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女神の憂鬱  作者: 灯星
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間話:闇の精霊の独り言

 今回セレーナの回想を間に入れてみました。

 いつかはノアも入れるかな?

 最初に水の神であるエダ様に連れられて、フウカ様が神殿にいらしたとき、すべての精霊の間で衝撃が走りました。

 そもそも精霊にとって、神の気は甘い極上の蜜のようなものでございます。その中でも自分と同じ系統である神のそれは100%純粋な気なので、おそばにいるだけで自分たちの気もどんどん高まるものなのです。

 もちろん、他の神でも気はその方の神気の大きさや性質にもよりますが、大変魅力的なものでございます。

 そんな中で突然現れました、神殿中に感じさせるような光り輝くフウカ様の気は、系統の枠を越えてすべての精霊にとって、まさに癒しを含んだ暖かく神秘的な気なのです。


「セレーナ。今の気を感じた?」


 闇の執務室にて筆頭補佐官であるワトン様が、助手としてそばにいたわたくしに聞いてきます。

 もちろん、この甘い極上の気を見逃しようがございません。たとえ寝ていても起きてしまうほど感じるものです。ワトン様に無言で頷きます。


「新しい神の光臨だね。気の気配からして待望の女神かな?今、ゼノン様はレイヤ様のところに行っているからちょうど会っていそうだね」


 たしかにこの優しげな気は女性のもののように感じます。と、なりますと6人目の女神誕生です。

 29人神がいても5人しか女神がいないのが、神のただでさえ少ない出生率を下げているのです。6人目となりますと、皆様方が興味を持つことになるでしょう。ましてやこの気ですから。

 しばらくして闇の執務室の主であるゼノン様が、戻ってこられました。


「ワトン、セレーナ。とうとう癒しの女神が誕生したようですよ」


 闇神さまは帰ってきてすぐに面白いものを見つけたようにご機嫌で、そうわたくしたちに教えてくださります。

 彼のこのような表情はここしばらく、見たこともないようなモノでした。

 でもその理由は彼の言葉で充分すぎるぐらい分かりました。

 癒し。女神。この両方のキーワードごとこの世界が待ち望んでいた存在だったからです。


「それは本当によかったですね、ゼノン様」


 となりでは少年のような容姿の上司が、本当にうれしそうに神に言ってます。


「ワトン。これからは忙しくなりますよ。ああ、ちょうどセレーナを呼び出して居てくれたのですね。いいタイミングです」


 前半はワトン様に向かって言い、後半はその後ろに居たわたくしを見つけて手招きで呼びます。


「悪いが癒しの女神の侍女に立候補してくれないですか?」


 え?わたくしがですか?

 敬愛するゼノン様が自らわたくしに、お願いという形でお伺いをたてて下さっている。さらにその内容がゼノン様と張るほど、魅力的なあのすばらしい神気のおそばにいられるということなのです。


「ゼノン様からの命令でしたら喜んで立候補いたしますわ。あの神気のおそばにいられるのはどの精霊にとっても幸せなことですから」


 頭を下げながら答えますと、ワトン様が本当に残念そうにため息をついています。


「本当にうらやましいね~セレーナ。僕でもおそばにつけるものならいたいものだよ」


 そう思う気持ちは良く分かります。それほどまでに魅力的なのですから。

 ワトン様は諦めろと言うゼノンに、反撃のつもりで面白おかしく彼女の恋人になってくださいと言いました。

 その言葉にますます楽しそうにゼノン様はこう答えます。


「まあ努力はいたしましょう。ただ、ライバルは多いでしょうからどうなるかわかりませんけどね」


 いつになくやり気な上司に思わず、ワトン様と二人で顔を見合わせてしまいました。

 冗談で言ったのに本当にその気が出ているとは・・・。そう思っているのがワトン様の表情から伝わってきます。

 そして初めてフウカ様とお会いして、妙にゼノンさまのやる気に納得してしまったのです。





 

 なんとこのすばらしい気に一致するような、素晴らしい姿をされた方なのだろう。

 初めてお会いできたとき、その愛らしい姿に驚嘆をいたしました。

 しかしそれ以上にすばらしいのは、フウカ様のお心持ちでありました。


「私はフウカです。本当になにも分からないことばかりなので、いろいろ教えてください」


 わたくしとノアが自己紹介すると、フウカ様はそう言いながらただの精霊であるわたくしたちに頭を下げられたのです。


「フ、フウカ様。私どもに頭を下げるなどもったいないです。どうか頭を上げてください」


 わたくしが慌てて手をあげていると、ふっと微笑を深めながらなんてこともないと言う感じで、こう申されました。


「え?礼儀にもったいないなんかないよ。だってこれからお世話になっちゃうだろうしね」


 神と精霊との格の違いが分かっていないからでしょうが、その考え方にフウカ様の性根がよく現れています。

 さらに嬉しいことにその性質はどんなに時間を経過しても変わらず、わたくしどもに対してもすぐに感謝の言葉を下さります。


「お仕えできる女神さまがこんなにすばらしい方でとってもうれしいです!」


 おなじく侍女となった光の精霊のノアのこの言葉と、わたくしの気持ちはまったく同じものです。

 人としての記憶を持ち合わせているとお聞きし、最初はお仕えするのに戸惑いもありましたが、今は本当にこのままのフウカ様にお仕えできる喜びをかみ締めております。

 さらにもう一つの楽しみは、ノアとフウカ様の恋愛を推測することであります。

 ただいま、フウカ様が勉強と称して接するのは4名の神さまに限られております。わが主であるゼノン様もお一人です。

 4名が他の神とフウカ様が接触するのを嫌って、記憶があって不安定なのを理由にほぼ軟禁状態であるのはおそばにいるわたくしやノアから見れば明白です。それでもなにも言わないのはわたくしはやはりゼノン様と、結ばれて頂きたいと思っているからなのです。間違えなくノアは光の神であるレイヤ様と、と思っているからでしょう。

 4名の神はおそらくここの神の世界では最上神のレイヤ様、ゼノン様はもちろん、水の神のエダ様も戦の神のオリセント様も上位神で在られます。

 その4人ともが大なり小なり、フウカ様に興味をお持ちのようなのです。

 レイヤ様は一番に気持ちを伝えたご様子です。それにフウカ様は少なからず、心が揺さぶられているご様子です。

 エダ様もそれなりに興味を持たれて、今度デートに誘われたとフウカ様が言ってました。

 オリセント様はまだ分かりませんが、司るモノの関係が深いので今後フウカ様に一番接されるお方でしょう。

 そして、わが主のゼノン様は本当に楽しそうにフウカ様に接されて、間違えなく惹かれています。先日ゼノン様の部屋に深夜にフウカ様が跳ばれたと聞いて、一瞬期待してしまいましたけどさほどの進展はなかったご様子です。さすがにいくら目の前に据え膳が置かれていても、まだ自分のお膳でないと分かっているので手をつけなかったのでしょう。それは賢明ですが見守るほうには、すこしジレンマを感じます。

 しかし当のフウカ様は女神の勉強で頭が一杯で、恋愛に目を向けてないご様子なのです。


「どうすれば、フウカ様がレイヤ様に興味持たれるのか見当もつかないわ~」


 ノアがわたくしに愚痴をこぼします。やはりなんとか応援しようとしている様子です。実際レイヤ様に興味持たれてもわたくしとしては困るのですが、ゼノン様に関しても同じことでいい案も浮かびません。


「あれほど無自覚で惹かれさせる方は、見たことないですね。ゼノン様たちがフウカ様を囲うのも分かりますわ」


 少しずつですが、目に見えて4人の神々が癒しの女神に対しての気持ちが、日に日に増していっているのを感じます。まだ積極的に行動に移したりはしてないご様子ですが。

 でもそれも時間の問題でしょう。そうなるとフウカ様のお気持ちがどう変化するのか気になります。今はだれに対しても同じだけの気持ちしか持っていないのは、おそばで見てて分かっています。そのような彼女が恋されると、どのように変貌を遂げるのかも気になります。


「どうせもうじきお披露目するでしょうね。いろんな神や大物精霊に、どんどんフウカ様のこと聞かれるようになったし」


 ノアがそう言うが、たしかにわたくしのところにも数多くの訪問者が現れては、開口一番フウカ様のことを聞いてきています。おそらくそうなるだろうとわたくしも思います。

 彼女の予言どおりその3日後にお披露目することになり、大慌てでしたがたいへん楽しくフウカ様の身なりの手配をさせて頂きました。

 ノアと腕によりをかけてフウカ様のお披露目用の姿を整えました。想像以上にすばらしい出来でゼノン様に、


「君が優秀なのは分かっていたけど、ここはすこし手を抜いて頂きたかったですね」


と、こっそり言われてしまいました。わたくしもすべての者を惹きつけてやまない、フウカ様の正装姿にただただ見惚れるばかりです。

 この方が今後どなたの恋人になられるのか分かりませんが、おそばでフウカ様の心の変化を楽しく見守らせていただこうとノアと誓い合っています。

 もちろん、お仕えするフウカ様の幸せが大前提ですけど。さらにできればゼノン様にがんばっていただきたいものです。

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