序章
HPで連載している小説の転記です。こちらもご活用下さい☆
全100話あるので、ちょいちょい追加していきます。
ゆらゆらと、いくつもの蝋燭の炎が揺れている。大きな円卓と椅子、そして暖炉だけがある簡素な部屋だ。
「早急に手を打たねばなりません」
先端を上に向けた口髭が印象的である初老男性の声と共に、部屋の中に薪の爆ぜる音が響いた。
円卓を囲う人々が顔を見合わせて頷く。会議には身分に関係なく第十位階の見習いから第三位階大司聖までの代表が集められていた。
「今は小さな変化でも、着実に世界は荒廃しています。今まで有り得なかった動植物の魔物化、大地の枯渇。あげたらキリがありませんよ」
「原因を突き止める必要がありますね」
「えぇ。皆さんで協力して乗り切りましょう。聖騎士団長、会議が終了しましたら、従騎士から聖騎士までを鍛練場へ集めて下さい」
「諒解いたしました。ピエール殿、何か予見が?」
「……騎士団の中で縁に結ばれ、後に世界を救う者がいると。しかし何かに邪魔をされて、詳しいことは良く分からないのです。魔界との扉から魔気の量が増えているとの報告がありますから、それのせいでしょうかねぇ」
心配そうに司祭が問う。
「斎様はご無事なのですか? 魔界の大気は聖なる者に悪影響を及ぼすと聞きます」
「私がいる限り彼は大丈夫ですよ。ご安心なさい」
柔らかな口調でピエールが微笑んだ。
第一位階、教会の象徴とも言うべき斎は、魔界と人間界を繋ぐ扉の番人である。番人を護る為に教会が生まれ、その歴史は一万年に遡る。
「では皆さんにお願いがあります。第七位階司祭から見習いの方は、街の人達から話を聞いて荒廃の状況を纏めて下さい。司聖はそれに対する対策を。騎士団の皆さんは、いつも以上に各地の安全に気を配って下さい。手が足りないようなら、ザーニア街の傭兵に協力要請をしなさい。大司聖は皆が動きやすいように各所に働きかけをお願いします。私はセントラルクルス全土の結界を強めておきましょう」
「しかしそれではピエール様のご負担が」
「大丈夫ですよ。皆さんが頑張っているのです。私にも頑張らせ下さい。第二位階を賜っている身として皆を護りたいのですよ」
髭を整え、ピエールは踵を返して窓から空を見上げた。抜けるような青空に鳥が気持ち良さそうに舞っている。
「……急ぎましょう。皆の未来の為に」
時を知らせる大聖堂の澄んだ鐘の音が、青空に吸い込まれていった――。
はじめましての方も、そうでない方も、こんにちは。ぱんだまん と申します。
読んでいただき、ありがとうございます。ヽ(・∀・)ノ
まだまだ不慣れな点がたくさんありますが、お付き合いいただけたら嬉しいです。