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女神の憂鬱  作者: 灯星
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67.忠告

 ハヤトはよほど疲れていたのかそのまま熟睡してしまった。だから隣の小部屋にベッドを用意してもらってそちらで私は寝ることにした。

 広いので別に同じ部屋でも十分ベッドを入れることができたのだが、やはりハヤトにしたら別の部屋のほうがいいだろう。

 次の朝に私はハヤトにセレーナとノアを紹介する。セレーナにハヤトのサポートをお願いしたことを伝えるとハヤトはすぐに了承する。私がハヤトが知的美女が好みであることを知っていた。それで言うならセレーナは彼の好みのタイプだろう。

 ハヤトは昨日風呂入らずに寝てしまったので朝から風呂に入り、出てきてすぐに髪を切ってくれと強く要求してきた。それに対してセレーナもノアも必死にそのままでいるよう懇願するが、ハヤトの意志は強く私に頼んだり、挙句の果てに自分で切るからハサミくれとまで言うので、二人も折れて大層落胆した表情でハヤトの髪を切っていった。


 いいなぁ~。ついでに私のも切ってくれないかしら・・・。


 重い髪を切りたいと前に言って断固拒否された身としてはついでにお願いしたいところだが、彼女たちの悲痛な表情にさすがに言いだせない。

 結局ハヤトの髪はショートボブぐらいになった。ハヤトとしたらもっとばっさり切りたかったようだが、セレーナとノアの表情に根負けしそれぐらいに収まった。

 そうして改めてハヤトを見ると、ズボンをはいていることもあってますます中性的な感じになっていた。中学生のころのハヤトを見ている感じでどこか懐かしい。

 その後、二人で朝ごはんを取りながらご飯のこととここの男女比について話する。


「あまり驚かしたくないけど、今後のこともあるから言うね。ここって多夫多婦制なんだって。たとえば愛の女神のビュアスさんは5人の男神の恋人がいるらしいの。で、女神が貴重だからってけっこう男神に言い寄られたりするらしいから気をつけてね」


 私は聞きたくないだろうなあと思いつつそう言うと、案の定目の前の少女は顔を思いっきりしかめる。ここの国と自分の性別について受け止めるだけで精一杯だろうけど、忠告なしでいきなり男からアプローチされたらさすがのハヤトも頭が真っ白になってしまうだろう。

 そう言うとハヤトは逃げる方法としてテレポートのことを聞いてきた。確かにテレポートははやく取得したいだろう。

 しかし、それよりもやはり気を感じることができる必要がありそうだ。私もレイヤに一番に教えてもらったのだから。

 そこで、前に作ったペンダントのことを思い出す。

 そうだ。ペンダントに気を込めながら説明しよう。

 しまっていたベッドサイドの引き出しを開いてそれを取りだす。

 4つのペンダントから自分の子用に作成した金平糖色の石のついた物を取りだす。


 まさかこれをあげる相手がハヤトになるとはね・・・。


 そう思いながら気を丹念に込めると石の輝きが変化した。透明の石の中央に輝く光が入っている感じだ。


 へえ。宝石に気をこめたらこうなるんだ。


 そう思いながらハヤトに渡すとありがとうと言いながらすぐに付けてくれた。

 シンプルなデザインだし、気の色と一緒なのでよく似合っていて私を自己満足させてくれる。

 だが、ハヤトには気がまだ見えてないようだ。

 レイヤが教えてくれたように目を閉じて精神を研ぎ澄ますようにとアドバイスして、今度はオリセント当てのモノに気を込める。

 そうすると、ハヤトの表情が一転した。

 やはり私と一緒ですぐに気を感じ取ることを習得したようだ。

 ハヤトは目を開けたあともしばらく放心したように私や自分の身の回りを見まわしていた。

 私は黙ってその様子を見守る。

 その時に頭の中に心声が聞こえてきた。


『フウカ。おはよう。守護の女神ももう起きている?』


 それは久々に聞く水神の声だ。


『おはよう、エダ。起きているよ。もしかして今日はエダの番なの?』

『そうそう。で、お願いだけどよかったら今日の授業は彼女と二人でさせてもらえないかな?』


 その時、前に私の子が女だったらという話を思い出した。さっそく接触を求めているのか・・・。これはきちんと忠告しないと。


『エダはハヤトの事情聞いているの?』


 そう聞くとエダは私と一緒で人間の記憶があって、それももともと男だったことは分かっていると言う。


『そうなの。もともと私の弟だったの。だからハヤトは気持ちは男なんだからそれをふまえて接してね。まだまだあの子も気持ち的に不安で一杯だと思うし』


 そう言いながらも私はこの時点で彼と二人っきりにさせるつもりはなかった。


『わかっているよ。僕はただ、彼女にとってフウカの次に相談しやすい相手になりたいだけ。今はそれぐらいにしとくよ』


 そう言われて彼が真摯にそれを望んでいるのがよく分かった。ハヤトとしてもエダとなら他の知っている神より仲良くなれるだろうと思う。性格的に似ているところがあるからだ。

 すこし考えこんでいると、今度は違う声が頭に入ってきた。


『フウカ。悪いが急に仕事が入った。ハヤトとフウカに挨拶したかったが、時間がないのでそのままいくぞ』


 戦神であるオリセントの声である。彼にしてはだいぶあせりを含んだ声だ。それほど余裕がないのだろう。


『待って!私も行く!』


 彼が仕事と言うのだから人間界の戦のことだろう。と言うことは自分の仕事もあるはずだ。彼1人がもう重荷を背負う必要はない。出産も無事にすんだのだから。


『ハヤトはどうするんだ?』

『エダが相手してくれると言っているの。だから頼むわ』


 オリセントが聞いてくるのに対してすぐに返事を送り、それと同時にエダにもメッセージを頭の中で送る。


『エダ。仕事が入ったからハヤトをお願いしてもいい?』

『任せといて。僕としては役得だから安心していいよ』


 そういうエダの声は今まで以上に嬉しそうで、思わず頼んでしまってよかったのか心配になる。  


『さっきも言ったけど、ハヤトに余計なちょっかいとかしないでよ。私はエダを信用して任せるんだからね!』


 私にしては少しきつい口調で釘をさすことにした。さらに簡単にハヤトに教えたことと気を感じることができるようになったことを説明する。


『大丈夫だよ。それよりも仕事大変そうだけど、がんばってね。僕はフウカが傷つくのは嫌だからね』


 エダはここで口調を変えて真剣にそう言ってくる。本当に私のことを思って言ってくれているのが分かってうれしくなる。

 ハヤトのことを思ってつい忠告してしまったけれど、エダなら大丈夫だろうと思いなおすことにした。


『ありがとう。でもこれが私の役目だから』


 こうして私はハヤトにもエダが来ていろいろ教えてくれることだけ告げて、さきほど完成したペンダントを手にオリセントがいるところへ跳ぶことにした。

 久しぶりの更新です。

 内容は『勘弁してくれ』のフウカ視点です。

 これからオリセントと人間界に行きます。

 本当に同時進行はむずかしい・・・。


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