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女神の憂鬱  作者: 灯星
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43.女神の誘惑

オリセント視点で書いています。

 オリセントは仕事を終えて部屋に付いた途端、漂う気のいびつさに眉をひそめる。


 このおびただしい闇の気はなんだ?


 それほど気を感じ取るのは得意としていない自分が分かるほど、あまりにもその気は異質だった。


 ゼノンが怒っているのか?


 確認しようと気に集中したとたんに、部屋の空間が歪み新たな気があふれ出る。


「!!」


 良く知っているはずの優しい気であるのに、それもどこかいつもと違っている。


「フ、フウカ?」


 今までははみ出すばかりのすこし不安定なクリーム色の気であったのに関わらず、それに比べるとずいぶん整っているが小さく縮小され、黄色がかった気に変貌を遂げている。


 なにがあったんだ?


「あなたは戦神ですね?」


 現れた少女はよく知っている姿をしていながらも、オリセントにはまったくの別人であると、すぐに悟る。

 眼の輝きが違うのだ。すぐに感情によって揺れる瞳がいまはまったく微動だにしない。


「わたくしは癒しの女神でございます。戦乱の人間界に癒しと守護という希望を与えるために、生まれてまいりました」


 オリセントはまるで会った事もないと言うように、自己紹介をはじめる彼女を戸惑いながら見る。


「フウカ。何を言っている?もしかして記憶を封じたのか?」


 オリセントは信じたくなくて考えるよりさきに彼女に接近する。不躾だとは思うが彼女の顔を優しく両手で包みこみ、もっと表情が見えるように軽く持ち上げる。その間彼女は抵抗するわけでもなくされるがままになっていた。


「おかしなことをおっしゃるのね。わたくしはさきほど生まれてきたばかりですよ。それにまだ名前は付けられておりませんわ」


 オリセントの大きな手で頬を包まれながら微笑を浮かべる。だが、先日虹を見ながらうれしそうに笑みを見せてくれてた彼女の微笑みとは、どこかかけ離れていた。同じ顔だというのにその微笑はまったく感情が見えてこない。


「ではなぜレイヤやゼノンのところではなくここに来たのだ?」


 生まれたてはとりあえず名前をもらうために彼らに面会を請うのが普通だろう。いくら系統が近くてもさきに戦神の自分に会うのはおかしい。

 オリセントがそう思って聞くと彼女自身とまどいを見せながら返答する。


「一刻も早く守護の神を創らなくてはと、なぜか気が急くのです」


 守護の神?どういうことだ?


「わたくしには感じるのです。戦神である貴方とわたくしが結ばれることで守護の神が誕生すると」


 その言葉に戦神は一瞬頭が真っ白になる。

 たまに自分も直感のようなものを感じることがあるので、彼女が偽りを言っていることはないだろう。

 それでもその内容はすぐに信じられないものだった。


「どうか、人間界の平和のためにも一刻も早くわたくしを抱いて下さい」


 今まで惹かれていた少女にそう告げられて、男としての欲望が溢れそうになる。その上、あれほど欲していた守護の神を自分で創ることができると知り気持ちが揺れる。

 彼女が言うように本能をむき出しにして抱いてしまいたい。

 しかし、それは本当に彼女の本意なのか?

 少なくとも人間の記憶を持ったフウカであればこんな感じで自分に身を捧げようとしないだろう。


「フウカ。それが本当ならたしかに必要かもしれない。だが、神の出産はそんな単純なものではないだろう。心と心が結ばれないといくら肉体的に結ばれてもできるものではないからな」


 戦神は頬を包んでいた手を彼女の顔立ちをなぞりながら下ろしていき、フウカの肩を掴むようにする。


「わかっております。でもわたくしには時間がないよう感じるのです」


 そう言うと逆にゆっくりと戦神の頬に両手を差し出しながら彼女自身の唇を近づけてくる。それでいてまったく顔は無表情だ。

 触れる程度の口付け。

 戦神はされるがままにする。だが、決して自分から彼女を抱き寄せて、深く口付けをしようとはしなかった。


「なぜ求めてくださらないのです?どなたか気持ちを通わせた方がいるのでしょうか?」


 動かないオリセントに、彼女は一度口付けを離して焦れたように聞いてくる。


「悪いが好いた者はいる。だからすぐに気持ちを切り替えることは悪いが無理なんだ」


 オリセントはそれだけ言うとゆっくりと彼女の身体から離れる。

 それに対して気を悪くするわけでもなく、こちらを顔色一つ変えずに見ていた。


「わかりました。ただ守護が必要であることは戦神であるあなたが一番よくご存知だと思いますので、早くわたくしに向かい合うようにしてくださいね」


 彼女はそう言うと媚びるように再び大きな身体の戦神に近づき、触れようと手を伸ばす。

 そのとき、大きく空間が歪む。

 まただれかが転移してきたのだ。

 すぐに2人の同じ顔をした金と黒の青年が姿を現す。

 レイヤとゼノンだ。


「フウカ!」


 レイヤが現れたと同時に癒しの女神に近づく。だが、彼女の顔を見て怪訝そうな表情になる。


「初めてお目にかかります。わたくしは癒しを司っております。先ほど戦神も呼んでおられましたが、わたくしはフウカと名付けてくださったのですか?」


 そう言われて絶句している。やはり記憶がないままなのか。


「素敵な名前ありがとうございます。わたくしは戦乱の人間界に癒しと守護という希望を与えるために生まれてまいりました」


 さきほど聞いた言葉をもう一度レイヤとゼノンに告げている。


「守護とはどう言うことですか?」


 ゼノンがそう聞くと先ほど見た感情がまったく見えない微笑をうかべ、こちらを見ながら答える。


「わたくしと戦神で守護神を創るのが使命の一つだと言うことですわ」 


 そう宣言されてさきほどの自分同様、光神と闇神の表情が一瞬で強張った。

 動かない二人を見ることもなく、再びオリセントのほうに手を伸ばしてくる。その動きはひどく官能的で先ほど以上に身体を密着させて顎を上げながらキスをせがんでくる。

 さすがにそれはまずいだろう。

 オリセントは彼女の身体を自分から離そうと腕を上げた時、その部屋の空間が大きく揺れる。少なくとも自分自身は揺れを感じた。


『やめて~』


 若い女性の声。そちらを振り返れば濃厚なクリーム色の気がふわふわと浮いている。


「「フウカ?!」」


 レイヤとゼノンが同時でその正体を見破り呼ぶ。


『元は私の身体なんだから、そんな真似はさせないんだから!』


 部屋中にその声は響いたかと思うと、クリーム色の気が目の前の彼女の身体に突進していく。気はぶつかることなく少女の身体を取り囲み、やがて少女の身体が自分のほうに倒れてくる。

 近くにいたので、気を失った彼女をなんなく受け止めることができた。


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