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女神の憂鬱  作者: 灯星
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71.守護神のバリア

 ゼノンとのお茶会を無事終えて、今度こそ部屋に戻ることにする。もちろん瞬間移動でだが、さすがにもう一度ハヤトを目掛けていって、変なところに跳ぶことは避けたいものだ。ここから自分の部屋ぐらいならなんとか跳べるだろう。

 なんとか跳ぶ事はできた。跳んだ先の自室では、黒髪の少女と水色の髪の少年が楽しそうに話をしていた。

 さきほど闇の神の部屋にいたハヤトとエダである。


「お、帰ってきたね。思ったよりゼノンに捕まらなかったみたいだね」


 水の神が私の姿を見て、愉快そうに笑いかけてくる。


「お、おかえり。フウカ」


 少女となってしまったハヤトがそれだけ言うと、あと何を言ったらいいかわからないという表情でこちらをみていた。ハヤトの気持ちはよくわかる。姉である私が口説かれている姿をみるのは、何ともいえない気持ちになってしまうものだろう。


「ただいま、ハヤト、エダ。えっと、ハヤトは瞬間移動の練習してたんだよね?上手くできた?」


 私はゼノンとの話題から逃れたくて違う話を強引に出してきた。


「フウカには悪いけど、一発でほとんどの場所いけるようになったよ。ね?ハヤト」


 エダがハヤトを振り返りながらそう言うと、ハヤトは無言で一度頭を上下に振る。


 そ・・・そっか。たしかにハヤトは私みたいに方向音痴ではないものね。うらやましい・・・。


「じゃあ、今日の授業はこのあたりでおしまいだね」


 エダはハヤトに向かいながら笑いかける。その笑い方がひどく優しげである。それに対してハヤトも口元に笑みをうかべながらエダに礼を言っている。思った以上にずいぶん一日で仲良くなったものだ。もちろん、恋愛感情ではまったくないみたいだが。

 私の娘を口説くとか言っていたから心配だったけど、さすがにエダも事情を話したから、ハヤトが警戒してしまうような言動は止めてくれたみたいだ。

 よかった!


「じゃあフウカ、ハヤト。またね~」


 エダはそういいながら楽しそうに手を振り姿を消す。そしてその場はハヤトと私と二人っきりになった。


「ハヤト。ずいぶんエダと仲良くなったみたいね。安心したわ」

「隙を見せたら口説くとか言われたけどな・・・」


 守護の女神となった少女は苦虫をつぶしたようにかなり眉間にしわを寄せ、スミレ色の瞳はこちらを恨みがましく睨んでいる。


 や、やはり言っちゃったんだ。

 釘を刺したんだけどなあ~。


 しかし、元々弟だったしほとんどその容姿は若返っただけで変化してないのだけど、思っていた以上に私としては違和感がある。本人に言うと思いっきり否定されるだろうが、ちょっとしたしぐさや表情などが、男のときとちがってきちんと女の子のものになっているのだ。

 口調は男のものだけど、口を開かなければ中性的な魅力があるこの少女に言い寄る男性は後を絶たないだろう。

 その少女は私がそう思っているとはわかってないようで、苦笑しながら話を続けた。 


「フウカを諦めるためにその娘にってのは俺はどうかと思う。まあそれが俺だから相手にはしないけどな」


 そう聞いてエダがハヤトにそこまで事情を説明してしまっていることに、頭を抱えたくなった。

 まあ、ハヤトが相手にしないって言うならいいか。

 すくなくてもハヤトも男性神との恋愛など、しばらくは考えようもないだろうし。


「そこんとこさえなければ、エダはいい奴っぽいし気が合うから俺は仲良くできるから心配はしなくていいぜ」


 ハヤトは私の考えがすぐにわかったようだ。たしかにさっきの雰囲気をみていると仲良くはできているようだ。とりあえずは口説かないとエダも言っているようだしそれを信用するしかない。


「そうね。確かにエダはいい人よ。ちょっとハヤトに似ているなあって思っていたんだ。だからハヤトとエダが気が合うと思うわ」

「ああ。で?急ぎの用事は終わったのか?」


 ここでハヤトは話題を変えてくる。そう言えばオリセントからの言葉を聞いて、説明をする暇もなく跳んでしまったんだった。

 ハヤトも今後加護する相手が出てくるだろうし、説明しておくべきね。

 そう思って、今日の出来事をハヤトに説明する。特に加護を人間に与えることについては詳しく説明することにした。


「へえ。加護ねえ~。そう言うのがあるんだ」


 ハヤトもこの話には興味を示してくる。


「と言っても、守護の神がなにするべきなのかさっぱりだからよくわからないなぁ。ってかそもそも守護の力ってどんなものかもわからないけど・・・。フウカは癒しの力ってどうやって出したの?」

「えっと・・・。オリセントが傷ついてたからそれに手を当てて治れ~って念じたら勝手に治ったよ。それが一番最初かな」


 私は聞かれるがまま答える。噴水で怪我させてしまった時のことだ。たしかあれが一番最初にその力を意識した瞬間だった。


「ふ~ん。念じるねえ。じゃあおれも守護ってことは守りだからバリアをイメージしたらいいのか?」


 ハヤトはそう言うと小さく深呼吸してから眼を閉じて、手を私にかざしてくる。

 次の瞬間。

 部屋中に金平糖色の気が充満する。

 ハヤトの気である。

 私とハヤトだけでなく、この部屋全体に小さな気の膜が張られている。

 これが守護の力なんだ。すごく温かく本当に守られていると感じることが出来る。


「すごい!ハヤト。バリアできたね」


 心地よいその守りの膜に私は興奮してハヤトに声をかける。するとまるでシャボン玉のように一瞬でその気の膜が消滅する。


「あっちゃ~。破れてしまった。バリアって気をずっと集中しないと張り続けないのか。なかなか神経を使うもんだな。でも出来るってわかってよかった」


 ハヤトは閉じてた眼を開いて大きく息を吐いている。どうやら私が話しかけたことで集中が途切れてしまって、バリアが消えてしまったようだ。


「声かけちゃってごめん。でも、やっぱりハヤトもすぐにできるようになるんだね。こうなると守護の神がハヤトであることは間違いないようね。大丈夫?」


 私のときは自分が神であると自覚した瞬間、泣いてしまっただけにハヤトの気持ちが気になる。しかし、ハヤトはそれほど辛そうな表情を見せずに私に笑いながら考えを口にしてきた。


「ん~。まあなっちまったものは仕方ないって奴だな。フウカも同じ目に合っているわけだし、こういう運命だったって言う割り切りが今の俺には必要なんだって思うぞ」


 昔から前向きだったが、いきなり異世界に飛ばされて女に性転換されて神だと言われたのに、わずか数日で割り切ってその神としての能力や仕事に興味を示せるハヤトに思わず感心してしまった。


「そういうところは相変わらずね。オリセントが帰ってきたらもっとその力とか仕事について色々聞くことにしよう。まあハヤトが実践に出るのはもう少し先だろうけどね」


 こうして私とハヤトは軽く食事をとりながら、オリセントが帰ってくるのを待つことにした。



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