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女神の憂鬱  作者: 灯星
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75.リラクゼーション?

相変わらずサブタイトルと内容が一致しないですが、ご勘弁ください。

「人間って本当に生まれ変わることができるのね」


 愛の女神が私の2人目の加護者のことを知って、わざわざ私に謝りに来てくれた。


「フウカちゃん、ごめんね。この前は嫌味なことを言っちゃったわ。言い訳をさせてもらえるなら、彼女がこんなに変わるなんて考えもつかなかったの」

「いえ。私のほうこそ、ビュアスさんのお仕事に口を挟む形になってしまってすいません」


 目の前の美女に頭を下げながら、私は自分の中で起こった不思議な感覚を思い出す。彼女の奔放でやりたい放題な生活を教えてもらったにも関わらず、どうしても彼女を見捨てることができなかった。私がそう言うとビュアスは少し口元に笑みを浮かべてその理由を教えてくれた。


「それは仕方ないわ。彼女はもともと神に好かれる性質を持っているもの。極々たまにそういう人間が生まれるのよ。だからフウカちゃんも彼女の声が聞こえたのよ。でもね、私はだからこそ、彼女を許せなかったの」


 気になるほど魂は澄んでいるのに愚かなことばかりする彼女に嫌気が差して罰したのだと言う。

 私が彼女を見て感じたのと同じように彼女の本質をビュアスも感じていたのだろう。

 そこでふと気が付いたことがあって私は訊ねてみる。


「もしかして、その国の王太子と会わせたのってビュアスさん?」


 そう言うと、ビュアスは色っぽい表情を浮かべながら柔らかい笑みを口元にうかべて頷いた。

 うわぁ。なんというか色気全快だ。さすがに愛の女神。でも私相手にこのフェロモンはいらないのでは?


「それなら、ビュアスさんのおかげで彼女は眼を覚ますことができたのだと思いますよ。私はただ見ておくことしかできなかったのだから」

「ありがとう。そう言ってもらえると気が楽になるわ」


 ビュアスは私の言葉にお礼を言ってくれた。でもお礼を言うべきなのは自分のほうだ。


「こちらこそありがとうございました。今回のことは私にとってすごく為になりました」


 聞こえるがまま癒しを与えるのではなく、与えず見守ることの大切さ。もし気が付いたときにすぐに癒していたら、彼女の成長を見ることはできなかっただろう。

 どちらからとなく私とビュアスは微笑みあう。

 この時、私はこれが最善の方法であったと疑うこともなかった。しかし、すぐ後で後悔する羽目になる。






「へえ~。そんなことがあったのですね。人間は本当に色々な可能性を秘めていて興味深いですね」


 ここは闇の神の部屋。

 なぜか私は部屋の主であるゼノンと二人でお茶を飲んでいる。

 ハヤトが生まれてから400日以上が経った。 

 宣言通りゼノンもレイヤも頻繁に私をお茶やお食事、遠出に誘って口説いてくる。

 それでも私が彼らとそう言う間柄になることはなかった。

 気持ち的にはどちらにも惹かれているし、ここまで熱心に自分を求めてくれる彼らに応じたい気持ちが、日に日に強くなっていた。それに唯一の恋人であるオリセントも許可してくれている。

 だからと言って彼らとそういう関係になることに、どうしても踏み込めない自分がいた。やはり今まで過ごしてきた習慣から、恋人はオリセント1人で十分であると言う気持ちと後ろめたさがあるからだ。通りに反する行為だと感じずにはいられない。

 だからと言って彼らを避けることもできない。一度、仕事以外ではあまり接しないようにしてみたけれど、彼らはそれを鋭く察知してより頻繁に会いにきたからだ。

 その時に言われた言葉が未だに忘れられない。


『おい!なにを避けているんだ。いくら避けようともお前が俺を嫌いと言わない限り諦めないぞ?』

『ただでさえオリセントが独り占めしてて歯がゆい思いをしているのに、フウカに避けられてしまうと思い余って理性を失ってしまうかもしれませんね・・・』


 レイヤはともかく、ゼノンにあの真っ黒な笑顔全開でそう言われて、絶対避けるのは止そうと決心した。


 だって本当に実行されそうで怖いもの・・・。


 だからこうしてゼノンとお茶をしているのだが、今日の話題は私の二人目の加護者のことだった。与えることになった経過などを話すると、ゼノンは興味深そうに話を聞いていた。


「フウカも女神が板についてきたようですね。何度も瞬間移動を失敗していたころが懐かしいです」

「もうさすがにゼノンの部屋にいきなり跳んだりはしないわよ」


 過去の失敗をあげられて、思わず慌てて言い返してしまった。それに対して、闇の神は誘いかけるような微笑みをこちらに向けてくる。


「おや。私はいつでも大歓迎なのですけどね」


 うわぁ。だからその顔は反則だってば。


 私はゼノンの視線から逃れるように出してもらったカップの中を見る。珈琲のような色をしているが飲んでみるとほどよく甘い。

 ガナーと言う真っ黒な果実の汁と教えてもらった。

 あからさまに視線を外した私の耳に小さな笑い声が聞こえる。ゼノンはそれに突っ込むことはせずに話を続けてくれた。


「神に好かれる人間ってのは珍しいですが極々たまに生まれますからね。私も昔に一度だけ加護を与えたことがありますよ」

「どんな感じだったの?」


 純粋な好奇心で聞くとゼノンは懐かしそうに思い出しながら教えてくれた。


「別になにか偉業を成し遂げたりしたわけではないですよ。男性でしたね。孤児院を作って生涯、恵まれない子供たちに夜な夜な本を読んだり、抱きしめたりして安らぎを与えていましたね。自分が闇の加護者であることは死ぬまで知らなかったでしょう」

「知らないまま力を使っていたの?」

「そうですね。安らぎは目に見えた力ではありませんしね」


 たしかにそうかもしれない。と、ここで気が付き聞いてみる。


「もしかして癒しの力もそういう与え方もできるの?一気に目に見えて治すのではなくて、そばにいるだけで元気になるみたいな弱いモノとか・・・」


 そう私は訊ねるとゼノンはあっさりと、


「出来るでしょう」


 と、こたえてきた。

 なるほど。これから与えたりするときにそういう方法も一つの選択肢になるわ。 

 私がそんなことを考えていると、いきなり目の前の視界がぐらっとゆがむ。

 気が付いたらゼノンに私の頬に両手を当てられていて、ぐっと彼の顔に近づけられていた。


「えっ?な、なに?」

「仕事熱心なのは感心しますけど、あまり意気込まないほうがいいですよ。フウカがつぶれてしまわないか私は心配です」


 そう言うと軽く頬に口づけをしてくる。その瞬間体中に暖かいモノが広がる。エステで経験したリラクゼーションとは、比べ物にならないほど心地がいい。何度か経験しているので、これはゼノンが安らぎの気を私に与えてくれたのだとすぐに分かった。だからいきなりの彼の行動に動転するわけでもなく、素直にお礼を言うことにした。するとゼノンは先ほどと同じような魅惑的な笑みを浮かべながら、


「いえいえ。役得なのでフウカの為でしたらいつでもどこでも何回でもやりますよ」


と言いながら、もっと顔を近づけてきた。

 美しい顔を近づけられて、私は慌てて彼のそばから逃げる。


 うう!だから照れてしまうってば!


 逃れながらも私の顔に熱が溜まってくるのを止めることはできない。鏡で見なくても顔が赤くなってしまっているのが分かる。


 本当、確信犯でしているのだからたちが悪いわ!


 これ以上ダメージを受けるわけにもいかないので、私は早々にお茶を飲み終えて闇の神の部屋から退出することにした。


 神に愛される人間とありますが、『笑う子も泣く公爵令嬢』のサラサもその一人です。

 久しぶりにゼノンとフウカの会話を書いて、楽しかったです。もっともっと甘々にしたかったのですけど恥ずかしくて難しいですね。

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