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女神の憂鬱  作者: 灯星
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32.神にプライバシーはありません

 

 あの後エダに部屋まで送ってもらった。休憩としてベッドサイドのいすに腰掛ける。


「今日は楽しかったな」


 滝に行く前と行った後の自分の気持ちの変化を感じてそうつぶやいた。

 もちろん滝もよかったけど、やはりエダからもらった言葉のおかげだ。

 本当にいい人たちに支えられているなあと、今の状況に感謝を覚える。

 レイヤは口は悪いけど本当は性格よくて、本当に私のことを見てくれていると言ってくれた。

 ゼノンもいつも性格真っ黒なのに、あの自分でも壊れてしまいそうなときに一番ほしい言葉をくれた。

 オリセントは何度も私が癒しでよかったと言ってくれている。

 エダもさきほど癒しの女神として認めてくれた。

 4人とも自分が記憶があるばかりに、業務以外に私にいろいろと時間を割いてくれているのにそんなことを言ってくれている。

 この記憶が癒しの女神として必要なのだと私自身が、勝手にそれを免罪符にしているのではないかと常に思ってしまっていた。


「ありがとう。ほんとうにありがとう。この気持ちはいつかみんなに少しずつでも返していこう」


 そのように決心する。


「よし。とりあえずは元気になったってゼノンに見せないとね。昨日のお礼も言いたいし」


 とりあえず次の行動を決める。かと言って礼を言うのに呼ぶのもどうかと思うし・・・。

 でもまた勝手に跳んだらだめだろうし・・・。セレーナに手助けしてもらおう!

 そう思って彼女を心の中で呼ぶとすぐに跳んできた。本当優秀だなあ。


「まぁ。ゼノン様のところですか?ふふ。喜びますわ。そうですね。ぜひ手助けさせてください」


 お願いすると本当にうれしそうに即答で了承してくれた。


「ありがとう。もう出来ると思うんだけどやっぱり怖くて。だから私が違うとこに跳んだ場合だけ助けに来てくれない?」


 うん。この前もすこしずれたけどダリヤのところまで飛べたし、おそらくできると思う。


「分かりました。気にかけておけばいいのですね。あ、例の植物の件ですが、2日後には届くそうですよ」


 お米がもう届くんだ。それはうれしいな。精白米ならいいけど玄米だったらどうしようかな?ここに精米機なんかないだろうし・・・。まあなんとかなるかな?

 手配してくれたセレーナにお礼しなくちゃ。


「ありがとう!無理言ってごめんね。おいしく出来たらおすそ分けするからね~」


 そう言うと微笑んでくれる。美人さんの笑顔ってステキだよね。

 本来の用事を思い出してじゃあ行くねとだけ、声かけながらゼノンの姿を思い浮かべる。この前目の前に跳んじゃったからすこし距離を置く感じで・・・・。

 景色が一転していきなり身体に重力を感じる。


 ま!またか!!


 でもこの前とちがってすぐに柔らかいものに尻餅を打つ形になる。

 あ、ベッドだ。助かった!

 そう思っていると上のほうからくすくすと笑い声が聞えてくる。その声が誰なのかすぐに分かった。


「そんなに笑うことないじゃない。ゼノン」


 振り返ってみるとやはり黒を纏った長身で均整のとれた青年が、肩を震わせながら笑いをこぼしていた。


「いやぁ~。フウカはよっぽど私のベットがお気に入りなのかと思うとうれしくなりまして・・・」


 そう言えば2回目だった。

 慌てて上体を起してベッドから立ち退く。前みたいに油断したらダメだ。


「ごめんなさい。やっぱり自力で移動の練習したくて。で、でもセレーナにサポート頼んだので勝手に跳んでないからね!」


 ここは強調する。散々脅されているので予防策を張ってると言わないと、どんな目に合わされるか・・・。


「なるほど。練習でしたか。まぁ私のところに来てくれたのでそれは不問としましょう」


 あ、ここに来たのも練習だと思われちゃった。それは否定しないと。


「ここに来たのは、お礼を言いたかったからだよ。昨日の晩に来てくれて気を与えてくれて本当にありがとう。おかげでゆっくり寝れたし、休みもらえたから気持ちを切り替えることができたよ」


 そうお礼を言っているのにどこかゼノンはわずかに不機嫌そうに、私をなにか深層を探るように顔をかなり近づけて凝視してくる。その嫌味なほど整った顔近づけられると、やはり冷静ではいられないから止めて~。


 なに?なにかへんなこと言った?


「エダの気が感じられます。さきほどまでエダと居ましたね?」


 えー。いままでそんなこと聞いたことなかったのにどうしたのだろう?

 そう思いながらも疚しい事なにもないし正直に答える。


 「う、うん。さっきエダに初めて会った滝に連れて行ってもらったの。な、なにかまずかった?」 


 その答えにゼノンは納得したのか、すこし顔を遠ざけてくれる。

 ふう。悩殺フェイスしているのだから勘弁してくださいよ~。


「新緑の滝ですね。道理で今までにないほどエダの気を纏っているわけですね」


 え?どういうこと?なんで滝に行っただけでそうなるの?

 そう聞くとゆっくりと説明してくれる。

 なんでもあの滝は水の系統にとっては、気を補充できる聖地のようなものらしい。とりわけ水の神であるエダの住処の一部だからだ。

 そう言えば最初会ったときに僕の領域って言ってたっけ?

 そんな大事なところに私が行ってもよかったのだろうか?


「彼にしたらぜひ連れて行きたかったのでしょうね。君が水の気をそれほど帯びるようになるのですから」


 自分では気付かないけどそんなに付いているんだ。


「でも私にしたらまるで君を自分の物と主張しているようで、いささか気に食わないですね」


 ぎゃ~。ブラック光臨だ。

 妖しいまでに目を輝かせて笑うその表情は、まさに美しいけどどこか恐ろしさを感じる。


「二人が深い関係になってもそのような気を纏うことになるのですよ」


 そ、そうなんだ。じゃあもしそういう関係になったら周りに一発でばれちゃうんだ。

 神の世界にプライバシーを下さい!

 ついそう思ってしまう。


「フウカがそんな状態で私の前に現れるのは、いささか罪作りだと思うのですがいかがですか?」


 そんなこと言われたってよく分かりません~。

 水の気を帯びているなんて分からなかったし。

 どう答えていいか分からずまごまごしていると、ゼノンがくすっと一瞬笑いながらいきなりこう言う。


「そうだ。お礼をと言うのなら今度は私に時間を下さい」


 時間ぐらいならいくらでもどうぞと思い何度も頷く。話題を変えてくれてよかったとその話題に飛びつく。


「よかった。闇の聖地である夜の天空は本当に美しいですので、楽しみにしていてください」


 そう言われてさっき言われたこととまだ話が繋がっていることに気が付き、私は安易に頷いたことにすこし後悔する。

 でも、連れて行ってくれるって言うなら純粋に喜ぼうと前向きに考えることにする。

 別にどんな気になっても私には関係ないし。綺麗な景色好きだし。

 エダはよくてゼノンがダメだと言う気持ちは今はないのだから。

 だが、ここで安易に頷いてしまったことで、私の周りとの関係がまたすこし変化する事になるのだが、そのときは私はなにも予測できてなかった。

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