第十話《スカウト大作戦 江戸前とカレピッピ♡》
三対一でも、相手次第ではあっさりやられる――
そう痛感したのは、昨日のバイオリン事件だった。
「生き残るには、もう一人……仲間を増やすべきだな」
デイリーミッションはまだ続いている。
**500メートル圏内で15人の配信者を目視確認**。
そのついでに、有望な人間性とスキルを持つ配信者をスカウトすることにした。
しばらくして、1キロ先にひとりの配信者を発見。
だが、その人物に向かって――明らかに**高速移動する別の影**が接近している。
(先に戦闘か……?)
用心しながら距離を詰め、建物の影に身を潜めてまずは静かに《鑑定》をかける。
**名前:すぅしぃ**
**スキル:二刀流《江戸前》**
**遠隔攻撃/即興生成/握り性能:S**
(寿司……!?スキルで寿司を生成して戦うのか?)
様子を伺っていると、すぅしぃの両手が淡く光を放つ。
浮かび上がるのは、湯気を立てるシャリとツヤツヤのマグロ。誰がどう見ても本物の寿司だった。
「……ほいッ、とっとと握るよォ!」
江戸前のキレッキレな口調でそう言うと、すぅしぃは3秒で寿司を握り終える。
**ぶんっ!**
手首のスナップから繰り出された寿司が空を切り裂く。
そのスピード――推定150km/h。
マグロの握りは一直線に突っ込み、接近していた配信者の顔面にド直撃。
**ドガァン!!**
「きっもちイイ当たりだァ……いっちょ上がりィ!」
その一撃で吹き飛んだ配信者は、地面を転がりながらも即座に起き上がった。
アマ研はすぐさま《鑑定》を展開。
**名前:神楽 愛琉 -meru-**
**スキル:カレピッピ召喚**
**倒した配信者をゾンビ《カレピッピ》として最大3体まで召喚**
「はあ? ちょームカつくんだけどぉ倍返しする〜!」
叫びながら、神楽愛琉は魔法陣を展開。
地面から現れたのは、倒された過去の配信者たちのゾンビ化体――**カレピッピ**が三体。
一方、すぅしぃは静かにイカの握りを作り上げる。
振りかぶって投擲――!
だが避けられた。
すぐさま太巻きを巻いて、**ぶん殴る**!
拳大の太巻きが神楽の肩口に炸裂。
だが避けられたイカがブーメランのように空を舞い、旋回し――
**ゴスッ!**
神楽の後頭部に直撃。
「いってぇし!? 太巻きで殴るって、マジ何!? 意味不明なんですけどぉ〜!?」
その間にも、ゾンビ三体が襲いかかってくる。
アマ研が前に出た。
「助太刀する、敵じゃない! ゾンビはこっちで引き受ける。
信用できないのはわかってる。けど……戦闘が終わったら話を聞いてほしい」
すぅしぃは鋭い目つきでアマ研を見る。
だが手を止めることなく、寿司を握り続ける。
「……ったく、いきなり話しかけてくるとか無粋な野郎だねぇ。
けど――ま、話くらいは聞いてやってもいいよ。
そのゾンビを、手ェ早く片付けたらなッ!」
三対三。ゾンビ軍団との戦闘が始まった。
寿司と日本刀、そして酔拳のトリオが加わる、異色すぎる戦場。
江戸前の香りと共に、戦火はふたたび熱を帯びてゆく――。