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女神の憂鬱  作者: 灯星
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58.一つの想いの終焉(上)

 サブタイトル上下にしました。

 それからしばらく女性三人で話をしていた。主に神の出産についてだ。

 お昼前になってもオリセントは姿を見せなかったので、結局ダリヤに送ってもらうことになった。

 あまり力を使わないほうがいいと話を聞いたので素直に甘えることにする。

 ふぅ~。いろいろ話できてよかった。恋愛話には参ったけど、ビュアスとも仲良くなれたし。

 そう思いながら、部屋の長椅子に腰がける。そのとき脳裏の中でよく知っている声が聞こえてきた。


『フウカ。聞こえる?』


「え?エダ?」


 最近あまり会うこともなかったけどその声は水の神のものに間違いなかった。


『そちらに伺ってもいい?少しでいいから』


 そう言われてわずかに躊躇するが、了承の返事をした。するとすぐに空間がゆがみ透明がかった水色の長い波打つ髪を持つ少年が姿を現す。

 だが、少年の表情は見るからに暗い。


「エダ?」


 こちらを見てから落胆した感じなので、どうしたのか聞くこともできずに私は名前だけ呼ぶ。


「フウカ。やっぱりオリセントと結ばれちゃったんだね。おまけに子供まで出来ちゃっているし・・・」


 やはりその件で彼はこの表情をしているのだと分かって、謝る以外何も言えない。


「ご、ごめんなさい」


 そう言うと彼は余計に不機嫌そうな顔をする。こんな彼の表情をみるのは初めてでどうしたらいいか戸惑う。


「なんで謝るのさ。使命もあったって聞いているし、フウカが決めたことなら僕に何も言う権利もないよ。僕はただ、自分勝手に相手が自分でないことにくやしがっているだけだから」


 そこまで言うとエダは視線を下に向けて自らの髪の毛を乱暴に掻いて、髪形をぐちゃぐちゃにする。その様子をただ見ていると、大きなため息をひとつついてからこちらに視線を戻す。

 その表情はさっきとちがって眉を下げて苦笑といった感じになっている。


「ごめんごめん。いきなりつっかかっちゃって。本当は純粋にお祝いを言おうと思ってきたんだ。ただ、フウカの顔をみるとどうしても悔しくなっちゃって、つい本音をぶちかましちゃった」


 こちらが黙っているとエダは話を続ける。


「だってフウカ。僕がけっこう真剣に君と良い関係になりたいとおもっていたのに、気づきもしなかったでしょ?」


 そう言われて思わず頷きそうになる。

 冗談っぽく口説くとか言われた覚えはあるが、それを真剣に受け止めたりはしたことはない。言い訳になるが神の国に慣れることが第一優先だったし、レイヤやゼノンの気持ちもぶつけられてそれをどうするか考えるだけで精一杯だったからだ。

 黙っていることで図星だと悟られる。というよりも最初からエダは確信持って質問していたようだ。


「やっぱり。だから、フウカにとって僕は本当に対象外だったんだなって思うと悔しくてね」


 そうだとも違うとも言えない。エダに湖で慰められた時に心がまったく動かなかったわけではない。あれでだいぶ癒されたのだから。最初に彼が救ってくれたことも大きい。

 でも、それは恋愛感情まで発展してはいないことは確かだ。

 ましてやオリセントとこのような関係になったのだ。いくら複数恋人をもつのが一般的だと言われても、私自身まだそんな気持ちにはなれない。

 だから、違うと否定して彼に期待を持たせるのは許されることではないだろう。私の気持ち的にきつかろうがここは黙っておくべきだ。

 口を強く結んで何も言えないようにしながら、彼の次の言葉を待つことにした。私にできることはそれだけだから。


「遅くなったけど、おめでとう。守護の神だろうと聞いたし、それが君の使命だったとも聞いているから純粋に祝福するよ」


 エダは今までの表情を一転させて笑顔で私に手を差し出し握手を求めてくる。彼の気持ちに答えることもできずにいる私を祝福してくる彼の優しさに心がよけいに痛む。

 おそるおそる手を伸ばすと、エダは一気に私の手を引っ張って強引に握手する。


「そんな表情しないで。僕に悪いと思うならこれから僕好みの女神を産んでくれたらいいから。顔はフウカ似で性格はもっときつい感じが好みなんでよろしく」


 エダは私をからかう感じで明るくそう言う。私が動揺した表情を浮かべて彼を見ているから、わざと軽口をたたいてくれているのだろう。


「女神が産めるかわからないけどがんばるわ。本当にありがとう」


 私からも握手する手に力を込めて彼の手を握る。それに対して彼のほうもすこし力を込めてから手を放し、そのままその手をふりながら姿を消していった。


 本当にごめんなさい。でもありがとう。


 心の中で先ほどまでいた水の神に対しての二つの思いをつぶやく。

 ずるいかもしれないけど、諦めると言う意味の言葉を聞いてかすかな喪失感がわき起こる。しかしそれをはるかに超える安堵感が漂っていた。

 彼が無理してそう言ってくれているのは分かったけれど、それに甘んじるしか私にできることはない。彼の気持ちに応えることは少なくとも当分はできそうにないのだから。

 いつか、彼の気持ちが落ち着いて今まで通り接してくれるようになるのを待つしかないね。

 私はそう思いながら、ベッドに横たわることにした。


 短くなってすみません。今回は一話に二つに視点をおきたくないのでゆるしてね。

 つぎはエダ視点です。

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