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女神の憂鬱  作者: 灯星
25/86

25.フウカ信仰の始まり

 予告どおり一人間からみたフウカ光臨の話です。

 ここも残酷シーンあります。ご注意ください。

 何のために自分はこの戦いの指揮を執っているのだろうか?

 万人の兵士が並んでいるのを馬上で見ながらつい心の中で葛藤が走る。

 だが、心とは裏腹に表情は崩さない。


「殿下・・・」


 側近の2、3人が馬に乗ったまま近づいてくる。自分の最後の意向を聞くためだ。

  

「戦うしかあるまい。こうなったら一人でも多く生き残らす戦にするのが私の役目だ」


不安げに自分を見上げる側近たちに力強く声をかける。彼らもこの無意味な戦争の意味を噛み締めていた。

先ほど、この戦いの元凶であった宰相の突然の変死の急報が入った。

宰相はただ自分の卑劣な悪行を隠すために、王をはじめ周りのものに嘘偽りを吹聴し、なんの非もない小国である隣国に侵略するよう仕向けた。

これがその結果だ。

さらに最後まで反対した自分や数少ない者たちが、彼の陰謀で前線に送られることになった。その彼がいきなり雷に撃たれたかのように、焼かれ見るも無惨な姿で絶命していたのだ。どんな雷の魔術師であっても彼のみを攻撃することは不可能で、何が原因かまだ謎だと言う。

 だが、いくら元凶がいなくなったからと言って、ここまで来てしまっては話し合いもできず戦いをやめることも不可能だ。


「しかし、この状態では多大な犠牲を出すことは避けられないでしょう」


側近の一人が慎重に告げる。確かにその通りだ。

国境のこの草原に着いたのは敵もほぼ同時だ。さらに兵力や魔術師の数もほぼ同じ。

もう少し優秀な魔術師や兵力を与えてくれたら、犠牲を減らすことができるのに相打ちを狙っているようにほぼ同じ数だ。


「我々の戦略次第だな。そろそろはじめるぞ」


そういって側近たちに配置につくように言う。

彼らの動きが止まるのを待って無言で手を翳す。次の瞬間、あたり一帯に号音であるドラが鳴り響く。それを合図に万と言う人の掛け声と馬の蹄の音が大地を揺らした。

それからはまさに地獄絵図のような光景だ。いくら戦略を立ててもあたり一帯見通しが良すぎるこの草原では、ぶつかって戦うしかないのだ。

人の叫び声が鳴り響く。

三刻以上の時間が経ち、死体と怪我人があたりを埋め尽くす。

犠牲が出ているが勝敗が決まるまで、武器を下ろすわけにはいかない。


「どうか。少しでも多く生き残れ。頼む!」


自分自身、返り血と自分の血で真っ赤に染まっているが、愛用の大槍を片手にその死体の山を踏んでさらに死体を作る。

その時だった。

今まで聞いたこともないほど澄んでいて、美しい声が耳からでなく頭の中に直接響く。


「今すぐその無意味な殺生をやめなさい。我が名はフウカ」


周りの者たちが見ろと指差している方向を見ると、そこの空一帯に見たこともないほど美しい女性の顔が浮かんでいた。右眼は金色で、左眼は薄い紫色の色違いの瞳が、一点の曇りも無い眼光でこちらを見下ろしている。空に広がる髪の毛は白金色で美しい光のようだ。顔立ちはずいぶん幼い感じはある。しかしこれまで数々の美しい者を見てきたが、間違いなくダントツに整っていると言える。

 慈悲に満ちたその表情は一目でこの方が人間ではなく、神であるとだれもが気がついただろう。


「お前たちの戦いの元である者はもうすでに、戦神オリセントによって天罰を下されています。この戦争に双方とも利はありません」


そうか。やはり報告に聞いた宰相の死は神によるものか。そして神々は我々を見守り下さっているのだ。


「私は癒しの女神です。武器を収める全てのものにひとまずの癒しを与えましょう。戦うより前に話し合い、相手を慈しむ心を養ってください。そういう者には私から祝福を授かることになるでしょう」


戦わずに話し合う。人を慈しむ。

まさに私が望んでいたことだ。兵士の多くは訳も分からず狩り出され、戦いを強要されている。ただ上の者の欲望を満たすために。

 そういえば以前に、癒しの神の光臨を神官が伝えてきたのを思い出す。生まれたばかりでこのような戦争に舞い降りて下さったのか。


「感謝します。癒しの女神フウカ様」


思わず感謝の言葉が口に出た。

それを耳にした訳でもないだろうに、天に浮かぶ絶世の美女はこちらに微笑みながら雲が散るように徐々に姿を薄めやがて見えなくなった。


「皆のもの。神からのお告げである。一先ず武器を収め、後方の我が陣まで撤退!!」


敵も戦意を完全に無くしているようである。先に自分が号令をかけると向こうでも撤退の合図がでる。

その時、再び奇跡が起こる。

空から巨大な淡い光が降り注ぐ。それは戦場であった草原一帯を覆うほどのものだった。


「・・・・!!」


戦場の中心部にいた自分にももれなくその光を浴びる。暖かい慈愛に満ちた光。

その瞬間、体についた無数の傷が瞬く間にふさがる。痛みだけでなく疲労感すらなくなった。

あたりを見渡せば、生きている全ての者にその恩恵が行き渡ったようで、死を免れないであろう状態であったものも血まみれの鎧を纏いながらゆっくりと立ち上がっている。

 そうして多くの者が、先ほどまで確かに女神の姿が見えていた天を仰ぎ、頭を垂れて祈りをささげる。


「この身で奇跡を受けることができるとは思いもしませんでした、殿下」


 退却の号令を出し、あらかた後方に進む中で側近の1人が、興奮冷めやらぬ表情でそう言ってくる。


「やはり神は見て下さっているんだ。この戦いを無駄だとお思いになり、阻止してくださったのですね」


 となりにいた別の側近も同じような表情である。


「ああ。だからこそ、あとは我々で始末をつけねばなるまい。向こうの総指揮官と話し合いの場所を持てるように手配せよ」


 自分のその言葉で半日後という速さで話し合いの場を設けることとなる。

 そこで自分の想像以上に虚偽の話によって、この戦争が引き起こされたと言うことを知る。こちら側の宰相だけでなく、相手の権力者も共犯でさらに彼も天罰が下っていると・・・。

 その事実と奇跡を国都に知らせがいき、正式に戦の中止を命じられる。こうしてお互いに退却することとなった。

 死者がよみがえることまではなかったが、それでも3分の2が傷も癒されて帰還できた。

 この戦争はのちに『最古の癒し』として、歴史の書に載ることとなる。戦場であった草原は『フウカ草原』と名前を変えられ、やがてそこにフウカ信教の総本山である神殿が作られることとなる。神殿の一番大きな壁一杯には、女神が戦場で倒れこむ多くの人々に癒しを施す姿をかかれた絵が、美しく描かれていた。

 さらに指揮官であった第2皇太子に人を癒す力が授けられることとなり、その彼が王に任命され善政を敷くと共にフウカ信教を確立していく。


 

 

 書いててちょっと難しかったです。でも人間から見たのも書きたかったもので・・・。いつか文章が上達すれば人間界の世界のファンタジーも書きたいですね。あえて名称は出しませんでした。名前考えるのが面倒だしこの後でないのでそうしたのですが、余計に文章が難しかったです。

 短いですがここで区切らせてくださいね。

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