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女神の憂鬱  作者: 灯星
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64.守護神の名前

 私が普段寝ているベッドで産まれたばかりの少女が寝ている。それを私はみつめながら少女が目を覚ましたらどう説明したらいいか必死に考える。

 草原で気を失ってからオリセントが私も少女も担いでこの部屋に移動してくれた。そしてそのまま、このベッドに寝かすとオリセントはすぐにレイヤの部屋に跳んでいった。説明するためだろう。


「はーくん・・・。どう言ってもショックだよね」


 変わり果てた姿の弟をみながら私はつぶやく。

 こちらの世界に着てしまったのもショックだろうが、私が見れた段階でこうなる運命だったのかなって思う。隼人の性格からいってそこは受け入れやすいだろう。だが、問題はそれだけではない。なぜかこちらでは女になっているのだ。

 彼はたしか女の恋人もいたはず。ということはそういう性癖はないから本当にショックをうけるだろう。さきほど胸を押さえたまま気を失ったことから、並々ならぬ衝撃を受けたことは間違いない。

 さらにもう一つある。


「私の子として生まれちゃったこともショックだよね」


 姉と思ってた私の子供として生まれるなんて、なんとも言えない気分になるだろう。私自身、弟が自分の子供・・・それも娘だなんてどうすればいいのか迷ってしまう。


「姉貴の子?」

「うん・・・。隼人にはきついよね・・・って、えっ?」


 思わぬ返事が返ってきて下を見下ろすと、ベッドの上の少女のすみれ色の瞳がバッチリと開いてこちらを見ていた。眼を覚ましたんだ。


「ああー。やっぱ夢おちってわけでなかったか」


 私がどう声かけしようか迷ってる間に、少女は掛布の中でごそごそしながらそう言う。自分の胸の感触を再び確かめているようだ。


「勘弁してくれ~。こんな奇想天外なことってあるか~」


 それだけ言うと少女は、ベッドの上で掛布を頭から被って身体を丸めている。


「は・・・隼人」


 そりゃあ混乱するわよね。

 思わず呼びかけてしまうが落ち着くまで声を掛けないようにする。この状態で色々説明しても余計に混乱するだけだ。

 かわりに掛布に包まっている少女の頭のあたりを軽くなでるようにした。

 少しの間そのままで沈黙が続いていたが、やがて掛布を顔の部分だけ開けてこちらに顔を近寄せてくる。相変わらず顔意外は掛布をかぶってる状態だ。


「姉貴!事情説明頼む!」


 こうして簡潔に説明することにした。






 守護の神として隼人までこの神の国に転生してきたこと。

 なぜか女神となっていること。

 私と戦神との子供として誕生したこと。

 説明していくとどんどん少女の顔色が悪くなる。


「女になってたのもショックだけど、姉貴の子だと!?」


 私と一緒でかなり気まずく思っているようだ。


「だっていなくなってから一ヶ月ぐらいしか経ってないだろう?それなのになんで生まれるんだよ?ありえないだろう」


 信じたくなくてすごい剣幕で聞いてくる。


「残念ながら、ここでは一週間もあれば産めちゃうのよ・・・」


 私は可哀そうだと思いながらも可能であることを教える。そうすると少女は余計に絶望という感じで顔色を真っ青にする。

 少女は私の後ろに見える姿鏡に気が付くと、がばりと掛布を取って自分の姿をじっと見ている。

 鏡の中でベッドの上にでかいパジャマを着ている少女が、思いっきり不機嫌そうに眉をひそめている。


「姉貴を責めるのはだめかもしれないけど、せめて男に産んでくれよ~」

「ご、ごめん」


 思わず謝ってしまう。でもそんなの私が決めれるわけがない。隼人も分かっているようですぐに謝ってくれる。


「分かっているよ。ただのやつあたりだ、ごめん。で?相手の戦神とやらはさっき姉貴を抱いてた大男か?」


 大男・・・。たしかにオリセントは大柄だけど、なかなかひどい言いようだ。


「うん。オリセントって言うの。今、隼人が落ち着くまで2人のほうがいいだろうって自分の部屋にもどってると思うわ」


 そう言うとこれ以上自分の姿を見られないとばかりに鏡から私に視線を戻す。


「色々納得できないこともあるし、この状態を受け入れることはできないけど、姉貴が消えることなく幸せになっているって分かったことだけは救いだよ」


 仕方ないとばかりにため息を吐いてそう言ってくれる。


「ありがとう。隼人には悪いけど、隼人がここに居てくれることは本当にうれしいの。自分勝手だよね、ごめんね。せめて男神に産んであげれればよかったんだけど・・・」


 弟の隼人と話していて、如何に自分が知らないうちに孤独を感じていたのか思い知る。ずるいし利己的だけど、隼人までこうなってくれて嬉しいと思ってしまうのだ。私だけではないから。

 そもそもなぜ守護神を産む使命があったのか。それは守護神が隼人だったからではないだろうか。だから私が産まなければいけなかったんだ。ただ、なぜ男神でなく女神なのかと思ってしまうが。

 そう言うと少女は苦笑いをしながらこちらを覗きこんだ。


「オカマの親みたいなこと言うなよ、まったく。姉貴がどうこうできる話ではないんだろ?時間はかかるだろうけど、この状態を受け入れるしかないなら仕方ないだろ」


 その言葉に私はようやく隼人らしさが出てきたのでほっと安堵する。そういえばこの弟は立ち直りがものすごくはやく楽天的で、前向きなところがあった。こんなところは我が弟ながらすごく尊敬できるところだ。


「はーくん。私ができることはなんでもするから。おねえちゃんを頼ってね」


 思わず私は少女になってしまった隼人を抱きしめる。分かっていたはずだけどその身体の柔らかさにすこしびっくりしてしまう。少女はそっと私の身体に手を回しながら大きなため息をつく。


「はぁ。おねえちゃんって言ってもここではかあちゃんになるんだろ?ほんと、カオスだぜ」


 そう言われて、そう言えば関係が母になってしまうことを思い出す。姉貴って呼び名もおかしくなるし、そもそも隼人って名はどうなるんだろう?私はそう考えて抱きしめたまま質問する。


「ねえ。隼人。名前どうするの?私はフウカってままでいっているんだけど、違う名前をレイヤかゼノンに決めてもらう?男の名前だけどそのままハヤトでいく?」


 そう言うと少女は私から勢いよく身体を離して回答してきた。


「ハヤトでいく!名前まで変えられてたまるか。変って言われてもハヤト以外呼ばれても返事しねえよ」


 ここではフウカもハヤトも普通ではないので男の名前、女の名前の区別も付かないから別に大丈夫だろう。

 こうして守護の女神の名前はハヤトとなった。

 まだ、フウカも隼人も少女=守護神=『はやと』という認識があまりないので、隼人、少女って名前で表しています。

 次回からはハヤトで統一します。 

 最初っからハヤトでいくのはどうかと思ったので・・・。わかりにくいかな?

 隼人視点の『勘弁してくれ!』も同時に更新しています。よかったら見てね。

 

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