表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/89

第四十二話 《やるべき事は変わらない デイリーこそが最速育成ルート やる時は殺る》

 朝のログイン通知が脳内に響く。それはもはや目覚まし代わりのルーティンだった。

 戦場に立つアマ研たちは、日々のデイリーミッションを当たり前のように消化していた。けれど、今日の彼らは一味違う。新たなスキルセット。研ぎ澄まされた連携。染色によって最適化された戦闘構造。全てが仕上がっている。

 すぅしぃが軽く指を鳴らした。愛琉-meru-はスマホを取り出し、カレピッピを起動。寿香久夜はそっと息を整え、仲間の背を見守る。アマ研は小さく頷き、左手を軽く動かした。

 これは単なるジェスチャーではない。戦術コードだ。視線一つ、指先の角度、脳内の思考の流れ。すべてが戦術信号として同期している。

 敵が強ければ強いほど、人間の小さな動きに反応する癖がある。ならば逆手に取るまで。防御のサインを見せ、脳内で攻撃の意志を飛ばす。ただそれだけで、敵は一瞬の読み違いをする。その一瞬が、生死を分ける。

「もう、GMも倒せるんじゃね?」

 誰ともなく、そんな言葉が脳裏をよぎった。否、それは願望ではない。現実味のある確信だ。今の実力ならイベント上位に食い込み、正式な座を奪いに行ける。

 しかも、そのために必要なチケットはたったの5枚。イベントミッションで日々10枚前後集められる今なら、時間の問題だった。

 ただし、それが初心者狩りで得た成果だということはメンバー全員、わかっていた。

 あまりにも効率的で、あまりにも非道。だが、最短ルートに慈悲はない。

 グレーゾーンだったこの戦闘スタイルに、とうとう運営がメスを入れた。

「初心者は、ガチャチケットを全て使い切るまで攻撃不能」

 新仕様の情報が脳内に直接流れ込んでくる。ただし、染色チケットは別。つまり、染色目的なら攻撃OK。

 アマ研は即座に理解した。「ルールが変わっても、やるべきことは変わらない」

 狩る。奪う。育てる。

 この三拍子こそが、リアリティズムの最速育成術なのだ。

 カレピッピ起動。視界に映る初心者リスナーたち。まだ何も知らない彼らを、スキルがあるならカレピッピへと変えるだけの簡単な作業。

 スキル持ちのカレピッピなら、リンクによって戦力補助にもなる。強力な武器にも、便利な支援にも変わる。チケットで引くのが理想だが、

 現実はこうして作り上げるものだ。

 誰かが言う。

「とりあえず、行こっか」

 その声に、誰も異を唱えなかった。

 手段に正義はない。あるのは目的と結果。育つためには、やる時は殺る。

 それだけだ。

 デイリーミッションそれは今、最もシステマチックで冷酷な、育成戦争の主戦場である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ