第十一話《江戸前とドロップキックとゾンビ三体》
「前衛、俺が行く!」
アマ研が日本刀を構え、飛び出す。斬撃一閃、最前のゾンビの右腕が切り裂かれ、腐臭が散る。
「こっちも行くよぉ〜〜酔拳ブースト!!」
なぎ店長が酒を口から喉へ一気に流し込み、そのまま反転しつつの後ろ回し蹴り。拳のような踵がゾンビの顎を打ち抜く。骨が軋む音。
「おぉっと、そっちはもらい〜〜だょ!」
mooreが後方ステップからのフェイント、すぐさま石を手にして投擲。拳大の岩塊がゾンビの左目に刺さり、呻き声をあげさせた。
「すぅしぃ、合わせられるか!?」
「へっ、合わせるなんてもんじゃねぇ……江戸前の魂は常に即興だッ!」
すぅしぃがシャリとネタを両手に出現させる。マグロ、サーモン、イカ 特上三貫コンボを鮮やかな回転で投げつける。
「ほいッ、ほらッ、そこ! そこッ!」
三貫の寿司が空を裂き、ゾンビの喉・額・股間にピンポイントで突き刺さる。
「おらァァ! 落ちろッ!」
アマ研が日本刀で胴体に追撃。ゾンビが後方へ吹き飛び
「ドロップキィィィック!!!」
跳躍したアマ研の両足がゾンビの頭をフルスイングで叩き潰す。
頭蓋が砕けるような音とともに、三体目のゾンビも崩れ落ちた。
沈黙。
3体、全滅。
「いっちょ上がりィ〜〜っと」
すぅしぃが髪をかき上げる。
その背後、 愛琉-meru-がふらふらと立ち上がっていた。ギャル口調で呻く。
「ま、まだだし……アタシは負けないし……」
「……しつけぇ女だねぇ」
すぅしぃが静かに呟いた。
その手には、新たに握られたネタ 赤貝
「江戸前、極意ッ!!」
フルスイングで赤貝が解き放たれた。
空気を切り裂く音と共に、バシュッ!!という生々しい音。
愛琉-meru-の顔面に、赤貝が直撃した。
「アアアア!!」
目を白黒させたギャルが、そのまま真横に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。
「ふっ……女にも容赦ねぇのが、アタシの流儀でぃ」
場に静寂が戻る。
アマ研はゆっくりと前へ出る。
「改めて、話がしたい。すぅしぃ……その技術、連携できるなら心強い。
仲間になってくれないか?」
すぅしぃは訝しげにアマ研たちを見渡し、一度だけ目を細めた。
「……仲間ねぇ。あんたらの動き、悪くなかったよ。
けどアタシ、信頼なんて安売りしねぇんだよ」
そう言って、背を向ける。
しかし、三歩ほど歩いて立ち止まると
「一つだけ聞かせな。次、焼肉と寿司、どっち食う気だ?」
アマ研は一瞬戸惑いそれでも、笑いながら答えた。
「……次は、寿司だろ」
「へっ、気に入ったぜ。フォロー、飛ばしとくよ。」
江戸前の寿司使い、加入確定。
戦力はまた、一段と厚みを増した。