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女神の憂鬱  作者: 灯星
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17.戦神の初授業

 サブタイトル・・大柄な男性って変にかわいらしい時ってありますよね? 

 今はエダに自分の部屋まで送ってもらって部屋で待機中だ。

 次はオリセントが来てくれるらしい。

 初対面で水浸しで会ってから顔を合わすのは初めてだ。どんな顔で迎え入れたらいいか困惑してしまう。


「気にしすぎたらだめだよね。やっぱ最初にお礼を言って終わっておこう」


 そう考えていたときにちょうど、部屋の扉からトントンっとノックが聞こえる。


「はい!どうぞ」


 返事をすると扉が開き、昨日会った戦神が部屋に入ってきた。今まで3人の神はいきなり部屋に入ってきたので、当然のことなのに彼がとても礼儀正しく感じた。


「あ、昨日はありがとうございました」


 いろいろ聞きたいことあったが、質問より先にやはり礼を言う。オリセントは手を振りながら許してくれた。


「気にするな。助けることができてよかったよ。それより、3人にだいぶ怒られたらしいな。瞬間移動もなかなか難しいと聞いたが・・・」

「はい。特にゼノンに怒られました。あと、移動は・・・」


 今日の練習のことを言うと、口元を押さえながらぷっと吹き出される。つい、笑われたことに軽く睨むと慌てて彼が謝ってきた。


「す、すまない。つい、その慌てる姿を想像してしまって・・・」


 オリセントのほうこそ、その慌てる姿が強面で身体の大きい彼に似合わず、変にかわいらしかった。こちらもつい笑ってしまう。私の笑い声を聞いて彼もつられて笑い出した。これでお互い様だ。

 改めて彼の姿をみる。昨日はどちらかと言えば軍服のような服装だったが、今日はずいぶんラフだ。首のつまった灰色の袖のない上着に白いズボン。そう言えば、彼は何色なんだろうか?そもそも私もそういう色ってあるのだろうか?

 そう聞くと意外な答えが返ってきた。


「俺たちには色はないぞ。有るのは自然の神ぐらいだな。それに精霊もほとんどが自然でそれ以外の神は精霊との間の子がなるぐらいだぞ」


 あ、なるほど。たしかに戦とか癒しとか言っても色はピンとこない。精霊もそうだ。


「酒の神には3人の子が生まれているがすべて酒の精霊になったな」


 お酒の精霊ってなんかおもしろいかも。ふと、自分ならどうなのだろうと考えて聞いてみる。


「じゃあ私が精霊と子供作ったら、癒しの精霊になるのですか?」


 すると、オリセントはすこし意表をつかれたような表情をした後、すこし口元を歪ませて笑いながら答える。


「まあそうなるだろうが、神たちがそんな隙を作らせないだろう。俺もそれは阻止したいな」


 え?

 わからないと言うように顔を見上げるともっと説明してくれる。


「女神が少ないと聞いているだろう。それにフウカの神気が一番つよいとも。話した感じではレイヤやゼノン、エダまでこぞって興味持っているし、他の神も見られないだけに余計に興味津々だ。俺もできるなら立候補したいと思っているからな。精霊が近づく隙など作らせないさ」


 あ、そういうことですか・・・・。

 女神は少ないから神が相手でないとって話なんだ。

 しかし、4人とも気楽に口説いてくるなあ。子供がほしいだけだろうし、あまり本気にしないように気をつけないと。彼らもそんなに本気ではないみたいだし。自分だけが本気になるのは悲しいしね。

 しばらくオリセントが私の姿をじっと見ていると、照れたように頭を掻きながらぼそっと言う。


「今日は光の服なんだな。似合っているが、そのストールはとらないようしたほうがいいな」


 そう言われて思わず胸のストールを強く握る。やっぱり、そうだよね。さっきレイヤには脱げと言われましたけど。やはり彼はスケベ神だ。


「ただでさえ狙われやすいのに、一目みるだけで攫われてもおかしくないぐらいの姿をするのは感心しないぞ」


 ・・・・・・・。

 だからレイヤのせいです。慣れたらやはり自分で服は調達しよう。

 しかしゼノンにも同じようなこと言われたっけ。本当にここって貞操の危機を感じるなぁ。

 しばらくは4人と行動するみたいだから大丈夫だろうけど。


「と、与太話はこれぐらいにしといて。今日はこれから何を覚えたい?知りたいことをなんでも聞きな」


 オリセントは腰に手を当てながら聞いてくる。


「ん~。神としての役割かなぁ。これから私は何をしていけばいいの?」


 いつまでもみんなにおんぶに抱っこで相手してもらっているわけにはいかないだろう。今はまだ覚えることで精一杯だけど、癒しの神を待っていたと言ってくれているのだから、しなければいけない使命はあるのではないかとおもっていたのだ。

 そういうと眼の前の強面の青年は、すこし目元を和らげしながら大きくうなずく。


「そいつは感心。ゼノンが人間界に連れて行ったと聞いたが、それでフウカの存在は人間に広く伝わっただろう」


 それはゼノンに聞いた話と同じだ。


「もうすこし女神としての自覚と力の加減などが分かったら、辛いだろうが今の人間社会を知ってもらう」


 人間社会・・・。これを戦神が言うのだ。辛いってことはもしかして・・・・。

 不安そうに彼を見上げると眼を閉じながらこくりとうなずく。


「そうだ。今、人間どもは戦いに明け暮れている。大地と言う大地を占領しようと同じ人間同士で武器を持って争っているんだ」


 戦争。

 いままでの私の人生には話しだけで直接関わることの無かった言葉だ。

 テレビや映画で見るだけで、実際人が亡くなる姿をみたこともない。


「癒しがなかったせいで、怪我人だらけでそれでも争いをやめない」


 正直怖い。

 なぜ私がと思ってしまう。

 しばらくその場に沈黙が漂う。彼も私の言葉を根気良く待ってくれた。

 怖いけどどこかで、この恐れが力の源になって大きな癒しを作ることができるのではないかと感じているのだ。


「・・・・・・・分かりました。正直、見たくない。でも見なければって感じています。次、オリセントが担当になってくれたときにぜひ連れて行ってください」


 これだけ宣言するのにだいぶ時間がかかったが、それを告げた途端、腕をひっぱられ気が付いたら大きな胸に頬が当たっていた。抱き寄せられたのだ。


「すまない。正直女性に見せるものではないと分かっている。でも見ないことには癒しを施すこともできないだろう」


 感極まったという感じでぎゅっと抱きしめる腕に力が入る。それに私を心配してくれているのをすごく感じることができた。


「戦と癒し。切っても切れない間柄の神系だ。これからもそういう意味で仕事がら一緒に行動することも増えるだろう。だから同じ同志として敬語でなく普通に話ししてくれ」


 少し、抱きしめる力を緩ませ私の顔を覗き込んでくる。その表情がどちらかというと強面なのに色違いの目元がとても優しくなんだか可愛らしい表情になっていた。それを見るとこちらの気持ちも落ち着いてくる。


「うん。これから迷惑かけるだろうけど、できることはがんばるわ。だから隠さずなんでも教えてね」

「まだ会ったばかりだが、癒しがフウカってのは納得できるな。本当に俺は癒しの神を待っていたんだ。生まれてきてくれてありがとう」


 その言葉にどれほど彼が癒しを待っていたか痛感した。

 宣言したからにはがんばろう。彼のためにも。そしてまだ見ない私と同じ人間のためにも。

 それがいまの私の存在価値なのだから。


 フウカは4人にがっちりガードされているので、精霊は近寄れません。エダの時のは本当にイレギュラーです。


  

 

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