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ドラゴンアックス  作者: kaz
海の章
20/76

第十九話 依頼

流通貨幣と大体の貨幣価値


銅貨一枚 大体100円 

銀貨一枚 大体3000円 

金貨一枚 大体90000円


パン一個    大体銅貨一枚

宿一泊食事付き 大体銀貨一枚

一般人の月給  大体金貨一枚

――クローナハ共和国――


 大陸の東南に位置する商業の国、貿易に特化し様々な人種や種族が集まってくる国でもある。

 他の国では珍しい、エルフやドワーフといった他種族を見られるのもこの国の特徴だった。

 何故この国に多いかという理由としては、そういった種族達に対しても平等の法律が制定されているというのがあったからだ。

 他の国では人間以外の種族には当然のように差別や偏見、場所によっては魔獣と同等の扱いで、殺害すらも認めている国もあるほどである。


 とは言っても、ここクローナハですらエルフやドワーフを目撃するのは稀であり、余程の物好き者でもない限り、人間の世界に行こうとは思わないのが普通だった。

 さらにもう一つ、いわゆる別種族と人間とのハーフという存在も、この地でしかまともに生活ができないと言うのもあった。



「あーもうっ! また報酬貰えなかったああ!」


 クローナハ共和国の首都デルフロス、「憩いの魚亭」と呼ばれる酒場で大声を上げ泣き叫んでいるのは、見た目十五歳くらいの華奢な身体の少女、透き通るような白い肌をし、美しく(なび)く金髪はまるで人形かと思わせるほどのものだった。

 しかしその少女の耳は、エルフの特徴である尖った長をしていた。

 彼女の名前はステラ=ブルザーク、エルフと人間のハーフである。


「しょーがないわよ、せっかく持ち帰った品物の中身を壊したらそりゃ怒られるわよ、弁償が半分で済んだだけでも良しとしとかないと……」


 ステラの言葉に葡萄酒を飲みながら愚痴るのはマリカ=ドレイシー、クローナハ領の生まれで、藍色の長い髪を三つ編みにし、健康的な小麦色の肌に魅惑的で豊満な胸を持つ十九歳の女性だ。


「ねーさんも荷物持ってあげればよかったのに……」


 そのマリカにツッコみを入れるのはマリカの弟のシモン=ドレイシー、ずり落ちそうになる大き目の眼鏡をかけた、同じく小麦色の肌に藍色の髪を短髪にした十四歳の少年である。


 三人は冒険者で、パーティを組んで仕事をしている仲間だった。

 だがお世辞にも腕の立つという冒険者ではなく、今まで成功したのは精々宅配の仕事やペット探しという有様であり、魔獣討伐やダンジョン探索など夢のまた夢だった。

 そんな三人は先日年代モノの陶器の配達を頼まれたのだが、うっかり落として壊してしまったのだ。

 当然報酬はなく、逆に高額な損害賠償の支払いを請求される有様。

 冒険者ギルドの保険で半分は減額されたものの、それでもこの若い三人が支払うには高額すぎる額だった。


「どうするのよ……、このままじゃあたしたち牢獄行きよ……」

「その時はステラだけに責任なすりつけるから別に問題ないわ」

「酷い! マリカがそんな事を言うなんて! あんなに大切にしていた私達の友情は何だったのよー!」

「金より高い友情なんてないし」


 二人のいつものやりとりに溜息を付くシモンは、テーブルの上に載ったパンをもそもそと食べながらある人物の事を思い出し、(つぶや)いてしまった。


「はぁ……、こんな時ドラゴン殺しがいてくれたらなあ……」


――ドラゴン殺し――


 ここ最近(ちまた)で噂になっている人物の事である。

 話によれば、その人物は今まで誰一人として成し遂げることができなかった伝説のドラゴンを殺したと言うのだ。

 剣も魔法も効かず、さらにその巨躯の身体、異常なまでの耐久力と回復力で人間……、いや、全ての生物が戦ったとしても、勝てることのできないと言われているドラゴンをである。

 誰もがそんなものは馬鹿げた世迷言(よまいごと)と大笑いした、しかしこのクローナハにドラゴンの死骸の一部が高値で持ち込まれた時、笑い馬鹿にしていた者達全てが言葉を失った。

 それは間違いなくドラゴンの死骸の一部だったからだ。


 そうなると今度はそのドラゴンを殺したという人物が話題になる。

 そしてドラゴンを殺したのは、紅い斧を持った人物というのが世に広まると我こそはそのドラゴン殺しである! という人物があちこちに現れたのだ。

 彼らの目的はドラゴン殺しという名で、仕官や高額な報酬で仕事を引き受ける為や、単に注目を浴びたいという者まで多種多様だった。

 本物かどうかなど実際のドラゴンを倒して見ないとわからないというので、皆やりたい放題という状態だった。


「ドラゴン殺し? ならあそこにも二人いるじゃない」


 シモンの言葉に答えたのはマリカ、指を指す方向には二人の屈強な男達が、赤い斧を持ってなにやらもめていた。

 あの噂以来、トレードマークの赤い斧を持つものが急激に増え、噂ではクローナハだけでも三十人はいるという事らしい。


「ったく、何がドラゴン殺しよ、ばっかみたい、そんなのほんとにそいつがやったかなんてわかんないのに」


 飲みかけの葡萄酒を飲み干し愚痴をいうステラ、彼女自身ドラゴン殺しの話には興味はあったものの、今はとにかく目先の金という感じだった。


「とにかくギルドで仕事を探しましょう、危険かもしれないけど討伐系の仕事を引き受けないと賠償金を払えなくなるわ」

「討伐系かあ……、はぁ、しょうがないかなあ」


 冒険者ギルドなどでは討伐系という仕事がある。

 魔獣や、ケモノ、はては盗賊などを討伐するものである。

 当然危険が付きまとうものの、報酬は高く、そういったものを専門に受ける冒険者達もいるほどである。

 ただし当たり外れが大きく、実際に行ってももうそこには討伐すべきモノがいなかったり、いたとしても、予想より数が多かったりして、逆に殲滅されるという危険もあった。


「も、もっと楽に稼げるのはないの?」

「泥棒でもする?」


 マリカの辛辣(しんらつ)な言葉に、ステラは首を横に振るしかなかった。


 その後三人は仕事を探すべく冒険者ギルドへと向かう、クローナハの首都でもあるこの街はいつも活気溢れる場所だった。

 各地の商人や旅の人間、騎士やエルフにドワーフにと、様々な人種種族が商売を行っている。

 ステラはこの街が好きだった、小さい頃は半分エルフの血が流れているという事で苛められ、ほうほの体でようやくここに辿り着いた。


 なんとか働き口を見つけ一生懸命働いた。


 この街では働き者はそれなりの待遇を受ける為、ステラはようやく自分の居場所を見つけたのだ。

 その後近所に住んでいたマリカとシモンから誘われ、冒険者ギルドに入り冒険者となった。


「早く一人前になって色んな所を旅したいなあ」


 それはステラの口癖だった、彼女は基本じっとしているのが苦手なのだ。

 それがエルフの血によるものか、束縛されるのが嫌という性格かはわからないが、とにかくじっとしていられない性格なのだ。

 しかし旅をするには当然金がかかる上に、今は高額な賠償金を払わなければいかず、ステラはただただ項垂(うなだ)れるだけだった。

 

 そんな事を考えながらギルドに向かって歩いていると、広場で八歳くらいの少女が何か必死になって通りがかる人に声をかけているのを見つける。

 ステラ達は何事かと思って近づき、その言葉を聞いてみると――。


「お願いします! お兄ちゃんを助けてください! お願いします!」


 兄を助けてほしいという懇願だった。

 これは関わりあうべきじゃないと瞬時に判断したマリカだったが、すでに時遅く、ステラがマリカの制止を振り切り少女の元まで走り詳細を聞いていた。


「お兄ちゃんはお薬の材料を取るお仕事をしてるの、四日前も皆と一緒にお船でフルネクって島に行ったんだけどまだ帰ってこないの……、怪我をして帰ってきた人のお話を聞いたらお家みたいにおおきな黒い人がやってきてお船とか壊して帰れなくなったって……」

「巨獣か……」


 少女の話にマリカが(つぶや)く、巨獣とは体長5メートルから大きいものは10メートルはある魔獣である。

 泳ぐ事はできず、フルネクという島で数体の存在が確認はされてたものの、わざわざそれに手を出す者もいなかった。

 だがこの少女の兄達は、薬剤の材料を集める為に危険を犯してそれを取りに行ったのだろう。


「お願いです、お兄ちゃんを助けてください!」


 必死に懇願する少女ではあったが、相手が巨獣となれば手の打ちようがなかった。

 ドラゴンほどでもないにしても、厚い皮膚と巨大な身体は、屈強なベテランの冒険者達とはいえ勝てるかわからないのだから。


「残念だけど……」

「お、お金ならあります! お願いです!」


 そう言って少女が見せたのは汚れた銅貨が四枚ほど、少女にとっては精一杯のものだっただろうが、今のステラ達にその金で命を張れるほどの冒険をする余裕も実力もなかった。

 罪悪感に襲われつつも、ステラ達はその少女から立ち去っていく。

 後ろからは少女のすすり泣く声が聞こえてくる、手を握り締めるステラ、何とかしてやりたいとは思うものの、今の自分達ではどうにもならなかった。


「ステラ、余計な事考えないでよ、私達にはそんな余裕はないんだから」

「わかってるわよ! けど……」


 マリカの言葉に強めの言葉で答えるステラ、助けたいとは思っているが、今の自分達の実力と懐具合ではどう足掻いても島にさえいけない。

 例え行けたとしても、巨獣相手では少女の兄を助ける所か、自分達の命が危ういのだ。

 そんな事を思いながら再び少女を見た時、少女の前で何か大きな荷物を背負った見慣れない黒服を着た少年が、少女と話をしているのを目撃する。

 すると二人は何かを話した後、少女は満面の笑みを浮かべ持っていた銅貨を少年に渡していた。

 少年はその金を受け取ると、一言二言話しかけた後港の方へと去っていく。


「あいつっ!」


 怒りに震えるステラはすぐ様その少年の後を追う。

 急な出来事に戸惑っていたマリカとシモンではあったが、いつもの事だというように溜息をつくとステラを追って走り出す。


 ステラはその少年にすぐに辿り着いた。

 その少年は荷物を下に置き、港の入り口で何かを探すように立ち止まっていたからだ。


「ちょったあんた待ちなさいよ!」


 ステラの言葉に振り返った少年は怪訝(けげん)そうな顔でステラを睨む、一瞬怯んだステラだったが、先程の少女の事を思い出し再び怒りに火が点いた。


「あんた、あんな小さい子からお金巻き上げるなんて何考えてんのよ! 今すぐあの子から奪ったお金をあの子に返しなさいよ!」

「あ? てめ何言ってんのだ? 俺ぁ金なんぞ巻き上げちゃいねーぞコラ?」

「とぼけないでよ! さっき広場にいた女の子からお金巻き上げてたじゃない!

私見てたんだからね!」


 その言葉に少年は声を荒げ反論する。

 

「勘違いしてんじゃねーよボケ! 俺ぁあの子からにーちゃん助けてくれって頼まれたんで助けてやるって言ってやっただけだよ! 金もいらねーってのに無理矢理押し付けられたんだよ! 知り合いなら金返してやっといてくれや!」


 そういうとその少年は先程少女から貰った金をステラに渡す、見れば汚れた銅貨四枚、確かにあの少女のものだった。


「んじゃな」

「ま、待ちなさいよ! お、お金の事はわかったけどあの子のおにーちゃんを助けるって言った話はどうなの! ほ、ほんとは助ける気ないんでしょ!」

「ああ? てめぇさっきから何よ? 文句あんならちゃっちゃと要点喋れや、こっちも暇じゃねーんだぞコラ?」


 やたらガラの悪い少年の威圧感にステラは怖気づいてしまう、必死で何か言葉を出そうとするが上手くいかず、あたふたしているとそこにマリカとシモンがやってくる。


「す、すみません、この子が何か迷惑をかけたみたいで、すぐに向こうに行きますから」


 謝るマリカは必死でステラを立ち去らせようとするも、ステラは足を踏ん張りそこから去ろうとはしなかった。

 そして勇気を振り絞って少年に声をかける。


「助けるって嘘付いてほんとは島にも行く気はないんでしょ! あ、あの子はお兄ちゃんが帰ってくるって信じてるのに、そんな嘘で後から死んだって言われたらどれだけ悲しむかわかってるの!」

「あの子のにーちゃんが死んでるの見たのかてめー」

「み、見てないわよ! けどどう考えたってあの子のお兄ちゃんは……」

「勝手に殺してんじゃねーぞコラ! てめさっきからグダグダ言ってっけどよ、単に見て見ぬ振りしてーだけだろうがよ!」


 その言葉にステラは言葉を失う。


「俺ぁあの子と約束した以上は島には行って助けるつもりなんだよ」

「…………」

「生きてるならちゃんと見つけて助けてやる、死んでんならちゃんと戻って死んだって言ってやんねーと、あの子いつまでたっても待ち続けるだろーが!」


 少年は溜息をつくと荷物を持って再び何かを探し始める、その間ステラは俯き何も言葉を発せないでいた。

 一方その様子を見ていたマリカは、少年の探し物が何かわかった気がして、恐る恐る尋ねて見る。


「あ、あの、もしかして君が探してるのってフルネク島に行く船?」

「ん? おう、とりあえず港に行きゃいいと思って来たがどれかわかんねーで困ってたんだわ、人に聞くにしても何か今人いねーし」

「今の時間は皆大体漁に出て行ってるしね、貨物船とか客船なら少し行った先にあると思うけど、フルネク島にはいかないと思うよ」

「マジかあ、んー、どうしたもんか」


 そんな感じで少年が困っていると、マリカが何かを思いついたらしく少年に提案をしてみる。


「あ、あのさ君、いくらくらい出せる? もしよかったら私達でフルネク島に行く船とか捜してみてもいいけど、私達ここの者なんでちょっとしたツテとかもあるんだよ」

「お、マジか、助かるわそれ、金ならまあそこそこあるから早めに行ける奴探してくれよ」

「そ、そこそこって、えと、フルネク島行きの船探すのって結構た、大変なんだよねぇ……、き、金貨十枚くらい! か、かかっちゃうかもなあ……」

「あ、じゃあそれで頼むわ」


 相場より遥かに高い値段でふっかけたマリカの値段を、あっさり承諾するその少年に言葉を失うマリカ、基本高めに設定して交渉でその半分ほどで妥協するものなのだが、この少年はその額に即答したのだ。

 マリカはゴクリと生唾を飲み、改めて少年に問うてみる。


「え、えと、ほ、ほんとにそんな大金持ってるの? き、金貨十枚だよ?」

「しつけーな、金ならそこそこあるって言ってんだろが、いらねーってんなら別の奴に頼むし」

「待って待って待って! え、えと疑う訳でもないんだけど、そ、その君みたいなしょ……、人がそんなに持ってるのかなって心配で、い、いや別に疑ってる訳じゃないんだよ、ほ、ほら私達みたいな子供が金貨十枚も持ってるって言っても信用しない人が多くて、その……」

「ああ何だそーゆー事か、んじゃ前金で二枚ばかし渡しとくからそれで何とか船主納得させてみてくれや」


 そう言うと少年は懐の財布から金貨二枚をマリカに渡す。その光り輝く金貨にマリカは絶句する、紛れもなく本物の金貨だった。


(これは、いい金ヅル!)


 心の中で叫んだマリカ、一方の少年は動きを止めたマリカに再び問う。


「行けっか?」

「お任せくださいご主人様! さぁ行くわよステラ、シモン! フルネク島までの船をご主人様に御用意するのよー!」


 金貨を見てテンションMAXなマリカは、凄まじい速さで二人を引き連れ船を捜しに港中を走り回る。

 そして時間にして一時間ほどで船の手配を完了し、少年にその旨を伝える。

 

「ご主人様、船のご用意が出来ましたのでこちらへお越しください!」

「そのご主人様とか言うのやめい、つーかあんたのが年上だろ?」

「何を言われますか! お金を持ってる人には敬意を払うのが我がドレイシー家の家訓! 年齢など関係ございません!」


 あまりのテンションの高さにかなり引いてる少年をよそに、マリカは着々と出航の準備を済ませていく。

 用意された船は中型の漁船のようなもので、五人くらいの気の優しそうな船員達が操船するものだった。

 見た目は汚いものの、頑丈そうで多少の嵐くらいなら耐えれそうな船だった。


「すみません、姉がご迷惑をおかけしまして……、ですが姉は決して悪い人ではありませんので、いえ変な人かもしれませんが、とにかくすみません……」

「あー、まあとりあえず頑張れ弟」


 姉の奇行に涙を流す弟のシモンは、少年に慰められながら姉について出航の準備を手伝いに行く。

 それからしばらくして船の準備は整い、少年は残りの金貨八枚をマリカに渡し船に乗船する。


「まいどありがとうございます! また是非このマリカ=ドレイシーをご利用ください! 貴方のマリカをよろしくお願いいたします!」

「う……、うう……、どうかよろしくお願いいたします」


 ハイテンションな姉につき合わさせられる弟というのも可哀想だなと思う少年は、「弟頑張れ!」と心の中で何度も呟くのだった。

 船員が出航の準備をし、フルネク島へ向かおうとした時、今まで黙っていたステラが声を上げる。


「待って! 私も連れて行って!」


 唐突な声にマリカとシモンが驚く、一方のステラは少年を見つめ続け、身体を震わせながら言葉を続ける。


「私も、あの子のお兄ちゃんを助けたいの! だからっ……」

「いらね、お前邪魔だし来られても面倒臭い」


 ばっさり切り捨てる少年に、ステラは何も言えなくなってしまう。

 一方の少年はステラを無視して船員に船の出発をお願いする、船員は少し躊躇(ちゅうちょ)したものの、少なくとも今は少年が雇い主だった事もあり船を出発させる。

 少しずつ離れていく船を見守るマリカとシモン、そしてずっと顔を伏せ震えているステラ。


 このまま船を見続けるかと思われた次の瞬間――。


「私も……、行くって言ってんでしょーがああ!」


 次の瞬間、ステラは走り出し出航しつつある船に向かってジャンプする。

 誰もが驚く中、ステラはギリギリ船に辿り着くが、バランスを崩し海に落下しそうになる、しかし間一髪少年がその手を掴み船に引っ張り込む。


「おいコラてめぇ、何してくれてんだよ!」

「私も行くって言ったでしょうが! 話ちゃんと聞きなさいよあんたはっ!」

「来んなっつったろーが、てめーこそ人の話聞きやがれ!」

「嫌よ! 私もあの子のお兄ちゃんを助けるの! これは決定なの! いい!」


 そんな感じで少年とステラが言い争ってる所に、船の船長さんがやってきてどうしますかという感じで少年に聞いてくる。

 戻るかこのまま進むか、すでに桟橋からは100メートル近く離れていた。

 戻るのは簡単だが、無駄な時間を潰すのも面倒だと思った少年は呆れた口調で船長に頼む。


「このまま行っちゃっていいっすわ、戻るの面倒だし」

「やたっ!」


 小さくガッツポーズをしたステラに苦笑しながら、船長は船員に命令すると帆を上げ、速度を上げて一路フルネク島へと向かった。


新章です

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