第七十九話《死国統合ビギナー百六十万、明日、開戦》
リアリティズム内に、重たく冷たいアナウンスが流れた。
「明日から新規参加者の大量流入が始まります。心霊スポット系配信者、登録者数160万人、全サーバー統合、死に戻り機能、新規参加者にのみ一ヶ月限定ビギナーモードを追加」
その瞬間、ワールドが、
地図が揺れた。
複数のサーバーが統合されたリアリティズムは、四国によく似た地形へと変貌を遂げていた。
死国とでも呼ぶべき、禍々しい島。
他サーバーのランキング上位者たちも流れ込み、未知との戦が迫る。
昨日の強者は、明日の弱者。10日間のメンテナンス中に何を仕込んだかが生死を分ける。
ROOMとワールド
その防衛線を整えた者だけが、生き残る。
べるんこは蜘蛛の糸でワールド外周を補強し、
ストホイの苺ビットは空中旋回を続ける。
晴明は懐から百枚もの符を取り出し、空へと放る。
それらは鴉や鼠、蝙蝠 小動物へと変化し、周囲の索敵に散っていった。
琴吹神楽は、地に増えた尻尾を深く突き立てる。
龍脈、地脈この島の根幹に妖力を流し込む。
周囲の空気が、鼓膜を揺らすほどに圧を増していた。
「地形ごと変わっても、妾は変わらぬぞ」
そう言って神楽が振り返る。
すぅしぃが提供する最上級のコース料理が、隊の疲労を癒していく。
明日の死闘に備えて、体と心を整える夜。
くまーるは、運営によって強制送還を食らったまま、まだ戻らない。
だが、神楽の眷属となった以上、仕様が変わっても再召喚可能。
森羅万象の術により、改変も復元も自在だという。
今夜は休め。
明日、160万人と共に、地獄が始まるのだから。