第六十四話 《踊ったアイドルは止まらない♡ストロベリーレポート開始》
room内で中央テーブルには全員が集まっていた。アマ研小隊、くまーる、座敷童も並んで座る中、ストロベリーホイップシンドロームだけが立っていて、その姿はアイドルそのものだった。
「それでは、昨日のストロベリーダンス・オブ・デスに関する戦果報告を開始するベリー」
アマ研は深くため息をつく。
「これは反省会だったはずでは?」
「違うベリー。これは成果報告ベリー。視聴者ログは全部ストックしてあるベリー」
彼女はホログラムを開き、浮かび上がる資料に目をやる。それは「ストロベリーレポート」と銘打たれたプレゼン資料だった。
視聴者増加率は、ダンス開始直後から三十秒間で四百二十パーセント増加。「映え死」タグがトレンド入り。
ギフト飛散率は、ホイップの軌道を中心に合計四百二十八回のイイネ連打。寿司連携により物理的ダメージ十四体に命中。
謎の現象としてリスナー一名が実際にベリーダンスを開始し気絶。また別のリスナーは冷蔵庫内の苺を全て食べ尽くし、深夜に叱られる。
「結果的に、この踊りは最強ベリー」
香久夜は扇を閉じる。
「よう言うたけど、それで誰が責任を取りますのや?」
「それは神楽ちゃんがデコピンで止めてくれたベリー。スーパーカリスマに感謝ベリー」
神楽は余裕の笑みを浮かべつつも、くまーるの頭に手を伸ばす。
「ほんにまあ、踊るのはええけど、これが常態化したら現実まで糖度で潰れますえ。どう落とし前つけんの?」
くまーるは震えながら立ち上がる。
「くまーる二号機を派遣して、モニタリング業務の九十九パーセントを任せるクマ。わたしはステージ管理AIになりますクマ」
「その方がよろしい」
神楽が頷くと、くまーるは自爆的テレポートで二号機に切り替わった。
ストロベリーホイップシンドロームは満面の笑みで締めくくる。
「結論。映えは命より重いベリー」
アマ研は頭を抱える。
「このユニット、思った以上に視聴者稼ぎにはなるな。けど命がいくつあっても足りんかもな」
座敷童はそっと呟く。
「あの子が踊ってる時、確かに世界が明るくなってました」
神楽はくすりと笑う。
「明るい世に導く踊り、けどその裏で誰かが制御せねばのう。ほな、踊りの続きは次の戦場で」