73.戦神の苦悩
R15です。ご注意ください。
ちなみにオリセント視点です。
オリセントは隣でやすらかに眠っている、最愛の少女のあどけない寝顔をじっと見つめる。
先ほどまで自分の胸の中で、可愛らしい鳴き声を聞かせてくれていた。
絹糸のような彼女の流れる銀色の髪を大きな手で優しく撫でる。
つい欲望のままに激しく抱いてしまったので、彼女は終わるとともに気を失うように深い眠りについた。だからさわっても身動き一つしない。
オリセントは彼女を知るまではどちらかといえば淡白だったのだが、小さな彼女を自分の大柄な身体の下に組み敷くと、貪欲な欲がどんどん膨れ上がり自制を失いかける。そしてつい、彼女に無理をさせてしまうのだ。
未だに自分以外が彼女のこのすばらしい体と声を知らないのかと思うと、知れずに優越感が胸のうちにわきあがってくる。
「まあ、それも今だけだがな・・・」
まだ片手ほどしか床を共にしていないのは、彼女に無理をさせたくない気持ちと、これ以上に彼女に溺れのめりこむ事に躊躇しているからだ。
彼女が自分一人のものにならないことはこういう関係になる前から分かっていた。
彼女はきちんと自分に好意を持っていると告げてくれた。
それは本当に嬉しく、幸せと言うものを誕生して初めて味わうことができた瞬間だった。
だが、たまたま使命があったから彼女は自分と向き合ってくれたのも事実だ。
もしそれがなければ、おそらく最高神であるレイヤかゼノンと初めてこういう関係になっていただろう。
この愛おしい癒しの女神の気持ちがそちらのほうに向かおうとしていたことを、オリセントは知っていた。
そして今はそれを無理やり封印していることも。
それでも律儀な彼女はもし自分が他に眼を向けないでほしいと言えば、その封印を解くことはないであろう。
もし、彼女が癒しもしくは守護の女神でなければ、もしくは自分たち神が永遠に近い生命がなければ、間違えなく自分の欲のままそう言っていた。
いや、彼女に人間としての記憶がなければ思わず言っていたかもしれない。
それは彼女の精神の危うさを意味していた。
自分はフウカやハヤトと一緒にいることで肉体的というより精神的に癒しを貰っている。二人の誕生がこれほどまでに自分にとって支えと安らぎになるとは想像もできなかった。
だが、フウカにとってはどうだろう。戦神である自分と一緒にいることは、どうしても人間界の血みどろな戦乱を思い起こしてしまうはずだ。
「それでも、俺はお前の恋人であることをやめることはできない」
ハヤトが産まれた以上使命は果たしたので、恋人同士である必要はなくなっていたのだが、オリセントは彼女を手放すつもりはなかった。たとえ自分の姿が彼女にとって悪夢を思い起こしてしまう要因になってしまっていても。
優しすぎる彼女が未だに悪夢を見続けていることを知っている。いまは長い時間抱いてしまったので身動き一つしないほど熟睡しているが。
もしかすると仕事以外は戦神である自分の姿を見せずに、ゼノンやレイヤと恋人か夫婦となればこの悪夢から少しは開放されるのかもしれない。
彼女が初めて戦場を眼にして、悪夢を見るほど精神的にダメージを受けたのを癒すことができたのは、自分ではなくゼノンやレイヤだった。
だが、オリセントはもはや自分から身を引くことはできないほどフウカに執着していた。
もし人間ほどの寿命しかなければ、彼女の精神はもつかもしれない。
だが、我々神の生命はほぼ永遠に近いのだ。数えることもできないほどの年月を、眼を背けたくなるような戦場を見守り続けなければいけない。
このままだといつか人間としての彼女の心が病んでしまって、彼女自身が人間の記憶の封印を願ってくることがオリセントには予測できた。そしてそれは彼にとって最悪のシナリオであった。
それぐらいなら、たとえ自分の中で嫉妬心が沸き起ころうともそれを封印して、彼女の心の支えや安らぎになるレイヤやゼノンも同列で彼女の恋人になることを容認するほうを選ぶ。
「二人とも諦めてないしな」
わざわざ二人とも自分に宣言してきた。ハヤトが産まれた以上、二人は容赦なくフウカに迫っているだろう。あの二人に言い寄られていながら、未だに頑なにそれを拒んでいるフウカの律儀さに思わず口元に笑みが浮かんでしまう。
だが、それも時間の問題だろう。
オリセントとしては少しでも長くこのまま自分だけのものでいてほしい気持ちもある。しかし、彼らが見逃してくれるはずもないし彼女自身、彼らに惹かれているのはわかる。どうせそうなるのなら意固地にならずにさっさとなってくれたほうが自分としては諦めもつくのにと、ついそう思ってしまうのだ。
オリセントはしばらく彼女の滑らかな髪の感触を楽しんでいたが、彼女の眼に涙の跡があるのに気が付いてそこにそっと口付けをする。
激しく抱いてしまったせいで、涙が少し溢れてしまったようだ。
涙を溜めながらも自分に縋りつく彼女の、普段では考えられないような艶を帯びた表情を思い出して、身体が再び熱を帯びてくるのを感じる。
自分の止まる事のない欲望にあきれて小さくため息を吐いた。
「しかたない。すこし部屋に戻るとするか」
自分に言い聞かせるようにオリセントはそう言うと、寝ている彼女にきちんと寝布をかける。そしておもむろに彼女の顔に近づいてそっと触れるだけの口付けをその唇に施した。それだけでは満足できなかったようで、名残惜しそうに頬やら髪にも数回口付けをしてから瞬間移動でその場から姿を消した。
久々の更新です。おそくなってすみません。
久々に書くと文章が浮かんでこなくて悪戦苦闘しています。
書きたいことを文章にする難しさにいま直面しています。