18.牽制・・・もといお披露目の企画
前半がレイヤの部屋で後半がフウカの部屋になっています。視点がころころ変わってごめんね。
ところ変わって最上階にフウカと関わった4人が集まっていた。
「そろそろ隠し通すのも限界か・・・」
ふうっと聞こえるほど大きなため息をついてそう言うのは部屋の主のレイヤ。
「そうですね。あちらこちらから要望が出ています。神はもちろん、精霊たちからもです」
となりでは同じ顔をしたゼノンが書類に眼を通しながら答える。
「今日、瞬間移動したときに1階に跳んでしまったからだろうね・・・」
その様子を思い出したのか、すこし楽しそうにエダも後に続く。その話をレイヤとゼノンが聞き、二人の表情もすこし柔らかくなる。
3人の会話を少し離れたところで、さきほどまでフウカと居たオリセントが何か考えるように腕を組みながら沈黙を守っていた。
レイヤはぶつぶつと考えを口にする。
「しかし、跳ぶのにまったく問題ないのに違う方向に跳んでしまうのは頭が痛いな。一応脅しているがもしへんな場所に跳ばれたら困るしな・・」
フウカに脅した内容は何も脅しすぎではないのだ。十分考えうることだ。本人はまだ自覚がないがそれほどまでに彼女の存在は神や精霊にとって、魅力的でなんとしても手に入れたいと思わせるものなのだ。
「しかたないから、牽制も込めて3日後ぐらいにお披露目をするしかないか・・・」
レイヤはそう言いながら面白くなさそうに他の3人をみる。
ゼノンとエダはそれにうなずいていたが、いままで黙っていた戦神が口を出す。
「すまないが、俺が彼女に教えるのはその後にしてもらえないだろうか?」
その言葉に他の3人ともが怪訝そうな表情をする。
いくら一緒にいる時間が少なくとも、彼が癒しの神を待ち望んでいたのはよく分かっていた。だからこそ、彼女との時間をもっと要望するはずだと考えていた。
「実は、さっき話したときに今度人間界の戦場に連れて行くと言うことになった」
その言葉にみな驚く。レイヤとゼノンだけでなく、エダも抑制させるために大雨を降らせに戦場に行ったことがある。血しぶきが飛び、人間だけでなく無数の生き物が悲鳴をあげて死んでいく地獄のような場所。とても女性に見せれるものではないのだ。それを彼女は見るという。
「まだ女神になったばかりで、しかも人としての記憶があると言う。せめて数日は時間を彼女に与えたいが、俺が会いに行くとどうしても来てくれと言ってしまいそうになるんだ。3日後にお披露目あるならせめてそれ以降にしてやりたい」
彼自身、会ったばかりのフウカに対しての気遣いと、本来の神としての役割に挟まれて苦悩している。
「わかったよ。しばらくは僕たち3人でなんとかするしかないね。こればかりは彼女には酷だけど避けて通れる道ではないから・・・」
絶句して何も言えないレイヤに代わってエダ答える。レイヤとしてもゼノンとしても異論はなかった。
「頼む。そうそう。彼女にお披露目では今日みたいな服を着るなと言っておいてくれ」
オリセントは自分が言ったことで重苦しくなった部屋の空気をかえようと、わざとちゃかしたように伝言を頼む。それにゼノンがぴくっと眉を上げて反応する。今日会ってないのは闇神である彼ひとりだ。
「ほお。どのような服装でしたか?」
「光のなかなか官能的な服装だったぞ。レイヤ、お前の趣味だろう?」
そう言われて三人の眼が光の神に集中する。慌てて、レイヤは反論した。
「どんな服を着てもあの体つきは隠せないだろう。だったら別に問題ないじゃ~ないか」
たしかに、どちらかと言えば大人しい形であった先日の水の衣装であっても、胸が強調されていてどこか色気を感じる服装になっていた。
だが、だからと言ってあれは眼に毒だ。特に手を出すことのできない下位神や精霊たちを変に煽るのはよくないだろう。
「当日はおそらくどの系統にも入らない、白主体の衣装で少しでも身体のラインが隠れる服にするのが無難でしょう。侍女たちにそう伝えておきますよ」
ゼノンがそう言ってレイヤを見ると、最高神である光の神はわーったよと、すこし不貞腐れたように返事した。
そうして短い会議は終わった。
「と、言うわけで3日後にお披露目することになりました」
夕食食べようとしたところに、やはりいきなりゼノンがやって来て爆弾をかましてくれる。
と言っても、その前にセレーナが来ることを知らせてくれたりはしたけど。やはりあくまでもドアにノックはしない主義のようだ。
失礼。とだけ言って、すでに目の前の席に座ってお酒のグラスを片手に持っている。
「お披露目と言ってもたかが30人の神と数百人の精霊に姿を見せて、一言言ってにっこり笑えば良いだけなのでご安心ください」
安心できるかー!
知らない人・・・いや、神と精霊か・・・の前で何を話せばいいのか見当もつかない。
「私もレイヤもエダもオリセントもついてます」
うん。4人がいてくれないと、足が震えて絶対立つこともできないと思う。
「もちろん、私たちもついてますよ、フウカ様」
ゼノンと隣で給仕していたセレーナが、にこやかに笑いながらそう言ってくれる。
「当たり前です!おそばを絶対離れませんわ!でもフウカ様のお披露目なんてすばらしいです。当日がたのしみですわ」
飛び跳ねそうなほど楽しそうにノアが言う。二人の気持ちは心強いが到底まだ楽しみだなんて思えない。
「で、衣装なんだけど、この時ばかりは偏った系統の服を着るのもどうかと思うので、白の衣装にしてほしいのですよ。セレーナとノア、手配おねがいできますか?」
ゼノンが二人にそう言うと息を合わせたかのように即答で、
「「お任せください」」
と見事にはもる。すごい。息ぴったりだ。
でも、白でないとだめなんだ。ウエディングドレスみたいなのになるのかな?今日みたいにセクシー系はやめてほしいな。
「できるだけ身体のラインを出さないものにしたほうがいいですよ。今日のフウカの姿は3人が言うようにとても艶やかですが、他の神にまで見せる必要ないですからね」
よくみるとゼノンの視線が私の胸元に留まっている。ストールで隠れているはずなのに視姦されているよう感じてしまうのはなんでだろう。恥ずかしくてつい、目の前の盛られた果実を動かして隠す。
「明日には数着ご用意できますので、フウカ様に選んでいただきますわ。フフフ。ほんとう楽しみです」
ノアがかなり気合をいれて返事をしていた。まあ選ばせてもらえるのはうれしいや。ラインでないのも望むとこだし。
「服はいいとして、本当に何をしたらいいの?その場で」
そう。服装なんかより問題はあいさつだ。絶対あがって何も話せなくなるよ。
「普通に癒しの女神であると言うことと名を名乗るだけで大丈夫ですよ。後は私やレイヤがフォローしますから」
フウカですと言うだけでいいのか。それならなんとかなるかな。
「会うたびに自己紹介するのも大変でしょうし、それを一回で済ますためだと考えてみれば楽ですよ」
ゼノンはなんとか尻込みしている私に行く気にさせようとフォローしてくれる。
まあいつかは挨拶しなければいけないのだから仕方ないか。
「それにそのときに女神たちとも会えますよ?」
あ、それはうれしいかも。やはり同性の友達がほしいし、この世界のことを女神さんたちにも聞きたい。
「ダリヤさんだっけ?大地の女神さんには会って話ししたいな」
そういうと、おかしそうに笑いながら、
「じゃあ必然的にジューンとも話すことになりますよ」
と、火の神のことをちゃかす。
そんなにべったりなんだ。
それを楽しみにするしかないね。がんばって念のため挨拶を考えておこっと。
こうして結局今日の夕食もゼノンと一緒に食べることになった。1人より2人のほうが楽しいから私はうれしかったけどね。
ちょっとだらだらした文章になってきちゃったなあって思っています。
そろそろ動きを書きたいよ。