第七十二話 《九尾の封印と因縁の力 》
ニコライ・テスラは丁寧に身なりを整えた様子で、アマ研のメンバーたちに向かい一礼しながら語り始めた。彼の声は落ち着きと品位を纏っていた。
「皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。さて、日本には災害級と称される妖が幾つか存在しております。その中でも特に名高きは九尾にございます。そして、こちらにおられる琴吹神楽様、どうやら安倍晴明殿の御気配に引き寄せられたのではございませんか。」
彼は一旦言葉を止め、考えるように両手を組んだ後、再び話を続けた。
「因縁や因果などと申しますと分かりやすいかと存じますが、私個人としましてはフリーエネルギーと妖力、さらには魔力の関係に興味を持ち続けております。特に日本の大妖怪たちは、何とも言えぬ魅力と引力を有しております。こうして直接お目にかかれることに、この上ない興奮を覚えております。」
アマ研のメンバーはその話に静かに耳を傾け、重みのあるその言葉に深く頷いていた。その空気を切り裂くように、琴吹神楽が艶やかな声で言葉を発する。
「あらあら、晴明が討たれたとな?西の神楽、東の九尾と謳われし昔日とはまた随分と懐かしゅうござんす。妾と同格の狐めが晴明に一矢報いるとは、なんとも面白き話にござりますなぁ。」
神楽の目はどこか嘲笑と余裕を感じさせ、彼女は扇子を揺らしながら続ける。
「それでも、妾もまた昔のままとは参らぬ。いやいや、何ぞ新しき技でも得ておりましょうや。ほほほ、一献の舞でも所望致そうかしらん。」
その言葉に部屋の空気が一瞬だけ和らぎ、軽く笑いがこぼれる。しかし、その裏に潜む重みは誰もが感じ取っていた。
テスラはその一瞬の和やかさの後、再び鋭い視線を神楽に向けながら言葉を紡ぐ。
「琴吹神楽様、そのお言葉にございますが、九尾が如何なる手段で晴明殿に挑まれたのか、私個人としても大いに興味を持っております。それが判明すれば、この次なる一手を打つ準備に役立つやも知れませぬ。」
神楽はその言葉を聞いて微笑みながら、僅かに頷く。そして言葉を静かに続けた。
「まあまあ、妾のことなどさておいて九尾の動向が肝要にござんしょう。そして、その気配を封じる術をしっかりと講じねばなりませぬわ。」
その言葉を最後に、部屋の空気が再び引き締まる。アマ研のメンバーたちは、この次なる一手に向けて、静かにしかし確実に準備を進めていくのだった。