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女神の憂鬱  作者: 灯星
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46.さすがにベッドを奪うわけにはいきません。

 あれ?


 眼を開けてここがいつもの自分の部屋とは違うことに気が付いた。


 もしかしてまだ夢の中?


 とりあえず、ベッドから上体を起こす。


 あ、ここは・・・。


 見渡してここがどこだかすぐに分かる。部屋の端の長いすでこの部屋の持ち主が寝ているからだ。

 大柄な身体を丸めてなんとか長いすに横たわっていた。

 思わずその姿が可愛らしくてくすっと笑ってしまう。

 私がベッドを占領したせいなんだから笑うのは恩知らずね。

 身体にかけていただろう掛布がだいぶずれ落ちてしまっているのを直そうとベッドから立ち上がった瞬間、ひどいめまいにそのままベッドに顔を埋める。


 あら?身体が・・・。


「フウカ。大丈夫か?」


 先ほどまで寝ていたオリセントが慌てたように私のそばに駆け寄ってきた。

 私が派手に動いたせいで眼をさましてしまったようだ。


「ご、ごめんなさい。まさか身体が動かないとは思わず・・・。せっかく寝てたのに・・・」


 謝りながら、オリセントが差し出してくれた手を取る。

 まだ頭がくらくらしている。


「とにかくまだ寝ておくんだな。神の体でそこまで変調なのは、めったにないほど疲労が溜まっているということだからな」


 そう言いながら私の身体をベッドに促す。

 前に神の身体は人間の身体に比べて頑丈で、めったに体調を崩すことはないと言っていたっけ?

 それにこの神殿にいるだけで力が漲ってくるとも聞いた。

 それでも回復しないほどひどかったというわけだ。


「あ、それなら私部屋に戻るわ。だってオリセントのベッド占領しちゃっているの申し訳・・」

「いいからそのまま休め。俺はあの椅子で充分だ」


 オリセントは彼には珍しく最後までこちらの言うことを聞かずに、ばさっと掛布を私の上にかける。


「だって、すごく狭そうだし・・・」


 さきほどの姿を見ただけにどうしても遠慮してしまう。熊さんぽくて可愛らしかったけど、あれは窮屈だし身体が痛くなるよね。


「別に構わない。移動は何も無いときは別に負担になるほどでもないが、そんな調子悪いときは止めといた方がいいんだ」


 そうなんだ。じゃあ確かに止めといた方がいいのかな?あ、でもここから私の部屋ってそんなに距離なかったよね?ならなんとか帰れるかも。


「じゃあ歩いて帰るわ。近いから別になんとか帰れると思うし・・・」


 オリセントはそう言ってふぅと大きくため息をついたかと思うと、私の身体の上に身を乗り出してきた。


 え?


 いきなりのことで声もでない。そうしているうちに自分の身体に私の身体を引き寄せて持ち上げる。

 いわゆるお姫さまだっこと言うやつだ。

 

 は、はずかしい!


 なぜか掛布ごと抱きかかえられたのでまだマシだけど、このかっこはちょっと・・。


「な、なんで??重いよ」

「どこが。これぐらいなんてこともないぞ。さすがにそんな状態で歩かせるわけにもいかないからな。連れて行ってやるよ」


 たしかに大柄な彼はまったくゆるぎない歩みで私を抱きかかえながら歩いている。


「フウカは俺が長いすに寝ることに遠慮して譲らないみたいだし、そうなったらフウカを部屋に運ぶのが一番手っ取り早いからな」


 廊下を歩きながら耳元でそう言われる。さすがに深夜なので廊下を歩く者はいない。だから余計に抱きかかえられて彼の体温をじかに感じて恥ずかしくおもってしまう。


「あ、ありがとう。たしかにふらついているので運んでくれたのは助かるわ」


 恥ずかしいのをごまかしたくてすこし大きな声でお礼を言うと、目の前のすこし強面の顔がわずかに優しい表情になった。


「やはりフウカはこうでないとな。あの無表情のフウカには参ったぞ」


 そう言われてオリセントに無表情で迫ろうとしていた姿を思い出して、彼の腕の中で思わず動いてしまう。


「あ・・・あれは」


 恥ずかしさもあるけど、自分でもあれは怖かった。手で顔を覆っているとオリセントが抱きかかえながらも私を見下ろしていた。


「これでわかっただろう?」


 そう言われてなんのことだろうと彼の顔を見上げる。見下ろしている彼の顔は強面なのに優しさに溢れていた。


「その人間としての記憶が癒しの女神として必須なんだよ。俺はいくら守護の神が必要であってもあのフウカと子供が産めるとは思えないからな」


 もしかしてオリセントはその気になってくれているのだろうか?でも神の子供作りにはお互いの情があってできるものであると言う話を聞いている。義務感ではできないだろう。それにさすがにそれだけのために抱かれるのに抵抗はある。


「それなのに私でいいの?義務感だけで子供はできないって話だよね?」


 思わず聞いてしまう。オリセントはそんな私の顔をすこし呆れたような表情で見てくる。


「さっきの話聞いていたか?今のフウカがその為には必須だと言っているだろ?少なくとも俺はフウカに対してそういう感情があるぞ?」


 そう言われて絶句する。常に先生として接してくれていて、そんな素振りも見せなかったからまったく分からなかった。


「フウカが思っている以上に俺は、俺とフウカが結ばれるのが必要だと言われて喜んでいるぞ?レイヤやゼノンにはわるいがな」


 純粋なオリセントの気持ちをぶつけられて、嬉しいと感じる気持ちと戸惑いが私の中で入り交ざっていた。

 やはり最後につけられた二人の名前が戸惑いを大きくしている。

 私は何も答えられずしばらく二人とも無言のまま部屋まで運んでもらうことになった。

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