第四話 《スキル開帳:酒と拳と三つの命》
なぎ店長がアマ研の背中にピタリと隠れるようにして、テキーラの瓶を取り出した。キャップを歯で引きちぎるように開け、ゴクリと一気にあおる。
「っぷはぁ。よし、そろそろ効いてきた」
その瞬間、店長の身体からほのかに蒸気のような気配が立ちのぼる。スキル【酔拳】が発動した。なぎ店長は"酒を出す"ことが出来、"酒を飲む"ことでステータスが上昇する、異能の酔拳使いだった。
一方、moorは一瞬だけ目を伏せ、そして顔を上げた。
「“ロウ”に
切り替えるだょだょ……。」
その声色は低く、
無感情に変わっていた。
多重人格スキル《人格切替》が発動。20分間だけ、
人格“ロウ”戦闘に特化した拳法家の人格へと変貌する。
その動きが、目に見えて変わる。重心が落ち、呼吸が静まり、気配が完全に戦闘のそれへと変質する。
アマ研は鑑定スキルを
男に発動だが、
男のステータスは読み取れなかった。
「弾かれた……?」
何かしらのジャミング系スキルか、あるいは単純に鑑定妨害のパッシブか情報の取得に失敗したが、
三対一なら何とかなる。
ならば、やることは一つ。
アマ研が息を吸い、視線で合図を送った。
「行くぞ」
三人が一斉に、前方の男へと走り出した。