第八十五話《選ばれし者たちの戦場》
結界がゆっくりと崩れ始め、空間そのものがひび割れ、異次元の力が迸る。
空気の質感が変わり、周囲の音が途切れた瞬間、戦場に漂う異様な静寂が一層際立った。
「選ばれし者たち」とは、今まさにこの場所を支配しつつある者たちだ。
すぅしぃ、れな、ヨハンそれぞれが持つ「意志」と、結界内での新たな法則が融合し、戦場のルールそのものを塗り替えている。
「やっと、ここまできたな……」
ヨハンの目は冷徹だが、内心では確信していた。
この戦場において、彼らの意志が最も重要であり、選択こそが唯一の力であると。
すぅしぃがちらりと横目で見てから、くすっと笑った。
「ったく、焦ってんじゃないわよ。こっちは慣れたもんだから、ちっともビビっちゃいないぜ?」
江戸っ子らしい粋な言い回しで、彼女は周囲の緊張を気取らぬ様子で切り裂いていく。
「どんなやつが来ようと、こちとら腹をくくってんだ。ここは俺たちのテリトリー。ルールは、今から俺たちが決めるんだよ」
その言葉には、自信と決意がにじみ出ていた。
苺瀬れなが、盾を構え直す。
彼女の動きは力強く、躊躇いがない。
だが、心の中では冷徹な判断が渦巻いている。
「ここまできて、まだ迷ってるやつがいるわけないじゃない……」
れなの手が振るわれる度に、結界の「破綻」した部分が瞬時に新しい法則に再定義され、世界が塗り替えられていく。
「今、私は……私たちは、ここに立ってるんだ」
その言葉に重みがある。結界の崩壊、それに続く新たな世界の形成。それは、すべてが「彼女たちの手のひらの上」にあった。
「さあ、すぅしぃ、ヨハン、やるぞ!」
戦場の空気が一気に変わった。
新たに生まれた戦局で、彼らの意思は再定義され、選ばれし者たちが支配する世界となる。
そして、すべての戦闘は、彼らの意志に従った形で進行する。
その先に待つものが何であれ、もう後戻りはできない。
「さぁ、アカシア。お前の名前を、俺たちが与えてやる」
すぅしぃが拳を突き上げ、笑みを浮かべる。
その笑顔は、すべてを無に帰すような力強さを感じさせた。
「さぁて、今日も仕事が始まるよ!てゃんでぃ、気合い入れていこうじゃないの!お前さんの名前、今からあたしらがつけてやるから覚悟しな!」
その言葉は、まるで寿司を握るように、冷徹でありながら、まっすぐに決断を告げるものだった。
それが彼女たちの新たな戦いの始まりだった。