第四十二話 《やるべき事は変わらない デイリーこそが最速育成ルート やる時は殺る》
朝のログイン通知が脳内に響く。それはもはや目覚まし代わりのルーティンだった。
戦場に立つアマ研たちは、日々のデイリーミッションを当たり前のように消化していた。けれど、今日の彼らは一味違う。新たなスキルセット。研ぎ澄まされた連携。染色によって最適化された戦闘構造。全てが仕上がっている。
すぅしぃが軽く指を鳴らした。愛琉-meru-はスマホを取り出し、カレピッピを起動。寿香久夜はそっと息を整え、仲間の背を見守る。アマ研は小さく頷き、左手を軽く動かした。
これは単なるジェスチャーではない。戦術コードだ。視線一つ、指先の角度、脳内の思考の流れ。すべてが戦術信号として同期している。
敵が強ければ強いほど、人間の小さな動きに反応する癖がある。ならば逆手に取るまで。防御のサインを見せ、脳内で攻撃の意志を飛ばす。ただそれだけで、敵は一瞬の読み違いをする。その一瞬が、生死を分ける。
「もう、GMも倒せるんじゃね?」
誰ともなく、そんな言葉が脳裏をよぎった。否、それは願望ではない。現実味のある確信だ。今の実力ならイベント上位に食い込み、正式な座を奪いに行ける。
しかも、そのために必要なチケットはたったの5枚。イベントミッションで日々10枚前後集められる今なら、時間の問題だった。
ただし、それが初心者狩りで得た成果だということはメンバー全員、わかっていた。
あまりにも効率的で、あまりにも非道。だが、最短ルートに慈悲はない。
グレーゾーンだったこの戦闘スタイルに、とうとう運営がメスを入れた。
「初心者は、ガチャチケットを全て使い切るまで攻撃不能」
新仕様の情報が脳内に直接流れ込んでくる。ただし、染色チケットは別。つまり、染色目的なら攻撃OK。
アマ研は即座に理解した。「ルールが変わっても、やるべきことは変わらない」
狩る。奪う。育てる。
この三拍子こそが、リアリティズムの最速育成術なのだ。
カレピッピ起動。視界に映る初心者リスナーたち。まだ何も知らない彼らを、スキルがあるならカレピッピへと変えるだけの簡単な作業。
スキル持ちのカレピッピなら、リンクによって戦力補助にもなる。強力な武器にも、便利な支援にも変わる。チケットで引くのが理想だが、
現実はこうして作り上げるものだ。
誰かが言う。
「とりあえず、行こっか」
その声に、誰も異を唱えなかった。
手段に正義はない。あるのは目的と結果。育つためには、やる時は殺る。
それだけだ。
デイリーミッションそれは今、最もシステマチックで冷酷な、育成戦争の主戦場である。