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女神の憂鬱  作者: 灯星
22/86

22.弟の誕生!

サブタイトル・・・男たちにとってはライバル誕生ww

 次の朝、セレーナとノアにひとつ思いついたことを頼んでみる。あっさりと肯かれて昼前にはそれをたくさん用意してくれた。その中から私好みの奴を選ぶ。

 それから昨日あったダリヤの部屋を教えてもらった。

 ふむふむ。意外と近いんだ。よかったよかった。

 部屋をでて人に見つからないようにこそこそと廊下を歩く。結局2、3人にはすれ違ってしまったけど逃げるように挨拶のみして通りすぎた。

 上出来、上出来。

 そしてダリヤの部屋に着く。ノックして名乗るとバタンッと勢いよく扉が開く。次の瞬間にはむぎゅ~っと抱きしめられていた。


「フウカちゃん!本当によく来てくれたわ~」


 部屋の主のダリヤが熱烈な歓迎をしてくれたのだ。


「お話がしたくてきました。よろしいですか?」


 ダリヤは無言で抱きついたまま部屋へ入れてくれる。暖かい雰囲気の家具が置かれている。木のぬくもりを感じるようなテーブルに椅子。壁際には長いすがあり、紅い髪の少年が半分寝そべって書類を眺めている。


「よう!さっそくきたんだな」


 入ってきたのが分かったのか軽く視線を上げてこっちを見、声をかけてくれた。


「おはようございます、ジューンさん、ダリヤ姉さん」


 うわさどおり、一緒にいるんだなぁー。さすが夫婦。


「フウカちゃんはお茶とか甘いものとか好きなほう?」


 お茶を出してくれるのかな?そういえば神は必要ないって言ってたっけ?


「大好きです」

「フフ。よかったわ。ジューンはお茶は飲むけど、甘いものは一切食べてくれないのよ。だからって1人で食べてもつまらないしね」


 そう言うと次の瞬間、テーブルにとっても可愛いティーセットとバウンドケーキのようなものがセットされる。

 やっぱりアラジンの魔法のランプだよね~。


「ささ、座って。わたしのラー茶は好評なんだから」


 ラー茶とは知らないお茶だ。やはり人の飲み物とは違うんだなって思う。といっても異世界だからこちらの人の飲み物もよく知らないけど。


「ラー茶とはラーンという花を乾燥させてから、粉にして湯で溶いたものよ。そのままでもおいしいけど、こうしてシロップをいれるともっとおいしいの」


 いれながら教えてくれる。ハーブティーみたいなものかな?

 目の前にティーカップを置かれて、思わず可愛いとつぶやいてしまった。きれいな金平糖のような色の飲み物でその上に2、3枚ピンクの花びらが乗せられている。


「どうぞ、めしあがれ」


 自分とジューンの分も用意してから席にすわる。

 みんなが座ったのを見てからおそるおそる口にしてみた。


「お、おいしい!」


 ローズヒップティーのようなおいしさ。いや、このお茶はそれ以上だ。さっぱりとしていて、いままで飲んだこと無いほどおいしかった。


「ふふ。気に入ってもらってよかったわ。ジューンもこれだけは大好きで毎日飲んでいるのよ」


 そう言われて横見るとジューンは書類を見ながらだが、味わうようにゆっくりと飲んでいる。


「あ、なんだ?呼んだ?」


 書類に集中してたみたいで、自分の名前が出て初めて顔をあげた。


「いいのよ。女同士の会話だから気にせずに仕事してて」


 ダリヤはジューンにやさしくそう言う。

 その眼がすごく優しくて、こっちがうれしくなってしまう。

 円満な夫婦って見るとこちらまで幸せになるよね。


「悪いな。レイヤの奴が緊急の仕事を回してきたから見ないとだめなんだよ」


 あーそんなときに来てまずかったかな?そういうとダリヤが笑って否定してくれる。


「ジューンが仕事あるのに子供の誕生を見逃したくないからって、ここにいるだけだからいいのよ~」


 あーなるほど。ごちそうさまです。


「じゃあなんでも質問してちょうだい。女性同士だから聞きたいことたくさんあるのでしょ?」


 本当によく分かっていらっしゃります、お姉さん。

 と、遠慮なくいろんなことを聞いた。


「なるほど。恋愛についてね。私は出不精だしジューン1人でいいと思っているから夫婦になったけど、ビュアスやユリーナは数人恋人がいるわね」


 ユリーナ?

 ビュアスはあの妖艶な美女の愛の女神だったよね。そう聞くと、ああと思い出したように説明してくれる。


「ユリーナは月の女神よ。あの子は夜行性だから昨日は来てなかったわね。たしか今は3人ほど恋人いたと思うわ」


 へえ。ギリシャ神話のアルテミスはたしか処女神だったはず。全然ちがうんだな。


「まあ女神が少ないし、そもそも全体的に神も女神も絶対的に足りてないから、何人恋人がいてもむしろ歓迎されるわね。自然に産まれる神がいつ産まれるかもわからないし、フウカの前に神が生まれたのは50年前だからね。恋人がいないことには神と神との間に子は生まれないから」


 ダリヤはおかわりをみんなに注ぎながら教えてくれる。


「じゃあお二人の子と私がほぼ同じ時に生まれるって珍しいのですね」


 なんせ1、2週間しか違わないわけだ。


「フフ。そうね」


 あ、そうだ。今渡してしまおう。


「あの~。ダリヤ姉さん。これを良かったらもっててください」


 そう言ってクリーム色の小さな巾着袋を渡す。

 これこそ、二人の侍女に用意してもらったものだ。


「あら?匂い袋ね。それに、あなたの気をすごく感じるわ」


 ゼノンに昨日もらったものを参考にしました。さっぱり系の匂い袋で、この前オリセントの傷を癒したときのように気を送ってみました。


「私の世界では安産祈願としてお守りを贈ったりするのです。癒しの祝福なら歓迎ってジューンさんも言ってくれてたし、気も付けてみました」


 加減は分からなかったけど、なんとか気を匂い袋に移せたと思う。

 ダリヤがほんとうにうれしそうにその匂い袋を眺めて、それをぎゅっと握って胸元に持っていく。


「本当にうれしいわ。こんな素敵な贈り物はじめてよ」


 予想以上に感激されたけど、何はともあれ喜んでもらってよかった。

 そう思ったときだった。

 ダリヤのマーブル状だった気が一気に膨れ上がる。異変に気が付いたジューンが一目散に書類を放り出して、彼女の肩を両手で抱く。


「ジューン!産まれるわ!」

「ああ。分かっている」 


 ジューンはそれに大きく肯き、椅子から慎重に彼女をゆっくり立たせて長いすに寝かす。

 ど、どうしたらいいのだろうか。

 そう思って声かけようとした瞬間だった。

 ダリヤの気が黄土色と赤茶色に綺麗に分かれて一瞬で分離したのだ。

 離れた赤茶の気の中心に、瞬く間に赤茶の布に覆われた少年が現れる。眼もジューンと同じようなウルフカットの髪も布と同じで赤茶色だ。


「はじめまして、母上、父上。それに癒しの女神」


 外見は17歳ぐらいだ。背はもうすでにダリヤもジューンも越している。おそらくだけど180cmあるかないかぐらいだろう。

 体つきは少年らしく細めだが均整の取れた筋肉がついている。顔立ちはジューンによく似ているがたれ眼がちな火の神に対して、彼は猫っぽい目をしている。


「おめでとう、わが息子。よく生まれてきてくれたな」


 ジューンがそう言うとダリヤも少しでも自分の子を見たいようで、長いすから上体をゆっくり起こす。


「さぁ~私に抱かせて頂戴。実感させて」


 座ったまま両手を広げると、ゆっくり少年はダリヤに近づき優しく手をのばして抱擁する。

 すごく感動のシーンだ。思わず涙腺が緩みそうになる。

 しばらくダリヤやジューンと抱擁していたが、ただ立ちすくんでみていた私のほうを見て、にこやかに笑いかけてきた。


「ありがとう。君からもらった暖かい気に包まれてたから、とてもさわやかな気持ちで誕生することができたよ」


 そう言われてうれしくて私も自然に笑顔になる。


「おめでとう!私はフウカよ。私も生まれたてなんで仲良くしてね」


 情愛の意味もこめて軽く少年を抱きしめる。本当に弟が生まれた気持ちになってくる。

 しばらく抱き合っていると突如、一部の空間が歪む。

 あ、だれか来るんだ。


「ああ、きたか。さっそく、レイヤ。名をつけてくれ」


 そうジューンが言ったときには私の目の前に光の神が立っていた。


「おめでとう!ダリヤ、ジューン。そして火山の神、ウリュウ。ようこそ神の国へ。歓迎するよ」


 火山の神なんだ!なるほど。大地と火の間の子だからぴったりだね。そういえば名前はレイヤかゼノンが付けるって言ってたっけ?


「おめでとう!ウリュウ」


 抱きついてた手を離して、少年の顔をじっと見ながら祝福の言葉を言う。もちろん、いま付いたばかりの名前で呼んでみる。

 そうするとうれしそうに眼を細めながら一度無言でうなづいてくれた。


「フウカ。本当にありがとう。あなたから頂いた匂い袋のおかげね。こんなに早くスムーズに産まれるとは思わなかったわ」


 ダリヤが長いすから立ち上がり、私の両手をにぎってお礼を言う。もう立ち上がれるんだ。人間みたいに産む痛みとかはまったくないみたいだ。

 よく見れば彼女の気も黄土色で一点の曇りもなく神々しく輝いている。もともとこんな色だったんだ。

 返事のかわりに何度もおめでとうと言いながら頷く。


「じゃあジューン。緊急の仕事だけしたら今日と明日はダリヤやウリュウのそばにいてやってくれ」


 そうだね。家族水入らずの時間が必要だね。そう思ってレイヤを見ると彼もわかってくれたようで頷いてこう言う。


「じゃあ俺はフウカと退散するよ。お披露目はまた企画しとくよ」


 そう言って私の肩に手をのばす。


「あ、ダリヤ姉さん、ジューンさん、ウリュウ。本当にこの場に立ち会えてうれしかったです。お披露目楽しみにしています」

「こちらこそ。また遊びに来てね。私もいくから」


 ダリヤ姉さんが手を振ってくれる。

 挨拶が終わると、レイヤがじゃあと小さく言って私を軽く抱きかかえた。

 次の瞬間には二人はこの部屋から消えていた。


「フフ。本当にいい子だわ~。フウカ。ウリュウ、やっぱり生まれたてでも、あの魅力的な気は分かるものなのね」


 ダリヤは生まれたばかりのわが子を見ながらおもしろそうに笑っている。ウリュウは癒しの女神が消えた後を惜しむように切なそうな瞳で見つめていた。


「ああ。ライバルは多いし手ごわいけどな。こればかりは本人ががんばるしかないだろう、俺みたいに」


 ジューンはダリヤのつぶやきを拾って返事する。


「貴方みたいに強引に行くとフウカは参ってしまうわ。そこはあまり似てほしくないけど」


 100年間の強引なまでの求愛を思い出しながら、ダリヤはため息をつく。目の前の火の少年神はほぼ生まれたときからダリヤ一直線で、他を牽制しながら毎日毎日あの手この手で口説いていたのだ。


「あの容姿だから当然似るだろうな。もともと火の系統は情熱的なんだよ」


 しれっと言う夫を見ながら、これからのフウカの恋愛事情に軽く同情してしまう大地の女神だった。

 ちょっぴり長めかな?

 またまた新しい神が・・・。でも誕生シーンを書きたかったので満足です。

 最近、メモをみないと名前がわからなくなってきました。短い名前にしているはずなんですけど・・・。

 たくさんのアクセスありがとうございます。

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