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女神の憂鬱  作者: 灯星
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61.関係の修復

「こ、告白しちゃったな~」


 私は昨日の自分の告白を思い出して一人で赤面する。オリセントも言葉を返してくれて抱き合ってキスを繰り返したが、妊娠中ということもあってそれ以上は遠慮してもらった。いくら大丈夫と言われても私の常識としては、生まれるまではそういう行為は避けたいからだ。

 結局、オリセントには部屋に帰ってもらうことになった。さすがに何もしないで一緒に寝てほしいとは言えないからだ。

 一人悶々としていると、いつもどおり侍女のふたりが入ってきてくれて朝の身支度を手伝ってくれる。


「フウカ様。レイヤ様から伝言がございます」


 ノアがそう教えてくれる。

 どうやら朝の身支度がすんで時間があけば呼んでくれってことらしい。

 とうとう、レイヤと話をする機会が訪れた。

 ありがとうとお礼を言う。そして二人に悟られないように唾を飲み込みながら、自分の気を注意深く見る。クリーム色と金平糖のような透明の黄色の気が、昨日よりより一層マーブル状になっていた。

 これは成長している証拠なのかな?

 つまりは一目瞭然で私の今の状態をレイヤは知ることになると言うことだ。

 どんな反応されても私は私だ。がんばるしかないよね。

 二人が部屋から退出したのを見届けてから、心声でレイヤを呼ぶ。するとすぐに空間がゆがみ金色の髪の青年が姿を現した。

 その無表情の顔は今まで私に見せていた表情が豊かすぎる彼とはかけ離れていて、覚悟と決めていたにも関わらず動揺してしまう。


「レイヤ・・・」


 思わず彼の名前を呼んでしまった。だが、レイヤはその表情を変えることなく淡々と言葉を発す。


「フウカ。よく守護神をその身に授かってくれた。この世の責任者としてお礼を言おう。戦神、癒しの神、守護神がそろうことで乱世に満ちた人間界も平穏を取り戻せるようになるだろう」


 彼の言葉は最高神として威厳に満ちた言葉であり、私はそれに対しては一人の神としてありがたくその言葉を受け取る必要があると感じて頭を下げながらお礼を口にする。


「ありがとうございます」


 こういう立場を彼は選択したのだろうかと私は考える。言ってみればただの上司と部下のような関係だ。正直さびしいし辛いと思ってしまう。でもそう思う権利が私にはないことも分かっているので、頭を下げたまま彼の次の行動を待つことにした。


「っと。ここまでは神としての役目だ。次は俺個人の感情を言うぞ」


 一転していつもの口調に戻ったレイヤの表情を窺うと、整った顔に少しだけ眉に皺をよせて真剣な表情になっている。

 どうやらさきほどの私の推測は杞憂だったようだ。


「フウカ。正直に答えてくれ。俺に少しでも気持ちがあったか?」


 そう言われて思わず頷きそうになる。そもそも恋愛に前向きになろうとしていたのは、初めて告白してくれたレイヤの真摯な気持ちがうれしかったからだ。オリセントとの使命がなければ少しずつではあるが、レイヤの気持ちを受け入れようとしてた。

 でも、ここであえて頷くことが私に許されるのかと躊躇してしまう。

 レイヤは黙っている私に対してたたみ掛けるように質問していく。


「まったく心を動かされなかったのか?俺と恋愛するつもりは微塵にもなかったか?」

「それはちがうよ!」


 皆無であるわけがないと言う気持ちが抑えられずに、思わず否定してしまった。言ってしまってから口を抑える。

 言わないでおこうと思っていたのに・・・。


「フウカ?」


 次の言葉を促がすようにレイヤはこちらを覗きこんでくる。嘘偽りは許さないとその表情は語っている。

 言ってしまったことは撤回できない。私は仕方ないので正直に気持ちを伝えることにした。


「あんな告白されて心が動かないわけがないよ。正直、前向きに考えようとまで思っていたし。でも、今はオリセントが好き。いくら複数恋人持てると言われても今はそんな気になれないわ。ごめんなさい」


 私はきちんと断るべきだと思って必死に言葉を考えてそう言うと、レイヤは分かっているとばかりに頷いた。


「お前がそんなにポンポン恋人を作れる性格ではないことは分かっている。だからオリセントと結ばれる宿命だと聞いてから、色々考えて諦めれるもんなら諦めようとしたんだ」


 それであのそっけない態度だったのかと納得した。


「でもな。フウカには悪いけど無理だわ」


 自分の首に手を回しながらレイヤは話を続ける。その口調はどこか苦笑まじりだ。


「まったく俺が眼中にないってのなら諦めもつくが、過去であってもそうではなかったと聞いた以上諦めれないぜ」


 そう言われて思わず本音を言ってしまった先ほどのことを後悔する。

 だが、彼にしたらある程度確信はあったようだ。たしかに今までの私の態度から感じるところは十分あったと思う。口づけされても抵抗できなかったし。さすがに今されそうになっても全力で拒むが。


「いきなりこっちを向けとは言わない。だが、俺はまだ諦めたわけではないと言うことだけ知っておいてくれ」


 私は何と言ったらいいのか見当もつかずにただ、無言に頷くことにした。それしかできない。

 諦めないと言われても私にはどうすることもできない。

 しばらく二人の間に沈黙が漂ったが、これだけは言うべきだと私は口を開く。


「今は守護神を産むことに専念したいの」

「ああ、分かっている。悪いな。産まれてから言うべきだったかもしれないが、そうなるとそれまでフウカと顔を合わせて、何もなかったかのように普通に接することなんか俺にはできない。かといって、フウカはまだまだ分からないことが多いだろうから講義を中断するわけにはいかないしな」 


 今まで通り授業をしてくれるということだ。本当にありがたく思う。


「ううん。ありがとう。ぎくしゃくした関係のままレイヤと接するのはいやだから、きちんと話しようとしてくれてうれしいよ」


 きちんと向き合ってくれていることに喜びを感じる。ずるいかもしれないけれど、いままでどおり接したい。 


「オリセントがいれば任せるんだけど、あいつは人間界に行くことが頻繁にあるからなかなか時間とれないんだ」


 確かに戦神はほとんどの時間は人間界に跳んでいる。再び、傷だらけの彼の身体を思い出して一緒にいけないことを悔やむ。私の表情が一転して暗くなったのをレイヤは感じてあわててフォローしてくる。


「最近はほかの神が手助けすることが多くなっているから大丈夫だ。今日はジューンが一緒に行っているしな」


 私が何を心配しているのか的確に読み取ったようで、一番ほしい情報を教えてくれる。そう言えば昨日はレイヤが付いて行ってくれたと聞いたっけ。


「昨日はレイヤが付いて行ってくれたんだよね?大丈夫だった?」

「ああ。相変わらず最悪な争いだったけど、なんとか被害を減らすことはできたはずだ」


 そう聞いて安堵する。今日もジューンが手助けしてくれているのならオリセント一人で苦しむことはないだろう。


「あいつの苦しみを根本から癒して救えるのは、フウカとその生まれてくる神しかいないだろう。だからこそこういう使命があるんだと俺は頭では納得しているぞ」


 レイヤはますます苦笑しながらそう話を続けてくれる。レイヤには悪いけれど、もしオリセントを癒すことも使命としてあるのなら私はうれしい。私は自分が司るのが癒しでよかったと改めて思った。

 それからしばらくはレイヤにこの神の国の成り立ちや、お披露目で会うことのできなかった神についてなど、いろいろな話をしてもらった。

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