第十七話《【緊急イベント発令】イレギュラー・琴吹神楽、降臨》
システムアラート発動。
仮設拠点の警告灯が突如、赤く点滅した。
《緊急イベント発令》
イレギュラー
琴吹神楽がリアリティズムに侵入しました。 全配信者は即時、討伐を開始してください。強制イベントです。回避不可。
「……なんだと……?」
アマ研は飛び起き、すぐさま刀を手に取った。なぎ店長は酒瓶を抱えたまま寝ていたが、目を覚ますと無言で一口煽る。すぅしぃは寝巻きのままシャリとネタを握りはじめ、moorは枕の上で半泣きだったが、
「だょだょ……何が起きてんの……」とつぶやきながら端末をチェックした。
直後チルバニアファミリーからのダイレクトメッセージがアマ研の視界に浮かぶ。
Fromチルバニアファミリー
「このイベントには絶対に参加してはなりませんわ。討伐対象、琴吹神楽
あの存在はイレギュラー、
恐らくですが運営も制御できておりませんの。我がファミリーの構成員の半数以上が殺されました。
特に、配信者が集まる拠点を重点的に狙っているようです。その拠点を勧めておいて申し訳ないのですが……今すぐ脱出を。急ぎなさい。」
「チルバニアが……壊滅寸前だと?」
その言葉が意味するのはただ一つ。これは、ただの“イベント”ではない。
殺戮のシナリオ。世界の浄化すら目的とする、“真なる異物”の侵入。
即座に仲間たちへ情報を共有。装備を整え、扉を開けて外へ飛び出すその刹那だった。
ズドォォォン!!!!
拠点を囲んでいた外壁が、音もなく爆発四散した。爆風が押し寄せる中、アマ研は目を細めてスキルを発動する。
「《鑑定》!」
名前:琴吹神楽ステータス&スキル:解析不能属性:大妖怪/イレギュラー補足:封印より解き放たれし古代妖。
眷属一覧・おれんじ 悪魔
・べるべるんこ 悪霊
・東雷門 黒夜 死神
・西清翠 薫昼 リッチ
※その他データ
文字化けにつき判読不能
「……ッ!」
立っていたのは美しい少女の姿。
細身の着物に、空間を纏うような妖気。だがその瞳は、世界を見下ろす
神性と悪意の混ざった光を帯びていた。
そして、その周囲には
異形の四体。容姿も性別もまちまち、
ただ一つ、共通しているのは
絶対的な不気味さだった。
なのに、眷属たちは微笑む。
まるで遊びに来たように。まるで、これが“お祭り”かのように。
だが、鑑定が告げていた。
チルバニアファミリーの半壊。にもかかわらず、五人全員が無傷。
「……っは……マジかよ……」
冷や汗が背筋を伝う。
これは、“勝てるかどうか”の話ではない。生き残れるかどうかの問題だ。
次の一瞬で、すべてが始まる。異常事態の幕開けが、今、目の前にある。