六章
翌日俺はアスカと『あの世界』のことを話していた。
何故か『あの世界』の名前が思い出せなかった。だが俺たちは唯一、神がいることだけは覚えていたので『あの世界』の事をこう呼ぶことにした。
『TheHeaven』
と。
「やっぱり『TheHeaven』についてのことは思い出せないわね……」
と、アスカが、目を細めながら言ってきた。
「なんでなんだろうな……」
しばらく沈黙が続いた。
「と、とにかくまた明日になれば何かわかるんじゃないか?」
「それならいいけど……」
アスカは何か疑問を覚えているようだった。
「何か心当たりでもあるのか?」
「なんでもないわ。じゃあ今日はこの辺で寝ることにしましょう?」
と手をパンッと叩いてから言った。
「そうだな……。そうするか。じゃあおやすみアスカ。また明日な。」
「ええ、またね。」
俺はアスカを家に送り、寝る準備をしてから、もう一度『TheHeaven』について考えていた。
だが、突然、睡魔が襲って来てその後のことは覚えていない。
翌朝、俺は自分のベットとの違いに違和感を覚えて起きた。
目を開けるとそこは知らない天井だった。
起き上がると鼻をくすぐる美味しそうな香りが漂っていた。
窓を開けるとそこは『TheHeaven』だった。
「やっと起きたわね」
「やっと起きたか」
「やっと起きましたね」
三つの声が重なって聞こえた。
鴉と、アスカと復音だ。
「おはよう。朝から三人に見守られるなんて俺は人気者だな。」
アスカがジト目で睨みつけてきた。
「じょ、冗談だ!」
「言っとくが、俺は何もすることがなかったからここにいるだけだからな。」
「それよりもどうして復音さんが?」
「この間助けてくれたでしょ?その時にこの人の能力が回復だとわかったのよ。だからここにいるわけよ。」
「そうなのか。先日はどうも復音さん。」
「復音でいいわよ。」
「わかった。そうだ、これからどうするんだ?」
「それは今から考えるんだよ。」
「い、今から!?」
「ええ、今からよ。」
「俺には準備する時間というものははないのか……。」
「無いな。」
「はいはい……、わかりましたよ……。」
「よし、じゃあ作戦会議を始めましょう。」
「その前に、この匂いはなんだ?」
さっきから漂ってくる香りが余りに美味しそうなので聞いてみた。
「これは後のお楽しみよ。食べたいなら、今は我慢して作戦会議に集中してね?」
と、笑いながら言っているが、話を逸らしたからか、目が笑っていなかった。
「わ、わかりました。」
「じゃあ移動しましょうか。」
~七章へ続く~