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番外編〜エピローグ: 新たな風

詩恵は景と再会してから、いくつかの季節が巡った。異世界での生活にも次第に慣れ、村の人々とも信頼関係を築きながら、彼らの生活に溶け込んでいた。二人は共に過ごす時間を大切にし、釣りや料理、そして日々のささやかな喜びを共有していた。


ある穏やかな朝、詩恵は川のほとりに腰を下ろし、静かに流れる水面を眺めていた。川面に映る空は澄み渡り、風が彼女の頬を優しく撫でる。ここでの日々は忙しさの中にも安らぎがあり、詩恵の心を満たしていた。


ふと、足音が背後から聞こえてきた。振り返ると、景が釣り竿を担いで、にこやかにこちらに歩いてくる。彼の手には、さっき釣り上げたばかりの魚があり、その顔には満足そうな笑みが浮かんでいる。


「釣れたのね」と詩恵は微笑みながら立ち上がり、景のそばに歩み寄る。「今日の晩ご飯はこれで決まりね。」


景は照れくさそうに笑い、「そうだな、今日も腕を振るってもらわないと。」


詩恵は彼が差し出した魚を受け取りながら、少し冗談を言ってみる。「それじゃ、釣ってくれたお礼に、特別な料理を作ってあげようかしら。でも、私の料理に釣りで勝てる自信はあるの?」


景は軽く肩をすくめ、「それはどうかな?でも、君の料理にはいつも勝てる気がしないな。」


二人は笑いながら家へと戻っていった。家に着くと、詩恵は早速料理の準備に取り掛かった。景も手伝おうとしたが、詩恵は優しく彼の手を取って言った。「今日は私に任せて、ゆっくりしてていいわ。」


「いや、せめて手伝わせてくれよ。二人で一緒に作る方が、もっと楽しいだろう?」景はそう言って、詩恵の隣に立った。


「それもそうね。でも、あなたが手を出すとちょっと不安よ。覚えてる?前に一緒に作った時、塩を二回も入れたこと。」詩恵は笑いながらその時のことを思い出した。


景は恥ずかしそうに頭をかきながら、「あれは…ただの勘違いだったんだよ。今度はちゃんと気をつけるから。」


詩恵は笑顔で頷き、「分かったわ。それじゃ、一緒に作りましょう。今度こそ、失敗しないでね。」


二人は息の合った調理を始めた。景が魚をさばき、詩恵がそれを使って繊細な料理を作り上げていく。二人の手際の良さは、まるで長年のパートナーが互いの動きを熟知しているかのようだった。


夕食が完成し、テーブルに並べられた料理を見て、詩恵は満足そうに微笑んだ。「見て、私たちの合作。これ、なかなかいい感じじゃない?」


景も料理を眺めながら、「ああ、これは絶対に美味しいはずだ。君と一緒に作ったんだから、間違いないさ。」


二人はそのまま食卓に座り、料理を楽しんだ。食事の間、詩恵はふと景を見つめながら、静かに問いかけた。「ねえ、景。これからのこと、どう思ってる?」


景は少し考えてから答えた。「これからも、二人で一緒にやっていきたいと思ってる。異世界だろうと、どんな世界でも君と一緒なら、俺は幸せだ。」


詩恵はその言葉に胸が熱くなった。「私も同じよ、景。あなたがいてくれるから、この世界でも頑張れる。これからも、ずっと一緒にいましょう。」


食事を終えた後、二人は家の外に出て、星空の下で一緒に過ごした。夜空には無数の星が輝き、まるで二人の未来を祝福しているかのようだった。


詩恵は空を見上げながら、静かに景に寄り添う。「あの時、あなたがいなくなってから、私の世界は止まってしまった。でも、こうしてまた一緒に過ごせるようになって、本当に幸せよ。」


景は彼女の言葉に微笑み、「俺も同じだ。詩恵がいてくれることで、この世界でもやっていける。これからも一緒に、ゆっくりと歩んでいこう。」


「ええ、これからも。あなたと一緒に。」


二人は手を取り合い、しばらくそのまま星空を眺め続けた。詩恵の心には、これまでの苦難や別れの痛みが癒されていくのを感じた。彼女はこの世界で新たな風が吹き始めるのを感じながら、未来に向けて前を向く決意を新たにした。


「これからも、一緒に。」


詩恵は心の中でそう誓い、彼女と景の新たな日常が、また一歩ずつ始まっていくのだった。

この番外編をお読みいただき、ありがとうございました。本編では描かれなかった詩恵の視点を通して、彼女の内面の葛藤や成長、そして景との再会までの物語をお楽しみいただけたかと思います。


詩恵は、景がいなくなったことで、今までの日常が崩れ去り、深い孤独と絶望の中に立たされます。しかし、それでも彼女は諦めることなく、愛する人を追い求め続けました。その姿は、ただの「待つ」だけの存在ではなく、自ら行動し、困難を乗り越えようとする強さを持った女性として描かれています。


異世界での再会は、彼女にとって奇跡であり、読者にとっても感動の瞬間だったと思います。詩恵が景と再び結ばれた瞬間は、これまでの努力と信念が報われた結果であり、二人の絆がより一層強くなったことを象徴しています。


この物語を通じて、愛や信念がいかに大きな力を持つかを感じていただけたなら幸いです。詩恵の物語は、彼女自身の成長の物語であると同時に、愛する人を信じ続けることの大切さを教えてくれます。


今後も、景と詩恵が新たな世界でどのように生きていくのか、そして二人の物語がどのように展開していくのかを、ぜひ楽しみにしていてください。


改めて、ここまでお読みいただきありがとうございました。これからも二人の冒険を応援していただければと思います。

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