54.恋人たちの初めての朝
最初はゼノンの部屋での場面、後半はフウカ視点です。
ころころ変わってすみません。
!!
ゼノンは睡眠中であったが、気の変化を感じて眼がさめた。
人一倍気の変化に敏感である彼は、微妙な気の変化であっても起こされることがたびたびあった。
「この気は・・・」
1ヶ月前に感じたことのある気の変化だったので、それが何を意味しているのかすぐに分かる。
新しい神の誕生。いや、まだ生まれてないので正確には誕生の予兆と言うところか。つまりは自然に生まれる形ではなく女神の1人が妊娠した形だ。
「・・・フウカか」
気の種類を探ったことで正確にその女神がだれかわかって、すこし複雑そうな表情になる。
最高神と並ぶ地位にある闇神としてはあたらしい神、それも間違いなく守護神の誕生は一番望まれていただけに喜ばしいことだと思える。
しかし、ゼノン個人としてはやはり好意を寄せている彼女が、他の神との子を授かると言うことに対して嫉妬心を覚えずにはいられない。たとえ、それが必須であると知っていたとしてもだ。
少し考え込むように頭に手を当てていると、空間がゆがみ自分の片割れが姿を現す。
同じ顔をした金色の髪の青年が、眉間にしわを寄せて苦悩の表情でこちらをみている。
「ゼノン・・・」
その表情をみて、彼も癒しの女神の妊娠を気で悟って自分と同じような心情になっているのがわかる。
「ええ。フウカとオリセントが結ばれて無事、妊娠したようですね。定めどおり守護の神の誕生でしょう」
ゼノンはレイヤが言いにくそうにしていることをはっきりと告げた。
「そ、そっか。俺はお前ほど鋭くないから確かめにきたんだ」
レイヤはそう言うと大きくひとつ大きなため息を吐く。
「ああ。これが必要なことは分かるし、神の誕生、それも守護の神の誕生は喜ばしいことだ。自分がフウカの相手になれないのはものすごく悔しいがな」
レイヤは自分の金色の髪を右手で乱暴にぐちゃぐちゃにしながらつぶやくようにそう言う。それは目の前にいるゼノンに言うというより自分に言い聞かせている感じだ。
「ええ。正直、思っていたよりこの状態はきついですね」
ゼノンもレイヤに本心を言う。おそらく同じぐらいには彼女に心を奪われていただけに、彼の悔しさはよくわかるのだ。
だから、自分自身に言い聞かせていることを彼にもつげることにした。
「ですが無事守護神が誕生すれば、後は遠慮なく口説くことができると前向きに考えましょう」
いつまでも生まれなければ、やはり使命を受け持っているだけにフウカはこちらを見向きしようとはしないだろう。彼女の性格から言って逆に避けようとするはずだ。その分、オリセントとの繋がりがどんどん深くなってしまうのをただ見守っておくしかない。
だがこうして生まれてしまえば使命から解放されるので、オリセントに遠慮する必要がなくなる。まあ最初から複数の恋人を持つことを許されている神の国の常識ではなく、一夫一婦制の考えがあるようなので手ごわいだろうが。
「そうだな・・・。とりあえず、守護神が生まれることを待つしかないな」
レイヤはそう言いながら、手を振って姿を消した。
部屋に残されたゼノンはすぐに寝る気にもなれずに、気を紛らすために寝室の隣にある執務室の机に向かい、昨日中断していた仕事の書類を手に取った。
私は頬に柔らかい感触を感じて、ゆっくりと瞼をあげた。
目の前にすこし強面の戦神が機嫌よさそうにこちらを見ていた。その色違いの赤と青の瞳はやさしい輝きをしている。
「オリセント・・・」
さっき頬に感じたのは彼の唇だと悟って、思わず感触の残る頬に手を持っていく。ずっと寝顔を見られていたのかと思うと恥ずかしくなったのだ。
私はとりあえずベッドから上体を起こしたがその瞬間、体中から気だるさを感じて思わず動きを停止した。
「おはよう、フウカ。身体は大丈夫か?」
オリセントも同じように上体を起こして顔を近づけてきた。
「す、すこし、気だるいけど大丈夫・・・」
私は今度は慎重にベッドから立ち上がった。
「あまり無理しないでいい。今日はゆっくり休んでもいいぞ」
そう言われて少し考えてから頭を左右に振る。レイヤたちに報告しなくてはいけないと思うからだ。
だが、そう言うとオリセントはすこし考えるようなしぐさをしながら首を左右に振った。
「いや、俺が報告しておく。レイヤやゼノンも気持ちが落ち着いてからお前の前に姿を現すだろう。フウカから姿を見せるよりそれを待っているほうがいい」
そう言われて頷くしかなかった。レイヤは告白してくれていた。ゼノンも口説くと言ってくれていた。そんな二人に自分からオリセントと恋人になって妊娠しましたとは確かに言いにくいし、彼らとしても私からは言われたくないだろう。
たとえ、神として必要なことであると分かっていてもだ。
オリセントと守護神を産むのが使命であると分かった時、レイヤが私に対してそっけない態度になっていたのを思い出して、彼らのほうから近づいてきてくれるのを待つのがたしかにいいかもと思いなおした。
せめて守護神を無事産むまでは、私から会いにいくのはやめておこう。
「うん。おねがいします」
じゃあオリセントに報告はお願いすることにして、私はやはり休んでいたほうがいいのかなと考えていたが、ふと行きたいところを思いついた。
「あのね。私、妊娠したと言われても神の妊娠の間のことなにもわからないの。だから、ダリヤ姉さんにいろいろ教えてもらいたいな」
この前、ウリュウの誕生に立ち会って私の常識とは大きくかけ離れていると思ったのだ。だって1週間でお腹も大きくなることもなく、突如気が分離して人の形になったのだ。妊娠中の過ごし方などまったく未知である。
「ああ。それがいいな。俺も一緒に行って話を聞きたいが生憎仕事が入ってしまっているから、せめてダリヤの部屋まで送ろう」
「うん。お願い」
私は正直分からない状態で自分で瞬間移動する勇気はないので、その好意に甘えることにした。
「フウカ。仕事がないときはできるだけ一緒にいてもいいか?できれば俺も誕生に立ち会いたいのだが・・」
待ちに待った守護の神の誕生だから立ち会いたいという気持ちは十分わかるので、肯定の意味で頷く。
そうすると、本当にうれしそうに瞳を細めながら軽く私に口づけをしてきた。
その自然な動きに今更ながら恋人になったんだなって自覚した。
「とりあえず朝の身支度もあるだろうし一端部屋に戻っておくから、終わったら声をかけてくれ」
オリセントはそう手を振りながら言い、部屋の扉から退出していった。
甘い話書くの苦手ですが、それなりに甘くなっていますか?