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女神の憂鬱  作者: 灯星
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10.実技開始です。

「さて、今からは気の感じ方と制御を教えよう」


 実技の授業だー。


「まずは人間としての固定観念を捨てろ」


 最初から無理を言いますねー、先生。でも跳べないと思っていたらいつまでも跳べないってのと一緒だもんね。

 よし。私は気を感じるー。感じるー。感じるー。

・・・・・・

 やっぱり無理か。


「いきなり感じるって思うな。まず、俺が軽く気をお前に放つから肌で感じてみろ。視界をふさいだ方が感じやすいから眼をとじてみな」


 わっかりました。先生。

 眼を閉じてみる。

・・・・・・

 え?

 光が近づいてくるのがわかる。

 小さなボールぐらいの大きさだけど、淡く光っている。

 触れるのかな?

 手が届く範囲までくるとおそるおそる手で包み込むように触ってみた。

 暖かい。

 日向ぼっこしているときに感じる暖かさだ。 


「お!思ったより早いな。それを感じながらゆっくり眼を開いてみな」


 そーっと視界を広げていく。ぼんやりと見えていた光が透明ではあるがたしかにそこに存在を感じることができた。すごい。本当にできちゃったよ。そう思ってレイヤに顔を向けた瞬間、視界に映る膨大な気を一瞬で感じ取ってしまい立ってられなくなる。


 え?何?


 今までなんともなく見ていたレイヤが気の塊に見える。


 これが気なの?


 なんで雄大で神々しい気なんだろう。どうしても直視できない。

 それでもその塊は私の崩れた身体を両手で支えてくれた。


「おい、大丈夫か?一気に見えるようなって気に酔ってしまったみたいだな。良いから眼をもう一度つぶって深呼吸だ」


 言われた通りすると、いくらか楽になった。


「悪い。まさか一気に開花するとは思わなかったから・・・。自分の気のコントロールができれば眼を開けても大丈夫になるからそこまで進めるぞ」


 自分の気。

 レイヤのようなものが私の中にもあるのだろうか?


「眼とじたままでいいから両手をかざして、さっき俺が作ったみたいな小さな珠をイメージするんだ。へそから胸、腕を通って手のひらに気持ちを集めて・・・・」


 言われた通りにする。弓道の胴作りのようなものだろうか。しばらくの間その形を保ち、手のひらに集中する。

 その次の瞬間、かけらしかなかった白い塊が卓球のボールから野球のボールを超えて、サッカーボールぐらいまで一気に膨れ上がる。


 うわ・・・。できちゃったよ・・・。


「次にそれと同様の気を自分の中から感じ取るんだ。今は全身からあふれ出ているだろう」


・・・・・・・。

 言われてみれば全身からその気を感じる。いや、全身よりおおきくはみ出している。分厚いスモークに包まれている感じだ。


「次に全身よりはみ出している気を自分の中に仕舞い込むんだ・・・・。そう」


 やり方を聞くだけで無意識で出ている気を減らすことができた。


「このまま俺に捕まっていながらゆっくり眼を開けてみな」


 さっきのことがあるので、ゆっくりゆっくりと目をあけていく。

 レイヤの顔がすぐ近くにあったけど、身体から放たれる気は大きさは一緒でも先ほどのように攻撃的なものでなく、一番最初に触ったボールとおなじぐらい優しい光となっていた。


「思ったよりすんなりできるもんだな。やはり記憶があっても無くても神は神ってことだな」


 そう言われて初めて人間外になったのだと実感した。


 私、本当に神になっちゃったんだ・・・。


 早くできたことはうれしいけど、これでますます橘風香としての人生の終焉をつよく意識することになる。


「つっ」


 そう言いながらいきなりレイヤは私の頭を抱き寄せる。


 え?なに?


「声も出さずに泣くなよ、癒しの女神が」


 言われて初めて自分の眼から涙が出ていることに気が付いた。


「心の中でたまっているものを吐き出せ。気が分かったことがいやだったのか?」


 私の顔を自分の胸に埋めながらそう優しく聞いてくる。

 顔を見ながらでないことに本当に感謝する。


「ち、ちがうの・・・・。できちゃったことで、自分は言われるように女神になってて、今までの橘風香としての人生は終わったのだと思うといろいろな気持ちが一気にあふれちゃって・・・」


 ここに来てしまった事は不思議と運命だったのだと思うことができた。だからといって、今までの人生に未練がないわけではない。嫌でこちらに来たわけでもないのだから・・・。

 そう胸のうちを言ってしまうと、レイヤは悔いるように低い声で謝ってくる。


「すまなかった。気楽に記憶を消そうとして・・・。だが、もし辛くなる様であればすぐに言ってくれ。俺としてはこのままのフウカでいてほしいが、人としての意識を持ったまま永久の時間を過ごすのは苦痛かもしれないからな」


 謝ることないのに・・・。最初もその気持ちで消そうとしてくれたのは分かった。


「たぶん、大丈夫。正直癒しの女神が何をするのか分かってないよ。でももしかしたらこの記憶が、人間の世界に関わっていくためには必要なのかも。さっきゼノンに連れて行ってもらったときにそう感じたんだ」


 今度はレイヤの胸から自分で顔を上げてしっかりと彼の顔を見てそう言う。

 すこしは虚勢あるけど、前向きにやっていくってことを彼に見せとこうと思った。

 涙を拭こうと手を持っていくと、その手を取られてぐっとひっぱられる。


「!!」


 気が付いたときには彼の唇が自分の眼から離れていった時だった。

 涙を舐められた!

 それも両方の眼とも・・・・。

 言葉にもならない言葉であぅっとか言ってる私を面白そうに見ながら、身体を離してくれた。


「早めにできたけど、フウカの気力もだいぶ使っただろうしすこし部屋で休むといい。今日はここまでにしよう」


 結局彼が部屋から出て行ってしまうまで、私は意味のある言葉を発することができなかった。

 ゆ、油断した・・・・。この・・・セクハラ兄弟め!!

 本当はゼノンといい雰囲気にしようと思っていたのに、レイヤが出しゃばってきました。

 小説は本当に生き物です。

 弓道やったことない人にはすこし分からない文章はいってますが、打つ前の体制や呼吸法のようなものなので気にしないでください。って弓道経験者にこの説明はだめって言われそうだけど(汗)

 フウカはすぐに能力を開花しています。なかなかできなくて困る設定にしようか迷いましたけど、すぐ出来ちゃって戸惑う彼女を書きたくてこうなりました。早く女神として活躍させたいです。

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