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女神の憂鬱  作者: 灯星
19/86

19.当日の衣装合わせ。主役は人形です。

 それからの二日間、衣装合わせが大変だったな。

 当日ノアに化粧してもらいながら思い出す。

 日々の授業が午前中だけになり、午後からはノアとセレーナがはりきって何枚ものドレスを持ってくる。私だってきれい物好きだけど、自分が着せ替え人形になるのは1時間が限度だ。しかし侍女たちは妥協をゆるさない。結局二日間かかってしまった。

 結婚式の衣装合わせもこんな感じなんだろうなぁ。結局まったく縁なかったけど・・・。


「でも、正直フウカ様に化粧は必要ないですわね。ごくごく薄く塗る程度で十分ですわ」


 ノアはそういって、本当に軽くファンデーションをぬってくれる。確かに今の顔は十分派手なのでいらないかも。癒しの力のせいか肌もしみひとつないし。


「できましたわ」


 艶やかなピンクの口紅を筆で塗りあげ、私の顔のできばえに満足そうにうなづく。

 つづいてセレーナが髪を結ってくれる。


 はい。今日はお二人のお人形と化します。


 サイドの髪を編みこみにして、一部を流す感じにしてもらう。髪にはスミレのような花が散りばめられている。

 そういえば衣装合わせの時にセレーナが、


「ドレスは真っ白なので当日は頭飾りや胸元にフウカ様の眼の色のスミレをつけようと思っています」


 とか言ってたっけ?

 今さらだけど、自分の髪も眼も黒でないことを思い出した。言われて鏡をみると腰まである白金の髪を綺麗に編まれサイドにたらし、紫と金のオッドアイの美少女が真っ白のドレスを着ていた。化粧はほんとうにうっすらとだけど普段より口元が濡れてて色っぽくなっている。

 2日かけて結局選んだのは、上品なすそ広がりのロングドレスだ。両肩はでているが、前が首から胸までレースで覆われている。胸元には紫の花のブローチ。前の飾りはそれだけではかなりシンプルだが後ろは腰のあたりで大きなリボンがあり、そこから何重にもレースがすそに向かって広がっている形だ。

 もちろん、色はオフホワイトだ。まさにウエディングドレスのような感じ。前が開いてないので大きな胸はだいぶ目立たなくなっている。

 しかしこの女の子腰ほそ!コルセットもまったくつけてないのにだ。

 私にはそう感じるぐらい、まだこれが自分の姿だと認識できていない。

 隣でノアがうっとりと私の姿を眼を潤ませながら、惜しみないばかりの賞賛をくれる。


「普段から素敵だと感じていましたけど、本当に今日のお姿は美しいです!皆様の視線はフウカ様に集中すること間違いないです!」


 え!それはやめて~。唯でさえ緊張しているのに・・・。


「本当にすばらしいですわ。わたくしが男だったらって思ってしまいますもの。でもそれならお側によることもできなかったでしょうけど」


 セレーナまでどこか夢見ているような表情でこちらを見ている。

 と、そのとき部屋の空間がぐにゃりと歪む。

 私はそれをなぜか分かるようになっていた。だれかが瞬間移動したときに起こるものだ。しかし今日は二つのそのゆがみがある。

 そう思った次の瞬間には二人の同じ顔をした青年がこちらを凝視していた。予想通りレイヤとゼノンだ。おそらく同じ系統のこの侍女たちが声かけたのだろう。


「これは、これは・・・。想像以上の出来栄えですね」


 ゼノンが腕組をしながら軽く頭を上下してうなずいている。


「かー!他の奴等の反応が予想できて怖いぜ、まったく!」


 レイヤはレイヤで頭を掻きながら言っている。


「ああ、失礼。とてもお似合いですよ。惚れ直しました」


 ゼノンがにこやかに笑いかけながら褒めてくれた。しかし、惚れ直すって・・・。惚れてもないくせによく言うよ。

 日本にいればホストが天職だなぁ。

 そう考えることでかわす。


「あ、ありがとう。えっと今日はよろしくおねがいします」


 今日は私のお披露目だと言う。だからお礼とお願いをする。どんな流れなのかわからないから二人が全て手配してくれたのだろう。つくづく自分は4人に助けられているのだなあって実感する。


「言ったと思うが、最初に挨拶するだけで後は声かけられたら適当に流していたらいいし、しんどくなったら俺らでもエダやオリセントでもいいから振ったらいい。そんなに硬くなるな」


 レイヤが優しい眼でこちらを見ながらそう言う。それで自分が緊張で硬くなっているのに気がついた。

 硬くなるなって言われても無理です!でも、がんばるしかないもんね。


「今日終われば後は楽ですからね」


 ゼノンもフォローしてくれる。

 しばらく深呼吸したりと気持ちを落ち着かしているとセレーナが声をかけてくる。


「フウカ様。そろそろお時間です。会場では今か今かと皆が待っているとワトンが申しております」 

「仕方ないですね。じゃあそろそろ、移動しましょう」


 そう言うとすぐにゼノンは姿を消す。移動したようだ。今回はレイヤが連れて行ってくれるようですぐに私に近づいてくる。


「よし、フウカ。俺につかまれ」


 伸ばされた腕に手を乗せると、もう片方の手を肩に回される。しかしすぐには移動しないでその状態で私の顔を見つめている。


「その姿、ほんとうに似合っている。見せるのが惜しい位だ」


 そう言ったと同時に私の頬に一瞬だが暖かいものが当たる。


「え!」

「緊張ほぐしだ」


 びっくりして犯人である金色の青年を見るがわざとこっちを見ずに横を向いている。

 いまのは・・・・。

 まさか・・・・。

 ほっぺにキスされた!

 目の前の青年も照れているみたいだけど、そうされるとやられた私のほうがもっと照れてしまうよ~。


「じゃあ行くぞ!」


 何かを言う前にとっとと移動されてしまった。

 前も同じようなことがあったよね・・・。

 レイヤのキス魔め!

 と実際に怒る暇もなく、結局心の中で思うしかなかった。

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