表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/89

第八十五話《逆境の来寇二重螺旋の戦場》

 結界が塗り替えられた瞬間、戦場は一息ついたかのように静まり返った。

 しかしその静寂は、嵐の前の呼吸に過ぎなかった。


 轟音。

 逆側の空間が、不自然に裂ける。

 亀裂の向こうから、重く粘りつく妖気が溢れ出す。

 《アカシア》の咆哮に呼応するかのように、新たな妖怪群が現れたのだ。


「ちっ……こっちの番が来たか」

 ヨハンが低く呟き、拳を構える。


 すぅしぃは穴子を肩に担ぎ、口元に笑みを浮かべた。

「へっ、いいじゃねぇか。二の皿が出てくるなんざ、粋な計らいじゃねぇの。まとめて握ってやらぁ!」


 苺瀬れなが、盾を強く構える。

 新手の妖怪は、形すら曖昧な**群体構造**。

 かつて《文法結界》の外で淘汰されたはずの断片的存在が、まるで残飯を漁るかのように再集合している。


「……この数は、さすがに無視できない」

 れなの声には焦りはない。だがその瞳には、冷徹な決断が宿っていた。


 アヴェルが警告フラグを展開する。

「識別不能群体。多数の低位妖怪構造が連結し、ひとつの『領域災厄』として侵入中。

 放置すれば、《アカシア》と同調する可能性大」


「ったく、こちとらメインディッシュで手一杯だってのによ……!」

 すぅしぃが江戸っ子らしく毒づく。

「だけどよ、こんなやつら、負けたら洒落にもならねぇ。ヨハン、れな、覚悟決めろ!」


 その瞬間、逆側からの妖怪群が、怒涛のごとく押し寄せた。

 黒炎を纏う《アカシア》と、亀裂から溢れる群体妖怪。

 二重螺旋のように戦場を侵食し、選ばれし者たちを呑み込もうとする。


 戦いは、さらに苛烈さを増していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ