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第二十二話《天照撃臨:夜宴に降る討神の火》

 

 神楽たちは、既に仮設拠点の中心で

 酒盛りの最中だった。


 地面には血と炎、骨と煙が混ざり合った光景が広がっている。にもかかわらず、彼女たちはその中に座し、豪華絢爛な食膳を前に、盃を交わしていた。


「ほれ、おれんじ、もっと飲め」


「おかわり……っす……けほっ」


「べるべるんこは焼き魚が好きであろう? 妾の狐火で炙ってやったぞ」


 妖の王・琴吹神楽は扇を優雅に開いたまま、毒気のない笑みを浮かべていた。しかし、その笑みに隠された力の余裕こそが、彼女の恐ろしさの象徴だった。


 そこへ


 闇を裂く、一陣の符が放たれる。


「――っ!?」


 神楽の表情が一瞬だけ強張る。

 その刹那、空間の隙間から現れたのは、道化師野良猫様。


「宴の真っ最中、失礼するぜ。どうやらここが討伐の舞台になったらしいじゃねぇか」


 彼が掲げるのは、五行を刻んだ陰陽の札。


 その瞬間、地脈が変質する。


 大地の流れが封じられ、神楽たちの背後にあった“妖力の泉”が枯れたかのように萎縮した。


「陰陽結界、逆五芒陣……! これでテメェらの妖力は半減だ。今のうちに、寝酒はやめときな」


 空気が張りつめる。

 神楽が小さく舌を打つ。


「ほう……ようやく遊びに付き合う気になった者たちが現れたか」


 だが、彼女が立ち上がるより早く、

 その頭上に太陽の光が差し込む。


「……神を、降ろす……ッ!」


 水縹雨音の祈祷の声が天地を震わせる。

 空に浮かぶのは、八咫鏡の象徴。

 神話の神器が具現化し、無数の金色の光輪が彼女の背後に花開いた。


「天照大神、此処に降り給え!」


 天照の力が、陽光の裁きとなって炸裂する。


 神楽とその眷属たちの頭上に、太陽の槍の如き光柱が降下する。

 妖たちの影が焼かれ、衣が燃え、肌が灼ける。


「ぐ……っ、妾を神で狩るか……良き趣味じゃのう」


 神楽は初めて、表情に怒りの色を浮かべた。


 が、ここで、さらなる異変。


「全員、構え!」


 チルバニアの令嬢の声が響く。

 その背後に現れたのは、

 ブッダちゃま。


 彼が静かに手を合わせると、世界そのものが一瞬 静止したような感覚が全員に走る。


 悟りのスキル発動。

 一時的に、味方全員が未来予知の恩恵を得る。


 動き出す神楽の攻撃。

 しかし、それが来る0.3秒前の予測ルートが脳内に直接流れ込んでくる。


「……見える……!」


 刹那が韋駄天のスピードで斬撃を回避。

 その隙に、ラギアルが吸血鬼の力で神楽の背後に回りこみ、呪縛の牙を叩き込む。


「てやっ!」


 エルエルエルが空中に飛び、地獄の炎と人間の意志を混ぜた双焔魔砲を神楽の顔面に直撃。


 さらに、かげろうが影の中から出現し、神楽の動きを封じる補助。


「止めるよ!」


 唯月の狼化スキルが解放され、神楽の腹に一撃の爪が突き刺さる。

 そこへ、ストラディバリウスの音が降り注ぐ。


 Beyondのオペラ旋律がフィールドに響き渡り、全体バフと再生阻害が発動。


「行けッ!」


 トガ梵天の狐火操術が解き放たれる。

 幻惑の狐火が空を満たし、神楽の視界と判断力を奪う。


「いい加減に、落ちていただきましょうか」


 チルバニア令嬢の号令と共に、

 全員の最大火力が一点に集中する。


 ブッダの未来予知、

 雨音の神降ろし、

 野良猫の陰陽封印、

 吸血鬼と悪魔の血統の合撃、

 狐火と幻術、

 音楽と戦術


 それらすべてが一瞬の討神タイミングに収束し、


 夜宴の地が、白く染まる。


 大爆発。

 爆風。

 神楽の扇が吹き飛び、眷属たちの防御陣も崩壊。


「見事じゃ。だが……」


 神楽の声が、煙の向こうから響く。


「まだ、舞は終わらぬ」


 崩れたはずの衣の裾が、風にたなびく。

 その姿は、なお美しく、そしてなお化け物だった。


 神楽の眼が、再び戦場の全員を見下ろす。


「妾を、斃したいのなら……命、全てを懸けてこい」

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