行ってみようかと思っているよ」


「りょうかーい。したらクラウド、地図持ってるか?」


「ああ。ピエール様に頂いた」


 クラウドが地図を広げると、青白い光がザーニアの上に現れた。これが現在地なのだろう。これならば迷うことはなさそうだ。


「へーすげーな。そうするとココがザーニアか」


 ライシュルトが指先で青白い光を指差し、そのまま下へずらす。


「ザーニア周辺は、最近魔物が活発化しているらしい。特に酷いのがココ。この街は向こう見ずの奴らが集まっているから、徒党を組んで見に行ったら、植物が魔物化してもそもそ歩いていたらしいぞ」


「あ、ここ『迷いの杜』って言われている場所だよ。魔物を倒したって、ボクの客が自慢げに話してたんだ」


「何で迷いの杜って言うんだ~?」


「知らない」


「うぅ、冷たい。とにかく迷いの杜とやらに行ってみるか?」


「そうだな。また魔物が出るかもしれないから、装備はしっかり整えておこう。それとソギ、杜までの距離と道のりを動物に聞けるかい? なるべくなら足場のいい道を頼む」


「うん。鳥が適役かな」


 その言葉にカズキが不思議そうな顔をした。クラウドはそっと耳元で囁く。


「ソギは動物と会話ができるんだ」


「そんなこと本当に出来るの?」


「あはは、大概の人は信じてくれないけどね。でも僕達に心があるように動物達にも心がある。言葉は違えど気持ちは通じるんだよ」


「ふぅん。でもクラウドがそう言うなら信じてもいいかな」


「ソギの周りに動物が集まっていくのは凄いんだぞ~」


「確かに忘れられないな」


 話の流れで、動物との対話を見に行こうということになった。カズキはあまり乗り気ではなさそうだが、クラウドとライシュルトは、あの眺めが好きだった。ソギが初めて仲間になった時の、鮮烈な印象は忘れられない。四人は鳥が集まっていそうな街の広場へと足を運んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ