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女神の憂鬱  作者: 灯星
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5.恋愛、子供、大歓迎

「レイヤにゼノン。もうあっちにいかなくていいの?奴さんたち探しまくってない?」


 おおまかな説明をレイヤがし終わると、いままで黙っていたエダが長身の二人に向かって話しかけている。

 二人は顔を見合わせて仕方ないと思ってると、私でもわかるようなしぐさでため息をつく。双子だから息ぴったりだ。


「じゃあ、名残惜しいですが、我々は業務に戻ってフウカは青くんに任せるとしますか」


 ゼノンがレイヤに向かってそう言う。あ、またゼノン青くんと言った。それも本人の目の前で。この人いじめっ子だ。


「青くん?もしかしてエダのことか?」

「え?なんで僕が青くんなの?」


 ふたりそろって、ゼノンに質問する。


「ご・・ごめんなさい。私が名前知らなくてつい青くんって言ったから・・・。きれいな青色の髪と眼をしてるからで・・・。悪気あったわけではないの・・・」


 なんとか弁解しようとするが、恥ずかしくなって下を見ながらぼそぼそとしゃべってしまう。

 だって本人に言うのはさすがに恥ずかしい。


「あ、フウカが付けてくれたんだ。べつにいいよ。それより僕の色彩を褒めてくれてありがとう」


 零れ落ちそうなほどの笑顔を向けられて、もっと赤面してしまう。ジャニーズの満面の笑みを正面から受け止められません、三十路には。


「じゃあ、エダ。彼女にいろいろな事おしえといて。時間作れればまた顔だすから。特に男女比のことはきちんと注意しとくように」


 それだけ言うと、レイヤは一瞬で姿をけす。続いて、ゼノンもこっちに笑みだけを投げかけてすぐに姿を消した。

 だからその笑みはやばいですって。ここの住人はほんと美形ばっかでお姉さんは困ります。あ、神だから仕方ないか。

 と、ここで思い出す。


 そういえば、私の姿!!


 部屋の中を見渡すと、ちょうどエダの後ろに姿鏡がある。


「ちょっとすみません」


 と断りを入れながら、その鏡に近づいた。

・・・・・・・・・・

 水面に写ったとおりの色彩。右眼は黄色で、左眼は薄い紫色。それに髪の毛の色は白髪・・・・いや、よく見ると金色が混じっているので白金色ってやつか。なんでこんなでたらめな色彩に・・・・。

 顔も10代の美少女。そのくせ体つきは出るとこは出てウエストはきゅっとしまっている。日本人には峰不二子並みと言うたとえがわかりやすいだろう。

 太くはなかったけど、こんなすばらしいボディーでなかった。顔も元が一緒と言うだけで数倍以上整っている。ここまでくるといっそうのこと別の顔のほうがよかった。なまじ素が自分の顔だけに誰かの身体をのっとっているだけと現実逃避ができないのだ。


「・・・・あぁ・・・。なに。この身体に顔・・・・」

「すっごい綺麗だよね。たぶん、愛の女神のビュアスと同じぐらいだよ。なに?元々その容姿でなかったの?」


 呆然としながら自分の姿を見ていると鏡ごしにエダが横からひょいっと顔を出す。よりいっそう鏡上の色彩が豊かになる。


「色はゼノンみたいな色だったし、もっと年齢上だったし、こんなくねくねした体つきでなかったんだけど・・・」


 若返ったのはうれしいが、これだとエダよりよっぽど若そうに見える。15歳ぐらいってとこか。そのくせ身体が峰不二子だからへんにエロい。


「そうなんだ。でも生まれたばっかりだからそんなものでしょ」

「私は30歳よ。もうおばさんなんだから・・・」


 自分を卑下するわけではないけど、やはり精神的には三十路だ。しかし、次の言葉で愕然とする。


「え?30歳って言ってもずいぶん若いよ。ぼくなんて180歳なんだからね」


 ・・・・・・・。

 目の前の少年が180歳・・・。ありえないでしょ。

 自分の6倍は生きているの?


「一年は何日?100日ぐらい?」


 それならありえる。ってかそうでありますように。


「500日だけど?フウカのところは違うの?」


 500日。つまり500×180÷365・・・ざっと240歳!!

 えー。


「レイヤたちなんか、250歳は超えてるけどね。それにここでは容姿なんか関係ないよ。生まれたときからおじいさんの姿の神もいるし。年なんかほとんどとらないんだから」


 生まれたときからおじいさんってかわいそう。それを思うと若返ったのは感謝しないとだめってことね。ゼノンたちはもっと年上なんだ。そりゃあ最古の神なんだから・・・。

 あ、なるほど。それにしては若すぎる。さっきレイヤがこの世界はできたてだと言ったのはそういうことなんだ。


「と言ってもまだまだ神が少なすぎるんだけどね。なんせ30人ほどしかまだいないから・・・」


 30人。たしかに少ないかも。日本の八百万の神とは言わないけど、光や闇、水とくれば風、土、火とか他にもいろいろな神が必要なはずだ。それを考えると本当にまだまだ少ないんだ。


「さらに、女神ってなると君を含めても6人しかいないからね」


 え?たったの6人?5分の1しかいないのか。


「だから余計に君が降臨してきて周りが色めきだっているんだよ」


 なるほど。だからさっき男性たちに囲まれていたんだ。それにレイヤが去るときに男女比とか言ってたのはそういう意味か。

 女性の少ないクラスに入ってしまった感じなんだね。


「さらに、君は気が不安定で本来神が生まれながらに備わっている、能力の抑え方とか扱い方とかができないから、その大きな神気が垂れ流しなんだよね。最初僕がみたときもそれにびっくりしたもん」

 エダは昨日の出会いを思い出してかクスッと笑いながらそう言う。


「え?大きいの?」


 私自身はまったくそんなものを感じることができない。そりゃあそうだ。30年間も人間として平凡に過ごしてきたのだ。気を感じるなんてできるわけがない。


「あ、やっぱり自覚ないんだ。そっから練習しないといけないね。神の中でもけっこうでかいほうだよ。女神の中では間違いなく1番だね」


 へえー。そうなんだ。もしかしてだから寝ているだけで傷が全快したのかな?なんか癒しとか言ってたし。


「レイヤを弁解するわけではないけど、おそらく記憶をデリートすることで、そのあたりが自然に身につくからさっき消そうとしたんだよ」


 なるほど。でも、できればこのままでなんとかしたい。わけがわからないまま連れて来られて女神と言われても自覚もさっぱりないけど、記憶を消されるということは橘風香の存在自体消されるような感じがする。

 日本に戻れるとは思えないけど、それでも30年間の人生を嫌いだったわけではない。父も母もそして弟も大好きだった。恋人はいなかったからまだ未練は少ないかもしれないけど、やはり帰れるものなら帰りたい。


「いろいろ説明ありがとう。拾ってもらったばかりに迷惑かけちゃってごめんね」


 さっきまで書類を広げていたところを見ると、彼は彼なりに仕事かなにかあったのだろう。しかし、うれしいことにエダはすぐに否定してくれた。


「とんでもない。逆に役得だったと思っているよ」


 リップサービス満点だなあ。やはりこの子はいい子だ。実年齢を聞いてもどうしても年下の少年としか思えない。話し方もゼノンやレイヤに比べて幼いからだろうか。

 日本人得意の愛想笑いで返すと、エダはわかってないなあっと軽く肩をすくめながら言う。


「言っとくけど、これからフウカはいろんな男性神からアプローチされると思うよ。今、神が少ないからどんどん増やせって風潮だし、だれでも子供ほしいからね。ただでさえ少ない女神の中で一番力が強いし、容姿もビュアス並みだしね」


・・・・・

 え?   


「そのビュアスも5人の恋人と3人の子供神がいるんだからね」


 恋人が5人?


「ひ、1人でないの?一夫一婦制でないの?それに結婚してないの?」


 どんな世界だ。ここは。確かギリシャ神話のゼウスも浮気性でどんどん子供作ってたけど、嫁さんいたよね。

 そんな世界なの??


「基本的にあまりにも女神の数が少ないので夫婦になるケースがすくないね。今はジューンとダリヤしかいないから」


 そういえば私入れて6人しか女神いないって言ってたっけ?


「ジューンは火の神で、ダリヤは大地の女神ね。ジューンが嫉妬深いから、ダリヤにはほとんど誰も近寄れないんだよ」


 なるほど。

 できるなら私も一対一がうれしいかも。と、いってもまだそんなことまで考える余裕ないけどね。


「なに?フウカは1人だけにしぼりたいの?それなら余計に僕もがんばらないとね」


 エダはいたずらっぽく笑いなら笑顔をこっちにむける。冗談だろうけどそんなこと言われてもお姉さん、対応に困ります。

 すこし困惑した表情を浮かべてると彼は余計に面白そうにこっちを見る。 


「まあ、まだこの世界のことよく分かってないだろうしこれ以上は突っ込まないよ。でもよく分かってきたら僕も遠慮しないよ。とりあえず、ここでは恋愛歓迎、子供はもっと大歓迎だからそれは頭に入れといてね」


 つまり、どんどん産んで増やせ方針なわけか。

 できたての神の世界ってこんな状態なんだ・・・。


「そういえばこの世界に名前はあるの?神の国ってぐらいだから人の世界とかもあるの?」

「んー。あえて名称はつけてないけど、人間たちはレーヤゼンと呼んでいるよ。レイヤとゼノンから作られたって言うことで二人の名前をつなげてるみたいね。人間は下界に住んでいるよ。今は生誕5千年ぐらいかな?」


 5千年?あれ?なんで?


「あ、人間の流れとここの流れが大幅に違うからね」


 なるほどなるほど。わかりやすい説明ありがとう、エダ先生。


「こんな感じでしばらくはこういう常識と力の使い方の練習を僕ら三人でみるからね」


 エダは自分の髪の毛をなでながらそう言う。会ったときは気づかなかったけど、一くくりにした髪はかるくウエーブがかかっている。ほんとうに綺麗な色だなあ。


「ありがとう!これからもよろしくおねがいね」


 ほんとうに感謝しないといけないね。だって彼はたまたま自分を拾っただけなのにここまで面倒をみてくれる。

 そういう気持ちで自分ができる最大の笑顔でお礼を言うと、彼も優しそうに眼を細めて笑顔を返してくれた。

 ちょっとまだわからないことだらけだけど、がんばるしかないみたいだし前向きに勉強しよう。それしか自分にできることはないのだから・・・・。

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