第六十二話《甘くて強い、ベリーに捧ぐ一撃》
部屋にはふんわりと甘い香りが漂っていた。
ストロベリーホイップシンドロームは左手に苺、右手に十連ガチャチケットを持ち、笑顔でぴょんと跳ねながらアマ研の隣へと歩み寄る。
「苺を食べてガチャ回すの、すっごく映えるベリー♡」
語尾のベリーがぴょんと弾む。
配信画面ではイイネが連打され、コメント欄は歓喜で溢れていた。
アマ研は端末を見ながら分析結果を口にした。
「女性ユニットのガチャ配信は、イイネやギフトの獲得率が一・六倍から二・二倍に跳ね上がる。
イーグルアイと鑑定の両スキルで裏付けも取れた。今後の主力は明白だな」
香久夜が静かに言葉を添える。
「見る側にとって、戦は娯楽。美しさが加われば、なお尊しということでしょうな」
そのとき、ストロベリーホイップシンドロームが手を上げ、明るく呼びかけた。
「くまーるくーん、ガチャお願いするベリー♡」
呼ばれたくまーるはすでに眷属と化していた。
神楽に従うことは義務であり、本能である。
即座に現れ、力強く叫ぶ。
「いっちょやってやるクマ。くまーる二号機には留守番任せて、今日は全力出すクマ!」
神楽は満足げに微笑みながら、右手の指を軽く構える。
「さあ、派手に回しておくんなまし」
そして、くまーるの額めがけて、指先で小さく弾いた。
ぴしゅっ
鋭く響いた音とともに、金色の光がくまーるを包み込む。
神楽の森羅万象スキルがリンクし、クラウドの深層域からガチャ仕様への干渉が始まった。
表向きは通常演出。だが裏では、神楽好みの展開が静かに設計されていく。
「回すベリー♡ いっくよ〜♡」
苺をぱくっと頬張ったストロベリーホイップシンドロームが、くまーるの腹部にチケットを差し込む。
ガチャが体内で回転を始め、金色の輝きが視界を埋め尽くしていった。
次々とスキルが吐き出される。
習得スキル一覧
ベリーショート
髪を短くすると俊敏性が向上
ベリーグッド
小吉〜中吉レベルの運気上昇
ベリーナイス
回避率やドロップ率の向上
超ベリーグッド(チョベリグ)
大吉レベルの幸運バースト 確率の壁すら越える
ストロベリーフィールド
戦闘用空間を生成し、味方にバフを付与
ニューベリー
広域型支援フィールドを展開
ベリーベリー
自分と味方のスキル効果を段階的に増幅
ホイップステップジャンプ
跳躍力・速度・反応を強化
ホイップバズーカ
苺ホイップ型の巨大バズーカを召喚 遠距離砲撃に最適
ワイルドベリー
近接格闘用 急所を狙う一撃を持つ
ベリーダンス
踊ることでランダム効果発動 状態異常回復や再行動などを付与
これらのスキルが融合し、
ストロベリーホイップシンドロームは苺戦線壱型へと進化する。
「すごいベリー♡ わたし、もっと……可愛くて、強くなっちゃうかもベリー♡」
その横にはふよふよと座敷童が並び、ピースサインを決めて笑顔を見せる。
「この子とは気が合いそうでございます♡ 幸運の波動、びんびんです!」
アマ研は穏やかに微笑みながらつぶやいた。
「この組み合わせ……支援と幸運の相性としては、最高クラスだ」
神楽は満足げに頷くと、くまーるの頭にもう一度指先で軽く弾く。
「次はもっと、甘く香ばしゅうたのんますぇ」
再び金色の光が爆ぜるように輝き、画面は静かにフェードアウトしていく。