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女神の憂鬱  作者: 灯星
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49.諦めない宣言

「そうよね。守護神のことレイヤも聞いてたし・・・」


 だからレイヤが私にそっけない態度を取るのは仕方ないと思い直した。


「あんな姿見せちゃったし、もう気持ち冷めちゃったのかもね」


 その諦めを含んだ私のつぶやきに返事が返ってくる。


「それぐらいで冷めるなら私もレイヤも楽だったのでしょうけどね」


 そう言いながら空間のゆがみが発生し次は黒髪の青年が現れた。先ほどの金色の青年と顔の造りは一緒である。


「ゼノン・・・」


 闇神が少し顔にかかった肩ほどの長髪を片手で掬い上げながらこちらを見ている。


「ああ、よかった。身体はまだ万全ではないようですが、記憶は綺麗に戻ったようですね?」


 しばらく黙って私を観察した後、安心したようにそう言う。

 私は黙って頷く。


「レイヤは気持ちに決着がつかずに持て余しているだけですよ。私の片割れながら不甲斐ないですね~」


 そう同意を求められても私は返事することもできず、ただ黙っているしかなかった。レイヤの気持ちがいまひとつ分かっていないからだ。

 ゼノンは黙っている私の頭に軽く手を置き、少し眼を細めながら笑みを浮かべる。

 久しぶりにみる真っ黒オーラ微笑みにビクッと身構える。


「ああ。言っておきます。申し訳ないですが、私はこれしきのことでフウカを諦めたりしませんので」


 こ、これしきのことって、もしかしてオリセントにせまった姿のこと?それとも守護神のこと?


 目の前の魅惑的だけどどこかおそろしい笑顔を浮かべているお方は、その考えを読んだかのように話をつづける。 


「今はオリセントと向き合いたい。貴女ならそう言うでしょう。それを妨害するつもりはありません。さすがに私も、守護神を産むという運命を否定するのはできませんからね」


 やはりゼノンもそれが運命だと思ってくれているんだ。先ほどのレイヤの態度もそうだと思ってるということだろうか?


「でもね。私たちが住んでいるここは、一人しか愛してはいけないわけではないのです。現にビュアスは5人恋人いますからね」


 そう言えば、ここは多夫多婦制だった。そう言っているのだろう。ただ、私としてはまだ受け入れがたい話だけど。

 それでもここまで言ってくれるのは嬉しい。


「ゼノン、ありがとう。でもまだオリセントとも向き合っていない状態で、他もっていうのはさすがに無理だと思うの。たとえばゼノンと恋人になってしまったら、気持ち的にオリセントと向き合えなくなるかもしれないし・・・」 


 ゼノンにしてもレイヤにしてもこれ以上に惹かれて、恋人になりたいとまで私の気持ちが高ぶるとそれからオリセントと守護神を作るのは出来なくなるかもしれないし、出来ても時間を要することになるだろう。

 だからこれ以上私の気持ちをかき乱さないでほしいと思う。


「そうなってくれたら私としてはとてもうれしいことですが、フウカは定めを感じてしまった以上そうならないでしょう。だから私は諦めたわけではないとだけフウカには伝えたいのですよ」


 本当に私の気持ちを読んでいる。それでも私を見てくれていると言うのか。


「レイヤも同じ気持ちです。だから私たちに罪悪感を覚えずにまずはオリセントと向かい合ってください。私はその後から口説くことにしますから」


 そう言うときにはもうすでに黒いオーラは消え去っていた。優しい笑顔でこちらを見てくれている。その表情を見てなぜ彼があえて諦めないと宣言したのか悟った。

 私の心の迷いを断ち切るためだ。

 普通ならその気がなくなったと言う場面かもしれないけど、それなりに私の気持ちがレイヤやゼノンにいっているのを、ゼノンは分かっているのだ。

 今、ゼノンに気持ちがなくなったと言われたら逆に罪悪感も持って気にしてしまう。気になってオリセントに向き合えないと思う。まだオリセントだけ見るというほど気持ちが高まっていないのだ。

 それをここまで諦めないときっぱり宣言した上で、オリセントと向き合うことを前提に話されるとふしぎなもので多夫多婦制も本当に自然なことなのかなって思えてくる。

 レイヤとゼノンに対する気持ちはすこし棚上げにして、まずはオリセントと向き合えばいいと言ってくれているのだ。

 その優しさに対してありがとうと口にするのはおかしいと思って、心の中だけで感謝する。


「そうね。まずは、オリセントと向き合うわ」


 そのように私が言うのに対してゼノンは軽く私の頭をなでると、すこしだけ気を送ってくれる。前にももらった安らぎの気だ。


「ですが今日はもうすこし養生して下さい。身体がもうすこし疲労を感じているようですので」


 私がありがとうと言いながら軽く頷くと、ゼノンは手を振りながら姿を消していった。

 しかし、彼の洞察力には本当に驚いてしまう。彼が言うように、しばらく起きていただけでやはりどこか気だるさを感じていたからだ。

 私はもう一度ベットに戻り、もらった安らぎの気を感じながら眼を閉じることにした。

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