表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/101

第18話

 クラウドは昼食を終えた後、ライシュルトの様子を窺いにセディアの部屋を訪れた。中へ入ると、ベッドに横にならず、セディアの肩に寄りかかりながらライシュルトが眠っている。安心しきったような寝顔でこちらまで癒された。


「どうですか?」


「先ほど眠ったところだ。大分無理をしたようだが三日も休めば大丈夫だろう。急ぐ旅だろうが出発はしばらく待ってもらえるか」


「勿論です」


 セディアがライシュルトを起こさぬようベッドへ寝かせ、剣を手に取った。


「クラウド、久々に手合わせしないか? お前の腕を見てみたい」


「はぁ」


「気のない返事だな。ああ、ライシュルトなら大丈夫だぞ。こういう寝顔の時は熟睡しているからな。しばらくは何をしても起きない」


「ふふっ、そういうことでしたら……こちらこそ、よろしくお願い致します」


「うむ」


 そして教会の裏手にある鍛練場で剣を合わせたが、やはり、強い。一太刀が重く気を抜いたらまともに食らってしまいそうだ。


 しばらくの間は辛うじて切り結んでいたが、柄を握り直そうとした一瞬の隙を突かれ、剣を後方に飛ばされてしまった。首筋に刃先が突きつけられる。


「お見事です」


 クラウドが降参の意を伝えようと両手を上げた。


 次の瞬間、セディアの足元から数本の先の尖った岩が突出してくる。岩は彼だけを狙っているようで、セディアは身を翻し避けるが頬と腕を掠めてしまう。


「団長!!」


「騒ぐな、大事ない」


「クラウドに何するんだよ!!」


 そう叫んだのは目に涙を溜めたカズキ。クラウドの危機と勘違いをして攻撃したようだ。カズキの傍には両手で抱えられるほどの、竜に似た生き物がいた。その脚には彼と同じ痣がある。これが聖獣なのだろう。


「クラウド大丈夫? 怪我とかしてない?」


「ああ。カズキ、助けてくれようとしたのは有り難いんだが……状況を見なさい」


「え? 危なかったんじゃないの?」


「真剣を使ってはいたが寸止めだから大丈夫だよ」


「え、あ……そうなんだ……団長さん、ごめんなさい」


 カズキはセディアの前で頭を下げる。怒られると思ったが、彼は宥めるように頭を撫でてきた。


「クラウドを護ろうと必死だったんだな。君は優しい子だね。……クラウドどうだろう? お前達が出発するまでの間、この子を私に預けてくれないか?」


「は?」


「カズキ君、クラウドを護れるようになりたいだろう?」


「うん! ボクはその為だったら何だってするよ」


 セディアは、意味が汲み取れず眉を寄せたクラウドの横に立ち、声を殺して呟いた。


「このままで良いと思うな。力の使い方を間違えて傷つくのはカズキだぞ。気持ちだけではどうにもならん。これはピエール殿の意向でもある」


「…………」


 確かにこのままでは気持ちばかりが焦って、取り返しのつかない過ちを犯してしまうかもしれない。聖獣という大きな力を手に入れたならば尚更だ。ここはセディアに全てを任せるのが得策だろう。


「私に任せろ。悪いようにはせんよ」


「はい。カズキ、団長は厳しいが、間違ったことは絶対に言わない方だ。彼を信じて頑張りなさい」


「うん!」


「ああクラウド、この後予定がなければ、ソギ君を連れてピエール殿のところへ行けるか。二人に話があるそうだ」


「はっ、諒解いたしました」


 二人を見送った後、すぐにソギと合流してピエールの許へ向かうと、彼は部屋から東の空を眺めていた。個別に話とはいかなる用件なのか。ソギは少し緊張しているようだ。


「ああ、来てくれましたか。早速なのですが、ユーライへ行く途中、港町ナルシスの様子を見てきていただけませんか?」


「えぇ、あそこからは東の大陸へ行く定期船が出ていますから、問題ございません。何かあったのですか?」


「おそらく。あの町の教会から定期報告がこの二ヶ月ほど滞っておりまして……こちらから使節や鳥を飛ばしても帰って来ないのです」


「かしこまりました。到着し次第すぐに調べ、ご報告いたします」


「ありがとうございます。そしてソギ、あなたを呼んだのは他でもなくお願いがあるのです。教会との繋ぎ役として、鳥や動物に協力を仰げないでしょうか。お恥ずかしい話、今回のことで伝書役が足りなくなってしまいまして……」


「えっと……できるかどうかはあの子達次第なんですけど、お願いしてみますね」


 中庭に降り立ったソギが鳥を呼び集める姿は、ピエールに感銘を与えたようだ。彼は目を細めて楽しそうに眺めていた。


「彼は素敵な能力を持っていますね」


「私も初めて見た時は驚きました。彼には幾度となく助けられています。ソギがいなければ旅の道行は困難となるでしょう」


「あなたは良い仲間を見つけましたね」


「はい」


 話が終わったのか、鳥が一斉に飛び立った。ソギは鳥に手を振り終えると、首から下げていた小さな笛をピエールに手渡す。


「これは?」


「鳥寄せの笛です。その笛で呼んだ時は協力をしてくれるそうですよ」


「有り難くお借りしますが、あなたは大丈夫なのですか?」


「はい、僕は指笛でも呼べますから」


「重ね重ねお礼を言いますよ、ソギ。あなたに祝福を」


 ピエールは片膝を着いてソギの手の甲に唇を当てた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ