第49話
クラウドと体を絡め合いながらつくづく思う。彼をどれだけ好きで、どれほど自分の一部になっているのかを。
「大好きだよ……」
譫言のように繰り返す言葉にも、クラウドはきちんと反応を返してくれた。それは時に言葉であったり、愛撫であったり――。
温かい手が体を滑り、力強い腕に包まれる。途方もない安心感。このまま時が止まってしまえばいいと何度も思った。
「クラウド……」
カズキはクラウドの頭を両手で押さえて唇を重ねる。赤い舌がちろりと揺れて舌先が絡み合う。そして、また深く。キスだけで満足してしまいそうなほどの濃厚さ。
「あのね、クラウドが初めてだったんだよ」
「ん?」
「自分からキスしたの、クラウドが初めてなんだ。客とはしないし、好きな人としかしたくなかったから。初めてがクラウドで良かった」
ゆっくりとクラウドが髪を梳いてきた。
「それは俺で、最初で最後にしてくれるかい?」
「うん、もちろんだよ」
「ありがとう。カズキ、この旅が全て終わったら一緒に暮らそう。長い休みを頂いて、宛のない旅に出てもいいし、のんびりと二人で過ごすのも悪くないね」
素直に、嬉しい。カズキはクラウドの首筋に腕を絡め抱きついて頷く。
背を辿るクラウドの指先が、鴎伐に刺された傷を見つけたようだ。何度も指で撫でていた。
「ここに来る前に一戦してさ、刺されちゃった。治してくれる?」
「ああ」
クラウドに後ろを向かせてもらい、肩の力を抜く。
「え? ちょ……クラウドっ?」
掌を当てられるかと思えば、代わりに舌が這う。癒すように優しく、何度も。
「……んぅっ、は……」
どうすれば自分が感じるかを、クラウドが知らぬはずはない。
「意地悪……」
喘ぐ声を楽しむようにクラウドの唇が首筋に落ちる。
そこから先は記憶が曖昧だ。再び夢中でクラウドを求め、体も心もクラウドとの繋がりを感じた。
くったりとする自分に、クラウドが落ち着かせるように背中を撫でてくれる。頬や瞳にも口づけてきた。
「ふふっ、擽ったいよ。でも、今でも少し信じられないな。クラウドがこうして目の前にいて、触れ合っているなんて」
「現実だから信じていいんだよ。俺はカズキの傍にいる」
「うん。ありがとう、クラウド」
カズキは乱れた服を整え、今度は自身がクラウドを抱きしめる。
「ねぇ、クラウド。そろそろクラウドが何をしていたか聞かせて欲しいな。どうして黙っていなくなったの?」
「…………」
触れ合うクラウドの鼓動が少し早まった。自分に黙ったまま姿を消したのだ。それなりの理由があるのだろう。
「クラウドは何を知ったの?」
「……ふぅ、選択肢は変わらない、か」
クラウドが少しだけ身を離し、真っすぐに見つめてくる。そして風の里での事を初めに、今まで何があったのかを、ひとつひとつ丁寧に話してくれた。
最後の聖獣のこと。召喚士の都のこと。契約のこと。
そして、クラウドの探し物のこと――。
「そっか……それで皆に秘密にして一人で行ったんだね。なんかクラウドらしいや」
皆を傷つけないように一人で辛いことを抱え込む。それには、優しさを感じる。けれど、とても悲しくも思った。
「あのさ、もっと頼っていいよ。辛いこと話してくれれば辛い気持ちも半分になるよ、きっと」
「カズキ……」
「ごめん。上手く言えないや。ボクはクラウドが好きだから、辛いのも共有したいって言うか……。ああ、もう分かんないっ。今の忘れてっ」
急に恥ずかしくなってカズキは下を向く。だが頤が持ち上げられ唇が降ってきた。
「ありがとう、カズキ。俺は忘れないよ。せっかくのお前の心からの話を忘れられるわけがない」
「クラウド……」
「本当は、お前に契約のことを話すのは、負担をかけるようで嫌だったんだ。でも、それは二人で乗り越えよう」
「……うん。うん、そうだね」
二人は指を絡め、互いを確かめるように再び抱き合った。




