5.潜入捜査
「とりあえず、鉱山の中に入ってみるしかなさそうね」
「ええ、内実が分からない以上、我らが目で確かめるのが最善かと思いますが」
「えー?でもそのまま入ったら見つかっちゃうよ?」
「まあ、そこは……魔法でなんとかしましょう」
(そんな都合いい魔法なんてあったかしら……?)
とりあえず解散を命じると、皆素早くベッドに潜り込んだ。
次の日の朝、ソラリノたちは鉱山の近くにいた。
「えっ!?夜に行くんじゃなかったの!?」
「うーん、夜のほうがいいんだけど……どうやら夜は余計目立つみたい」
「この森の木は魔力成分を含む油を発します。その油は霧となり、森の中を漂っています」
「その油が魔力をもった生物に触れると発光するの」
ソラリノは左手を右手で隠して、ミミに見せる。
「こんな感じでね」
ふーん、と返事をすると、ミミは体を舐め回した。
「なんかついてる感じがするのはそのせいか〜気持ち悪い」
ソラリノはミミを抱え上げた。
「あとで洗ってあげるから。今は我慢しなさい」
「ソラリノ様、見張りが交代するようです。今のうちに」
イーダリートに手招きされ、ソラリノはそうっと駆けた。
「……」
「……」
場を静寂が支配する。響くのは風の音だけ。
「(小声で)どう?ソラリノ?隙はある?」
「(小声で)無理ね。現状ここから動けないわ」
潜入したはいいものの、通路に張り巡らされた魔力探知の網にかかりそうになり、動くに動けなくなっていた。
「(小声で)今の我々には認識阻害魔法が掛けられています。これは人など生物からの認識を阻害することができますが、魔法自体を探知する魔力探知は防ぐことができません」
魔力探知は、魔法に反応する。厳密に言えば、かけられている魔法と、魔法を使うために体に集中する魔力に対して反応するのだ。
「(小声で)特に、魔法をかけているのは私だから、私は絶対に通り抜けられないわね。あと、ミミに至っては普段から魔力を放っているから、魔法のあるなしにかかわらず通り抜けられないわ」
魔獣という動物は、常に魔力を放って生きているのだ。魔獣の侵入探知器には魔力探知の技術が使われているくらいである。
「じーっ……」
「じーっ……」
ソラリノもミミも示し合わせたかのようにイーダリートを見た。
「いや、確かに私は魔法も使えませんし、掛けられている魔法さえ解ければ魔力探知は突破できるかもしれないですが……」
彼は件の通路を見る。
「守衛もいる中で進めると思いますか?さすがの私でも天井を這うことなどできませんよ」
「なんとかなるわよ、たぶん」
「そーそー、ソラリノの言うとおりだ!」
あまりに能天気な2人の言葉を聞いたイーダリートは、ため息をつくと、壁に手をかけた。
「はい。頑張りますよ」
地面に手をつき、前足に体重をかける。
「行くわよ、3、2、1……」
魔法が解ける。瞬間、イーダリートは全速力で走り出し、守衛の前を横切った。
(はぁ、はぁ、バレませんでしたか…)
ほっと息をつくのも束の間、すぐに魔力探知の発生源を停止させる。
そして、またほんの一瞬の時間で守衛を気絶させる。
「大丈夫ですよ」
ソラリノたちはそろりそろりと出てくると、恐る恐る歩みを進めた。
「あ、ありがとう……ひ、ヒヤヒヤしたわ……」
「この程度で肝を冷やしていては、この先が持ちません」
「予想は、してたけどね……」
緊張で乱れる脈を整えると、また認識阻害魔法を掛け、次のフロアに進んだ。
その後しばらく、一行は地下に進んでいた。
「魔力探知の網が他になくて助かったわ」
「いくら魔法を掛けているからといって油断は禁物です」
「………(暇だ…)」
さらにいくらか階段を下ったところで、あるものを発見した。
「これは、鉱石かしら?」
「それにしては石というより木に似ている気がしますが……?」
ソラリノが拾ったのはクズ魔法石と思われる欠片だった。だが、他と違って光沢がない。
「うーん?きれいじゃないな〜?あと、ザラザラしてる?」
「謎の物体ね。まあ、一応取っておきましょう」
あまり気にすることなくポケットにしまったが、後に、このクズ魔法石が真実にたどり着く鍵となることなど誰も予想しなかった。
「そろそろ魔法石が出現する高さのはずですが、坑道が見当たりませんね」
ソラリノは自分のマッピング結果を見るが、坑道らしきものは見えない。
「ねえ〜、なんか、暑くない?」
ミミが全身を舐めながらつぶやいた。
「確かに、少し汗をかいてきた、かも……」
少し額を拭ってみると、手が湿った。
「ということは、近くで鉱石を製錬しているかもしれないですね」
(ゴールは近い…のかしら?)
イーダリートの言葉を信じ、しばらく道なりに歩んでいくと、だだっ広い空間にたどり着いた。
組まれた梁、積まれた石、放置されたトロッコ。
そこは、採掘場だった。
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