『 切り裂いて気付く事 』
「君が全てだよ」
ナイフを突きつける私に、彼はいつもの台詞を吐いた。
「君が全て、君が全てだよ」
刃先が皮膚に吸い込まれていく瞬間。
そんな時まで、彼は何度も何度も何度も何度もそればかりで。
「……」
ああ、うん。
なるほどなるほど。
切り口から次々と溢れてくる私、わたし、ワタシ。
ああ、うん。
確かに彼の全ては。
「私も、大好きよ」
ふと、私の群れの中にこそこそ逃げていく加奈ちゃんの姿が見えた。
凄く嫉妬している自分に気付いて、彼を本当に愛してるんだと、本当に愛していたんだと気付かされた。