第五十六話 《魂の応援、復活の旋律 アマ研派閥、新章開幕!》
戦場が一時の静けさを取り戻す中、空より再び降り注いだのは、無数の「イイネ」と「ギフト」の光。
それはクラウド上に集約された魂の共鳴、視聴者たちの心からの支援だった。
この夜、アマ研小隊が受けた「共鳴度」と「貢献度」は群を抜いており、サポートランキングを総なめにする結果となった。
そして、それに伴う任意復活券の発動対象が発表される。
直近一週間の支援者ランキング上位
「ふわり」「響」「ひきわり納豆」、この三名が選ばれた。
最初に光の中から姿を現したのは
「ふわり」。
透き通るような儚さを湛えた少女で、どこか懐かしさを感じさせる佇まいだった。
その瞳には、確かな決意が宿っている。
「私は……今度こそ、守れるようになりたいんです」
スキルは《合気道》。
敵の力を利用し、流れを受け流しながら反撃する柔の戦いを得意とする静かなる闘志。
続いて姿を現したのは、「響」。
制服姿のまま、手に持ったマイクには電流が走るようなオーラが宿っていた。
スキルは《歌い手》。
音の波に感情を乗せ、味方の能力を引き出すバフ型のサポートである。
「復活? やば〜い! でもさ、歌える舞台があるなら、やるっきゃないっしょ!」
彼女の声が響くと、空気そのものが少し軽くなる。
視聴者数も一気に増加。リスナーのテンションすら操る魅力の持ち主だった。
最後に復活したのは、「ひきわり納豆」。
見るからに地味で目立たない男性アバターだったが、そのスキル《発酵》の説明には「食べると健康的になる」と書かれていた。
「え、あの……本当に俺? 戦うっていうより、朝食っぽくない……?」
気弱な言葉とは裏腹に、彼の魂には独特の粘り気があった。
その名前とスキル、キャラ設定が完全に一致している点に、アマ研のメンバーたちも妙な信頼を寄せる。
「つまり、お前さんは納豆そのものってこったな」
すぅしぃが手ぬぐいを軽く頭にかけ直しながら、気さくにツッコミを入れる。
「発酵……悪くないわ。じっくり効いて、あとからジワッと来る。裏方にはうってつけじゃろうて」
香久夜がゆるりと扇子を閉じながら頷く。
「ふふ……発酵、かえ。毒にも薬にもなる力。ならば、大いに期待しておるぞえ」
琴吹神楽は艶やかな声で微笑みを乗せる。
愛琉-meru-はスマホを構えたまま、キラキラスタンプを貼りながら応援する。
「てかさ、ひきわりくんめっちゃ癒し系じゃん♡ 映える〜! うちらのギルド、ガチ優勝じゃん!」
全員、当然のようにアマ研派閥への加入を希望した。
仲間が増え、戦力が整う中で、派閥名についての話題が再燃する。
「そろそろ……名前を決めようか」
アマ研が空に目を向けて呟いた。
「知識の刃、なんてどうでぃ? 頭ん中の力でぶった斬るって意味よ」
すぅしぃが粋に提案する。
「うーん、それもアリだけどさ〜♡ もうちょいインスタックス映え的な? センス見せたいやん〜」
愛琉-meru-は視聴者のコメント欄を見ながら、キラ語で返す。
「まあ……全員が揃った時に、改めて決めるとしようかの」
神楽が髪をかき上げながら、話を一旦締めた。
そして、その静けさの中で
ひとりの影が、そっと立ち去っていた。
Beyondである。
彼はストラディバリウスを背に静かに歩み去り、誰にも気づかれぬよう、夜の闇に紛れた。
「今は、舞台の中心を譲ろう。次に音が必要になる時まで……」
言葉を口にすることなく、彼はその身を再び音のない場所へと消した。
明日は、ランダム復活者の抽選が行われる予定。
今回の活躍と共鳴度の高さから、アマ研小隊には新たな復活券の支給も期待されている。
香久夜は、穏やかな目で空を見上げた。
「来る者は拒まず、けれど迎えるからには……皆、鍛えてもらいますよ」
新たな章が、確かに幕を開けようとしていた。
その派閥の名が何になるのか、それはまだ誰も知らない。
だが、魂の応援と復活の旋律が響く限り、アマ研小隊の進撃は止まらない。