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女神の憂鬱  作者: 灯星
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63.待望の守護神誕生!・・・あれ?

 しばらくオリセントと草原で他愛もない話をしていた。そのときにそれは突如起こる。

 私の気の変化だ。

 クリーム色と金平糖のような透明の黄色のマーブル状だった気が徐々に膨れ上がる。

 前に見た気の変化だったので、私は何が起こったのかすぐにわかった。

 ダリヤがウリュウを産んだ時と一緒だ。とうとう私の番になったようだ。

 教えてもらったように軽い脱力感が体中から沸き起こる。


「とうとう来たか」


 隣にいたオリセントもなにが起こっているのか察知しているようで、どこか興奮冷めやらぬ口調で私の身体を横抱きに支えてくれている。私は彼に身体を預けたままその気の変化を見ていた。

 膨れ上がった気がやがて二色に分離していく。金平糖のような気が徐々に人の形を形成していった。


 あ、女の子なんだ。


 そこに現れたのは、肩ぐらいまである黒髪の少女である。外見15歳の私より年上に見える。18歳ぐらいというところだ。顔立ちは私と同じくスミレ色の瞳をしているせいか、今の私と似通ったところがある。垂れ目がちな私と違って彼女は切れ長でも垂れ目でもないが、大きな瞳をしている。まつ毛もながくくりんと、形よくカールされている。唇はグロスを塗ったようにピンク色だが、ふっくらとした形である私と違って大きいけれど太くない。そのせいか少し中性的に感じる。


 あれ?この顔って私というより・・・。


 ここですこし違和感を覚える。この顔に私より似ている人物を私は知っていたからだ。それに、少女が来ている服にも疑問がわく。

 ウリュウの場合、赤茶の布をまとっていた。だが、彼女はどう見ても彼女の大きさに合わないパジャマのような物を着ているのだ。いや、訂正しよう。パジャマそのものだ。おまけにその柄には見覚えがある。


 まさか・・・。


 オリセントに支えられたまま、私は固まってしまった。あまりにもありえない事実に思考が真っ白になる。

 そんな私たちを少女は不思議そうに凝視していたが、あることに気がついておそるおそるといった感じでちいさくつぶやく。


「もしかして・・・・あねき?」


 少女から出た言葉は私の推測が正解であると告げていた。だがまだ思考がダメージから立ち直っていない。


「姉貴だよね?」

「は・・・隼人?」


 私がなんとか発した言葉に、少女はなにを分かり切ったことを聞いてくるんだろうと不思議そうな顔しながらこっちに近づいてくる。これですべてがかみ合う。なぜ、弟である彼だけが記憶を失わずに私の魂のような状態をみれたのか。

 目の前の少女の顔は私と言うよりも、中学や高校のとき女に間違えられるほど中性的だった隼人を元にもっと女性らしく派手になった感じだ。今着ているパジャマはどうみても弟が愛用していた柄だ。寝ようとしているときにこちらに飛ばされてしまったのだろう。

 私はなんとかオリセントに支えてもらっていた身体を起こして、少女の腕に手をのばす。


「なんとか、神の国とやらに戻れたんだな。よかったよかった。心配してたんだよ。あれ?姉貴触れることができるようになったんだ。なんで?」


 少女はのんきそうに私が掴んだ手を触り返してきた。まったく自分の変化に気が付いていないようだ。


「あの・・・隼人・・・」


 なんとか状態を把握させようと声をかけるが、目の前の少女は興奮したようにどんどん私に聞いてくる。


「もしかしてここは夢?わざわざ姉貴、俺の夢の中に会いにきてくれたのか?律儀だな~」


 楽しそうに笑うその表情はよく知った隼人そのものである。このままではなかなか彼を説得できそうにない。ここには鏡も水たまりもないのだ。自分の身体の変化を把握するには、今までなかったものの感触に気が付くことが大切だろう。私は意を決して、少し大きめに弟の名を呼ぶ。


「隼人!ごめん!」


 そう言ってパジャマの上からそれなりにある胸のふくらみに触る。


「な!いきなりなにすんだよ!姉貴・・・ってあれ?」


 目の前の少女はいきなりの私の行動に、びっくりして慌てふためいたように私の手を払いのけるが、いままでにない自分の身体の感触に違和感を覚えてゆっくりと視線を下げていく。

 少女はあり得ない自分の胸のふくらみに、無言のままゆっくりと両手を持っていく。

 それからしばらくして草原に大きな叫び声が響き渡る。


「なんじゃこら~!!」


 かの有名な名セリフと一緒だったのは、おそらく弟が世代は全然ちがうのにDVDを全巻持っているほど、その俳優の大ファンだったからだろうか。

 それだけ言うと、自分の胸に手を当てたまま少女は気を失ってしまった。

 崩れ落ちる前にずっと黙って様子を見ていたオリセントが、とっさに少女の身体を支えてくれる。

 オリセントはしばらくの間、腕の中にいる少女を見ながら何かを考えていた。この状態を把握しようとしているのだろう。私もだまって少女とオリセントを見つめる。


「よくわからないが、もしかしてフウカの妹だったのか?」


 しばらくしてからオリセントは少女の身体を持ってきていた布の上に寝かせる。その作業を終わってから聞いてくる。


「弟だったの・・・。なんで女性の身体なのかわからないけど・・・」


 私は正直に答える。

 オリセントもそう聞いてなんとも言えない表情になる。男が女として転生するなど、おなじ男として同情してしまうのだろう。


「ともかく、隼人が目を覚ましたから事情を説明するわ。到底受け入れがたい事実でしょうけど・・・」


 どう説明すればいいか迷うが、その役目は私しかいないだろう。


「ああ。レイヤやゼノンには俺から説明しとく。目覚めてフウカが話して落ち着いてから、俺やレイヤたちと話したほうがいいだろう」

「ありがとう。そうしてくれるとうれしい」


 彼のいつもながらの気遣いに感謝を口にした。 


「何はともあれ、この気は間違いなく守護の神だな。しばらくはこの事実を受け入れるので精一杯だろうから、フウカはできるだけ彼女に付いてやってくれ」


 オリセントの彼女発言につい違和感を覚えてしまうが、この外見では当たり前のことだと思いなおす。隼人もだけど私もこの事実を受け入れるのにしばらく時間がかかってしまいそうだ。


「ああ。言い遅れてしまった。産んでくれてありがとう」


 本当に優しい顔でそう言われてうれしくて思わず微笑み返す。私の顔をみてオリセントはごく自然に私の唇にそっと触れる程度の口づけをしてきた。

 これからが大変だけど私にはオリセントがそばで支えてくれているし、隼人は私が支えてなんとか立ち直ってもらうしかないと心の中で決意を固めることにした。


 とうとう生まれました。隼人を守護神にしようとは出てきたときから考えていたのですが、男にするか女にするか迷いました。でも、男だと読んでいる人には予想通りかなって思ったので、女に性転換させたらという考えが浮かんできました。そしたら、どんどん話が膨らんできちゃって・・・。予想外だ!と思ってもらえたらわたしはニヤリと笑っているでしょう。

 同時進行で、隼人視線での話を書いてみました。『勘弁してくれ!』です。これは『女神の憂鬱』の番外編という感じかな?話が膨らんでいったら『女神の憂鬱2』となるかもしれませんが・・・。


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