解説が火に油を注ぐ
「それじゃあ、4ページの解説を見てみようか?
相田君、4ページの解説のところを読み上げてくれるかな?」
斎藤は前の方の席に座る男子生徒を指名した。
相田と呼ばれた少年は少し緊張した様子で立ち上がり、教科書を捲った。
教室の空気がまだざわついている中、彼は小さな声で読み始めた。
「えっと……答えは、✕です」
その言葉に、生徒達のざわめきが一気に大きくなった。
「うんうん、相田君、続けて」
斎藤は表情を変えず、いつもの爽やかな笑顔を保ったまま促した。
「えっと……道路標識は、自動車だけではなく歩行者等も守らなければいけないものです」
「はい、相田君、ありがとう。答えはそういう事だよ。席についていいよ」
相田がホッとしたように座ると、教室はまだ完全に静まらなかった。
あちこちから「なんで?」「歩行者?」「これおかしくない?」という小さな声が漏れている。
斎藤は軽く手を挙げて注意を引いた。
「というわけだ。皆、忘れがちだけど、信号機だって道路標識の一つなんだ。『自動車は道路標識を守らなければならない』という問題だったら、歩行者は赤信号を無視してもいいって意味になってしまうよね?だから、この問題の答えは✕が正解になるんだ」
生徒たちは渋々といった表情で、少しずつ納得したような顔を見せ始めた。
だが何人かはまだ不満げに教科書を睨んでいる。
斎藤は特に気にした様子もなく、淡々と続けた。
「まぁ、こういう問題もよくあるから、しっかりと勉強していこう。それじゃあ、また2ページに戻って。第二問に行こうか?」
彼は爽やかな笑顔のまま、そう言った。




